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アメリカのトランプ大統領が政権公約に掲げていた関税引き上げの大統領令に署名。2025年2月4日より発動する予定となり、早速市場にも影響を及ぼした。
そんな中、カナダとメキシコに関しては両国首脳とトランプ大統領の会談により、前日の3日に引き上げが30日間保留されることになった。
このトランプ関税に関するリポートが三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から届いているので、概要をお伝えする。
なお、原稿執筆時はカナダとメキシコに対する関税引き上げ延期が伝えられていなかったため、現状と異なる部分が含まれています。ご了承ください。
トランプ米大統領は2月1日、カナダ、メキシコ、中国に対し追加関税を賦課する大統領令に署名
トランプ米大統領は2月1日、カナダとメキシコからの輸入品に25%、中国からの輸入品に10%の追加関税をそれぞれ賦課する大統領令に署名した。
今回は、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、不法移民と違法薬物の流入を国家の緊急事態と認定、大統領権限によって関税が発動。米議会調査局によると、関税措置実施にあたり事前調査を必要としないIEEPAを根拠とする関税引き上げは、初めてのケースになるとのことだ。
トランプ氏は1月31日、関税が輸入物価に転嫁される影響についての記者団からの質問に、「短期的な混乱が起こるかもしれないが、人々はそれを理解するだろう」と答え、「関税はインフレではなく、成功を引き起こす」と述べた。
そして翌日早々に、IEEPAを根拠とする関税引き上げの大統領令に署名したことを踏まえると、経済的なリスクをある程度承知の上で、カナダ、メキシコ、中国に強硬な姿勢を示したものと考えられる。
■3か国は対抗措置へ、それに対し米国はさらなる税率引き上げの意向、関税引き上げ応酬の恐れ
米関税措置に対し、カナダは300億カナダドル相当の米輸入品に25%の関税をかけ、さらに1250億ドル相当分を追加するという(図表1)。
メキシコも関税措置を含む対抗策実施の意向を明らかにしており、中国は世界貿易機関(WTO)に提訴して、相応の対抗措置をとる考えを示唆している。
なお、米大統領令には、報復措置に対するさらなる税率引き上げや対象品目の拡大が明記されており、関税引き上げの応酬となる恐れがある。
米ホワイトハウスは、カナダが違法薬物対策と国境警備で米国に協力するまで、メキシコは違法薬物対策で協力するまで、課税を続けると表明している。
また、中国に対しても、違法薬物対策で、全面的な協力を確保するまで課税を続けるとしている。
米関税引き上げは2月4日から実施されるが、関税の解除には、少なくとも米国が、それぞれの国から十分な協力を得られたと判断することが必要と思われる。
■米関税引き上げとカナダ、メキシコの報復は経済や市場にマイナスだが2月4日までの動向に注目
関税引き上げによる世界のマクロ経済や金融市場への影響は、今後の米国と、カナダ、メキシコ、中国との協議の進展次第だが、米関税引き上げは2月4日からのため、直前で関税撤回の可能性も残されている。
米国の関税実施と、カナダ、メキシコの報復関税を仮定した場合、三井住友DSアセットマネジメントが試算する各国の実質GDP成長率への影響は図表2のとおりで、追加的な関税引き上げ実施となれば、マイナスの影響がさらに広がることになる。
株式市場は、いったんは総じて軟調な動きが予想され、景気敏感なシクリカル銘柄よりも、景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄が選好されやすい地合いが予想される。
為替市場では目先、米ドル、日本円、スイスフランの選好が見込まれ、長期金利は米国で上昇圧力が残る公算が大きいと思われる。ただし、これらの動きは前述のとおり、米国と3か国との協議の進展次第であり、まずは2月4日までの動向が注目される。
構成/清水眞希