
銀行口座の残高からモバイルSuicaへ利用可能金額をチャージすることは、今の時点ではできない。いや、できるができない。
なぜこのような意味不明な表現になってしまうかというと、現時点でのモバイルSuicaはそれとは別のアプリを挟むことでしか銀行口座からのチャージができない(直接的な紐付けができない)からだ。
しかし、それでもどうにかして銀行口座からモバイルSuicaへチャージしたいと考えている人は少なくないはず。そこでこの記事では、モバイルSuicaをより便利に活用するテクニックをいくつか取り上げたいと思う。
ローソン銀行の電子マネーチャージアプリ『Suitto』
2019年9月、モバイルSuicaは極めて重要な一機能の廃止を実施した。
銀行口座からのチャージサービスの終了である。
これはAndroid端末とフィーチャーフォンが対象だが、一方でApple製品ではそもそも銀行口座からのチャージ機能が実装されていなかったという事情もある。つまり、2019年9月をもってモバイルSuica自体が銀行口座と直接紐付けすることが完全にできなくなったのだ。
ただし、モバイルSuicaと連携できる別のアプリを使えば、間接的ではあるが銀行口座からのチャージが可能である。
まずはローソン銀行の電子マネーチャージアプリ『Suitto』をご紹介しよう。このアプリとモバイルSuicaのアプリを同じスマートフォンにダウンロードしておけば、Suittoと提携する銀行からの残高チャージができるようになるのだ。
このSuittoがすごいのは、提携銀行のラインナップである。ローソン銀行はもちろんだが、神奈川銀行、香川銀行、仙台銀行、富山銀行、栃木銀行といった地方銀行が名を連ねているのだ。日本の実体経済の構造をよく理解している!
戊辰戦争以降、明治の元勲は全国各地に金融機関を設置することを許可した。江戸時代には両替商や札差を営んでいた豪商、或いは藩の重鎮だった士族、農村部の有力者である庄屋が、地元の商工業や農業を下支えするために「細かい部分にも目が行き届く銀行」を作ったのだ。
そのため、日本には「先祖代々地元の地銀の顧客」という人も珍しくない。都市銀行と同等の信頼を抱える地銀は、「経済的理由から銀行口座を持てない人」の発生を防いでいる。アメリカ都市部では、貧困層や難民を中心に銀行口座のない人が少なくなく、それが店舗の完全キャッシュレス化を大きく阻害していることについては以下の記事を参照していただきたい。
ロサンゼルス市がキャッシュレス決済だけの店舗を禁止する可能性
ロサンゼルスは、本当に「世界最先端の都市」なのか? ある一面において、実はロサンゼルスより日本の地方都市のほうが「土壌が整っている」のではと感じる時がある。この...
地銀の口座からモバイルSuicaにチャージできるアプリ。全ての地銀を網羅しているわけではないとはいえ、筆者的にはおススメの便利ツールだ!
全国900超の金融機関に対応の『J-Coin Pay』
「提携金融機関の豊富さ」ということで言えば、みずほ銀行のアプリ『J-Coin Pay』も忘れるわけにはいかない。
このアプリと紐付けできる金融機関は、何と900を優に超える。この中には信用金庫や労働金庫、JAバンクも含まれている。
筆者の住まいは静岡県静岡市葵区の山間部に近い地域。したがって、JAの影響力は日頃から肌で感じている。地銀、信金、JA。これらの金融機関や組合の「草の根レベルの影響力」を理解していない金融アプリは、まず成功しないと言ってもいいのではないか。
そんなJ-Coin Payも、やはりモバイルSuicaへのチャージ機能を有している。J-Coin Payを挟むだけで、「おらが町の銀行」の口座からの残高チャージができるのだ。こうした機能を提供するアプリが存在するからこそ、モバイルSuicaはJR東日本管区内から飛び出して広く活用されていると言ってもいいだろう。
通信キャリアのプリペイドカードとの紐付けもできるが…
最後は、恐ろしく間接的な手段ではあるが筆者自身がたまに実行するやり方をご紹介しよう。
それは「通信会社のキャリア決済サービスが発行しているプリペイドカードと紐付けする」という手である。
筆者の場合はauと契約しているため、auの通信料と合算するチャージができる。au PAYプリペイドカードも所持しているため、これをモバイルSuicaに紐付けすればau PAYの残高を持っていくことができ、最後の決済は銀行口座からの自動引き落とし……という流れになる。
正直、これは自分でもあまり効率的なやり方とは考えていないため、au PAYの残高やPontaポイントにいくらか小銭があった時にしか使っていない。「手っ取り早さ」で言えば、上記のアプリのほうが断然優れている。
新Suicaでは銀行口座と紐付け機能が実装か
そんなモバイルSuicaだが、2028年度にはこれに代わる新しいSuicaアプリがローンチされる予定である。
この新Suicaアプリには、銀行口座と紐付けできる機能が搭載されるらしい。「らしい」というのは、現状具体的な仕組みや計画が発表されていないからだ。地銀や信金、JAバンクと新Suicaアプリが紐付けできるのかという点も、全く分からない。
だが、モバイルSuicaがより使いやすい決済アプリに進化していくことには変わりないはずだ。
【参考】
銀行チャージのサービス提供の終了について-モバイルSuica
Suitto
ローソン銀行のチャージアプリ「Suitto」の提供および「モバイルSuica」へのチャージ開始について-PR TIMES
J-Coin Pay
「J-Coin Pay」による「モバイルSuica」への接続、チャージ機能提供の開始について-PR TIMES
Suica の当たり前を超えます-JR東日本
文/澤田真一
2028年度に登場予定の「新Suica」とは?交通系ICカードの長所を活かした新しいビジネスチャンス
交通系ICカードは、もはやただの決済手段ではない。これには様々な情報が詰まっている。 この情報を生かしたビジネス成長戦略をJR東日本グループが打ち出していること...