感染症対策が認知症予防の鍵となる可能性が示唆されました。イギリスの研究で、ワクチンや抗菌薬などの使用が認知症リスクの低下と関連していることが明らかになったのです。感染症と認知症の関連性を示す新たな証拠となり、予防・治療法開発に期待が高まります。
適切な感染症管理が認知症のリスクを下げる
認知症は本人だけでなく介護者にも深刻な苦痛をもたらす疾患であり、世界での認知症による経済的損失は推定1兆ドル(1ドル155円換算で約155兆円)を超えるという。しかし、現在のところ、認知症に対する治療は対症療法のみであり、根本療法の開発が待たれる。そんな中、英ケンブリッジ大学医学部精神科のBenjamin Underwood氏らの最新の研究で、感染症の予防や治療が認知症を予防する重要な手段となり得ることが示唆された。
Underwood氏によると、「過去の認知症患者に関する報告を解析した結果、ワクチン、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬の使用は、いずれも認知症リスクの低下と関連していることが判明した」という。この研究結果は、同氏を筆頭著者として、「Alzheimer’s & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions」に1月21日掲載された。
認知症の治療薬開発には各製薬企業が注力しているものの、根本的な治療につながる薬剤は誕生していない。このような背景から、認知症以外の疾患に使用されている既存の薬剤を、認知症治療薬に転用する研究が注目を集めている。この方法の場合、薬剤投与時の安全性がすでに確認されているので、臨床試験のプロセスが大幅に短縮される可能性がある。
Underwood氏らは、1億3000万人以上の個人、100万症例以上の症例を含む14の研究を対象としたシステマティックレビューを行い、他の疾患で使用される薬剤の認知症治療薬への転用可能性について検討を行った。
文献検索には、MEDLINE、Embase、PsycINFOのデータベースを用いた。包括条件は、成人における処方薬の使用と標準化された基準に基づいて診断された全原因認知症、およびそのサブタイプの発症との関連を検討した文献とした。また、認知症の発症に関連する薬剤(降圧薬、抗精神病薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬など)と認知症リスクとの関連を調べている文献は除外した。
検索の結果、4,194件の文献がヒットし、2人の査読者の独立したスクリーニングにより、最終的に14件の文献が抽出された。対象の文献で薬剤と認知症リスクとの関連を調べた結果、ワクチン、抗菌薬、抗ウイルス薬、抗炎症薬が認知症リスクの低減に関連していることが明らかになった。一方、糖尿病治療薬、ビタミン剤・サプリメント、抗精神病薬は認知症リスクの増加と関連していた。また、降圧薬と抗うつ薬については、結果に一貫性がなく、発症リスクとの関連について明確に結論付けられなかった。
Underwood氏は、「認知症の原因として、ウイルスや細菌による感染症が原因であるという仮説が提唱されており、それは今回得られたデータからも裏付けられている。これらの膨大なデータセットを統合することで、どの薬剤を最初に試すべきかを判断するための重要な証拠が得られる。これにより、認知症の新しい治療法を見つけ出し、患者への提供プロセスを加速できることを期待する」と述べた。
また、ケンブリッジ大学と共同で研究を主導した英エクセター大学のIlianna Lourida氏は、ケンブリッジ大学のプレスリリースの中で、「特定の薬剤が認知症リスクの変化と関連しているからといって、それが必ずしも認知症を引き起こす、あるいは実際に認知症に効くということを意味するわけではない。全ての薬にはベネフィットとリスクがあることを念頭に置くことが重要である」と付け加えている。(HealthDay News 2025年1月23日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://alz-journals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/trc2.70037
構成/DIME編集部
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