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かつて街の冬の風物詩といえば、コンビニのおでんだった。しかし最近、コンビニからおでんが消えているのにお気づきだろうか。実はコロナ禍以降、店頭でのおでん販売を取りやめるコンビニ店が激増しているのだ。
そもそもおでんは、(1)鍋の保温(2)鍋の清掃(3)具材の補充(4)(時間が経過した)具の入れ替えなど、コンビニで扱う商品としては非常に手間がかかっていた。また具の選択肢が少ないと「売れ残っている人気のない具」というイメージで売れにくくなるため、常に全種類を温めておかなければならないため廃棄が多くなり、手間がかかるわりに利益が出にくい商品だった。
とはいえ集客率が高いアイテムではあったため、人手がある店舗ではコロナ禍の中でも透明アクリルカバーやパネルなどを設置して対応していたが、現在では多くの店が、1人前の袋入りセットのおでんなどに方向転換している。
日本人の心と体を暖め続けてきたコンビニおでんに代わって台頭しているのが、飲食店の「ネオおでん」。さまざまなおでんの新業態が生まれ、ヒットしていて、今や通年メニューとして定着している。そんな飲食店の新・おでん事情を象徴する例を紹介する。
おでんが500円で食べ放題!「炉端とおでん 呼炉凪来(コロナギライ)」
最近よく見るのが、「ワンコインでおでん食べ放題」の居酒屋。「500円おでん食べ放題と仙台牛タン焼肉酒場 ときわ亭」「個室居酒屋 国産牛タンと500円おでん食べ放題 やまと」など、店名に「500円おでん食べ放題」を謳っている店も多い。このブームの火付け役といわれているのが、2022年3月に西新宿にオープンした「炉端とおでん 呼炉凪来(コロナギライ)」だ。翌年には秋葉原、池袋にもオープン。現在は全国に20店舗とその勢力を拡大している。
500円で食べ放題のおでんのレベルとはいったいどんなものなのか。友人を誘って検証してみた。
向かったのは、2025年1月17日に横浜にオープンしたばかりの「炉端とおでん 呼炉凪来 関内店」。
店内中央にはおでん鍋のカウンターがあり、大根、こんにゃく、玉子、厚揚げ、しらたき、さつま揚げなどの定番のほか、焼売、タコなども。一人ワンドリンクとお料理一品注文が必要で、お通し(税抜き500円)としておでんの盛り合わせが提供される。その盛り合わせを食べきった後は、好きなだけおかわりができるというシステム。
一番安い生ビール480円と一番安い焼鳥(2本380円)を頼めば、お通し代込みで1380円。消費税込みでも1500円弱で無限におでんが食べられるというわけだ。
とはいえ、お通しの「おでん盛り合わせ」は上の写真のようにかなりボリュームがあり、正直「これを食べたら、食べ放題といってもあとはそんなに入らないのでは」と、少々騙されたような気がした。とはいえ、食べてみたら「食べ放題」のイメージを覆す味のよさ。大根は3~5センチほどの厚みがあるのに、芯まで味が染みている。ほかの具もすべて、しっかり味が染みていて、だしも上品な味わい、塩加減もちょうどよかった。
結果、「このシステムだとそんなに食べられないかも」とどの口が言った、と恥ずかしくなるほどおかわりしまくり。後で写真を確認したら、2人で5回お代わりをしていた。
おでんカウンターにはひっきりなしにおかわりをするお客さんが訪れ、頻繁につゆと具が追加で投入されていた
990円の高い日本酒を選んでしまった上に調子に乗って高い「塩辛」₍900円)まで頼んでしまったため、結局2人で6千円くらいになった
しかし、お会計をしてみて落とし穴に気がついた。「食べ放題だから、たくさん食べないと損」という気持ちに突き動かされておかわりを重ねた結果、知らず知らずのうちにドリンクのおかわりも増えていたのだ。ドリンク類は生ビール480円、サワー類520円~と、高いというほどではないが、居酒屋チェーンとしてはそれほど安いわけではなく、焼鳥以外の料理もまあまあの価格。試合に勝って勝負に負けた気がしないでもない…。
とはいえ、おでんの味は予想よりはるかにレベルが高かったし、値段を気にせず存分に食べられて、ストレス解消にもなった。これで1人3千円なのだから、満足度は高かった(友人には「いい店を教えてもらった」と感謝された)。1月下旬にオープンしたばかりなのに、店内の90席はほぼ満員。人気の理由がわかった気がした。
1人1品頼んだ料理。(左)蜂蜜のバター蜂蜜添え(480円)(右)アボカド海鮮わさマヨ(680円)。どちらも美味で満足度が高かった
組み合わせ次第で無限の味変が可能!めくるめく味変ワールド「ちょいおでん」
「おでんは好きだけど、どれも同じ味なので食べ飽きてしまって、そんなにたくさんは食べられない」という人におすすめなのが、無限の味変を楽しめる「ちょいおでん」。和の創作料理「板前バル」をはじめ多くの飲食店ブランドを持つが運営するチェーン店で、現在、新宿本店のほかに都内に直営店2店舗(小伝馬町創業店)、FC店2店舗(新小岩・大森店)を展開している。近々秋田、北海道、相模原でのオープンも予定していて、全国的なブレイクが目前の店だ。
この店のおでんの特徴は、“味変”アイテムの豊富さ。普通のおでん店だと、七味と辛子くらいしか味変アイテムがないが、この店ではなんと、卓上に無料の味変アイテムが8種類も用意されている。
驚いたのは、「ハリッサ」(唐辛子にパプリカやコリアンダー、クミン、ガーリックなどを混ぜた調味料)といったマニアックな香辛料も用意されていること。初めて名前を聞くという人もいるだろうが、この「ハリッサ」がほとんどすべての具に驚くほどマッチ。ほんの少量でおでんがエスニックな風味に変身し、その味変の面白さがやみつきになる。
上の写真左上から魚粉、ミル付容器に入った粒黒コショウ、醤油、ゴマ。左の器は左上から時計まわりに「濡れ一味」、「ハリッサ」、「辛子」、「柚子胡椒」、「山ワサビ」、「ネギ醤油」
さらにお通しで出されるおつまみ「山ワサビ」と「ネギ醤油」(写真上、右下)も薬味としても使えるので、合計10種類も無料の味変アイテムがあることになる。この組み合わせだけでも無限の味変が楽しめるが、ぜひ試して欲しいのが、1品100円(税抜き)の「味変ソース」。
上から時計まわりに「ジェノベーゼ」「明太バター」「ブルーチーズ」
まずはしらたきで、「ジェノベーゼ」「明太バター」を試してみた。どちらもおいしかったが、特に「明太バター」が目を見開くようなおいしさ。高級魚として知られる鱧(ハモ)で出しをとり、しょっつるなどで風味を加えたつゆのおいしさとあいまって、箸が止まらない。
明太バターソースがおいしすぎて、いろいろな具材とペアで頼みまくった
例えば「大根」(290円)1種類だけでも、この味変アイテムを駆使すれば、1品で数種類の料理を味わったような気分になれる。食べ放題よりもこちらのほうのコスパがいいと感じる人もいそうだ。