TNRを経た猫を家族に迎えたい場合、どうアクションを起こせばいい?
松本 近年は、TNRを経た猫を保護し、飼い猫として迎え入れたいと考える方も増えています。
一方で地域猫を家族に迎えようとしても、勝手に連れて帰るとその地域で猫の保護活動をしているボランティアの方々に心配をかけてしまうこともしばしばあると聞きます。
TNRを行っている地域に暮らす猫を家族にしたい場合、どういった手順を踏めば飼い猫にできるのでしょうか?
小堀さん 地域猫や野良猫は誰の所有物でもないため、決められた手順はありません。
そのようなお問い合わせをいただいた場合には、その猫のお世話をしているボランティアの方や餌をやっている方が安心できるよう、直接連絡が取れる環境であれば保護する(した)ことをお伝えいただく、お世話をしている方が不明であれば「保護しました、家族に迎えました」といった貼り紙をしていただく等、何らかの方法で無事でいることをお伝えください、とお願いしています。
猫のためにも、TNRは必要不可欠!誰も猫が不幸な最期を遂げることは望んでいない…
松本 最後に、宮崎県の山間部におけるさくらねこTNR活動のようなアクションが必要な地域は、日本各地にまだまだ多く点在していると思うのですが、
どうぶつ基金さまの考える、野良猫との理想の共存像について教えてください。
小堀さん 猫が猫らしく、住み慣れた場所で地域の方に見守られながら自由に安全に生涯を全うできることが理想です。同じ町に暮らす仲間として、一代限りの命となった彼らがそこにいることが「普通」であり「当たり前の日常」となることです。
同じ町に暮らす命を排除しない町=人間にとっても暮らしやすい理想の町であると考えています。
そのためにTNRは必要不可欠です。
TNRを経て地域で見守られ、一生を終える。あるいは里親さんに保護される。そのための活動を続ける意義は大きいのでは?
ということで、今回は公益財団法人どうぶつ基金事務局の小堀さんにお話を伺った。
筆者はこれまで、限定的な地域ではあるが、地域猫活動を行っている団体にも色々と接触をし、その活動で生じる良い話も、悲しい話も耳にしてきた。
やっぱりこれは実感として得た部分になるが、昨日まで当たり前に顔を見せていた猫が、今日にはもう冷たくなっていたり、行方知れずになっていたり、虐待によって重傷を負うといったことは残念ながら実際に起きている。
それでなくても夏は猛暑、冬は厳寒という日本の環境で野宿をするのは命取り。
屋外に猫がいっぱいいて、子猫も簡単に見つかるという環境は、決して健全ではないし、これまでは当たり前の光景だったとしても、いい加減どうにか対策を取らないとダメだと思う。
TNRは新しく猫が繁殖することがなくなり、地域における猫の過密化を防ぐ効果が期待できる。
今回の宮崎県山間部TNR地域集中プロジェクトでは、400~500頭の不妊手術が予定されている。プロジェクトの成功を、いち動物好きとして心から祈りたい。
文/松本ミゾレ
【取材協力】
公益財団法人どうぶつ基金