
ビットコインなど仮想通貨(暗号資産)の取引をしている場合、利益額によっては確定申告が必要になる。確定申告をしなかった場合のペナルティや確定申告のやり方についてまとめた。
目次
投資の一環としてビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)取引をしている人は多いだろう。仮想通貨を売却して一定以上の利益が発生すると確定申告が必要となる。では、どのくらいの利益が対象になるのか、確定申告が必要なケースと不要なケースの違い、確定申告をしないとどうなるのだろうか。
本記事では、仮想通貨の確定申告についての基礎知識と、サラリーマン・個人事業主の確定申告のやり方の違い、仮想通貨の確定申告をする場合の流れについて解説する。
仮想通貨の取引で確定申告が必要になるケース、ならないケースは?
仮想通貨(暗号資産)は、紙幣や硬貨などの実体を持たず、インターネット上で売買される資産だ。
2020年に金融庁が施行した資金決済法により、現在は「仮想通貨」ではなく「暗号資産」が正式な呼称となっているが、インターネット上では「仮想通貨」の呼称も引き続き使用されることが多い。
初めて仮想通貨を購入したときや売却利益を得たときは、確定申告をすべきか気になる人が多いはずだ。まずは仮想通貨と確定申告の基礎知識を押さえよう。
■仮想通貨で確定申告が必要になるのは20万円を超える利益が出たとき
仮想通貨は購入額と売却額の差額によって利益を狙うことを目的としたデジタル資産だ。
購入時のレートと売却時のレート(または利用時のレート)の差額によって利益と損失が決まる。
仮想通貨の売却で得た利益は、所得税法上の「雑所得」に当たり、年間20万円を超える利益が発生した場合は確定申告が必要となる。
なお、雑所得にはアフィリエイトの広告料といった副業収入も含まれるため、仮想通貨以外の雑所得がある場合は、それらも含めて20万円を超えると対象となる点に注意したい。
また、商品代金や別の仮想通貨の購入代金を手持ちの仮想通貨で支払った場合も、支払いのために仮想通貨を売却したとみなされる。つまり支払時のレートとその仮想通貨を購入した際のレートの差額によって20万円以上の利益が発生している場合は確定申告の対象となる。
その他、データマイニングの報酬や仮想通貨の貸し出し(レンディング)の報酬を仮想通貨で受け取った場合も報酬額が20万円を超えると確定申告が必要となるので覚えておこう。
【仮想通貨の取引で確定申告が必要になるケース】
- 仮想通貨を売却した利益が20万円を超えた(または他の雑所得との合計額が20万円を超えた)
- 仮想通貨を使って商品や別の仮想通貨を購入した(支払いのために仮想通貨を売却したとみなされるため、取得時と売却時の差額が20万円を超えると確定申告が必要)
- マイニングやレンディングで20万円を超える報酬を仮想通貨で受け取った場合
■仮想通貨で確定申告が不要なケース
一方、仮想通貨を購入し、保有しているのみであれば、仮想通貨の価格が購入時よりも高くなっている(含み益が発生している)状態であっても確定申告をする必要はない。
所得税の確定申告が必要になるのは、あくまでも仮想通貨の売却益(購入時と売却時の差額で発生した利益)が20万円を超えた場合であり、「仮想通貨を売却して受け取った現金が20万円の場合」ではないことに注意しよう。
また、雑所得は確定申告の際に経費を計上できる。たとえば、仮想通貨取引を始めるに当たって勉強のために利用した書籍代やセミナー参加費用などは経費として利益から差し引くことが可能だ。
【仮想通貨の取引で確定申告が不要なケース】
- 仮想通貨を購入したのみ
- 仮想通貨を保有しているのみ
- 仮想通貨を売却後の所得額が20万円以下
■仮想通貨の利益を確定申告しないとどうなる?
納税義務のある所得を申告していないことが税務調査で発覚すると、ペナルティとして延滞税と加算税が課せられる。
延滞税とは、確定申告が遅れた場合や確定申告額が誤っている場合に課せられる税金。加算税とは、延滞税に加えて徴収される税金で、延滞税によって収めるべき税金の最大50%が上乗せされる。
仮想通貨の税金未納は、ブロックチェーンによる取引履歴の保存や国税庁の専門調査チームが仮想通貨取引を重視していることから発覚しやすい傾向があるため、ごまかしは避けよう。
なお、所得税の確定申告は利益が20万円を超えた場合に必要となるが、住民税の場合は1円でも利益が発生した場合、自治体への申告が必要となる。住民税の申告手続きや申告書の様式は自治体によって異なるため、まずはホームページや電話等で手続きの内容や必要書類を確認しよう。
■仮想通貨の確定申告はサラリーマン(会社員)と個人事業主でどう違う?
仮想通貨の確定申告は、サラリーマン(会社員)か個人事業主かによって若干手続きが異なる。
会社員の場合は、会社から源泉徴収票をもらったあとで確定申告の手続きを進めよう。申告書の作成は国税庁WEBサイトの「確定申告書作成コーナー」が利用できるほか、確定申告の時期になると自治体や商工会議所に相談窓口が設けられるケースも多い。
開業届を提出している個人事業主の場合は、本業の所得について毎年確定申告を行うため、仮想通貨の収入を新たに「雑所得」として計上するだけで良い。雑所得には経費も計上できるため、参考にした書籍やセミナーがあれば領収書も取っておこう。
仮想通貨の確定申告のやり方
ここでは仮想通貨の確定申告をする際の全体の流れと、確定申告書作成に役立つツールを紹介する。詳細な手続きや詳しい使用方法は、国税庁などの公共サイト、および各ツールの提供元情報を参照してほしい。
■仮想通貨の確定申告の流れ
仮想通貨の確定申告は、以下の流れに沿って行うのがおすすめだ。
- 仮想通貨取引業者が交付する「年間取引報告書」を用意する
- 損益計算のために「仮想通貨の計算書」を作成する
- 仮想通貨の計算書の内容を「確定申告書」に記載する
- 確定申告書を提出・納税する
年末近辺に仮想通貨の取引業者から「年間取引報告書」が発行される。ダウンロードして保存しておき、確定申告前に「暗号資産(仮想通貨)の計算書」を作成しよう。国税庁のホームページで配布されているファイル※を利用すると便利だ。
※暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和6年12月)|国税庁
計算書を作成したあとは、その内容を元に確定申告書の作成を行い、郵送またはe-Taxで提出する。申告書の作成時に納税額がわかるので、納税方法(口座振替、Pay-easy、クレジットカードetc.)を決めて納税をすれば完了だ。
■WEBの「確定申告書等作成コーナー」がおすすめ
確定申告書の作成は、国税庁が提供する「確定申告書等作成コーナー」※を使うと良いだろう。ネット上から無料で利用でき、スマホからも申告書の作成が可能だ。
※参考
■仮想通貨の確定申告は「手書き」「会計ソフト」でも可能
確定申告書等作成コーナー以外では、申告書をダウンロードして手書きする方法や会計ソフトを使う方法などもある。
手書きの場合は郵送提出のみとなるため、申告期限に注意したい。国税庁が配布している「確定申告書の記載手順」※を参考にすると良いだろう。
会計ソフトは、青色申告の帳簿作成も自動でできる上、e-Taxでの提出も可能だが、ソフト代が有料となる。毎年確定申告が必要な個人事業主に利用者が多い。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部