春が近づきつつある今、3月28日のプロ野球開幕が日に日に迫ってきた。すでに各球団のキャンプ便りも届きはじめ、待ちわびるファンにとってはそわそわと楽しい日々が始まっているだろう。
南場会長が9人のルーキーに名刺交換会と講義でエール
シーズンスタートを前に、昨季、セ・リーグ3位から26年ぶりの日本一に輝いた横浜DeNAベイスターズでは、2015年から続く、球団の歴史やDeNAの事業内容を知る研修を兼ねた毎年恒例の「2025年度新入団選手会社訪問会」が開催された。当日はスーツでビシッと身を包んだ2025年のルーキー9名が、DeNA本社のある渋谷スクランブルスクエアに集結。スタッフや報道陣からの万雷の拍手が響き渡る中会場入りした。
まずDeNA代表取締役会長兼ベイスターズオーナーの南場智子氏と、ドラフト1位の竹田祐選手をはじめとする9名の選手による名刺交換。真新しい名刺を慣れない手つきで交換する選手たち。南場会長から「頑張ってくださいね」というエールを送られ、決意のこもった握手が交わされた。
講義では、南場会長が、DeNAの事業説明に加え、ベイスターズのこと、プロ選手としての心構えなどを約50分間熱量高く伝えていく。「去年は とんでもない下剋上をしたので、あの時だけ強かったのか、本当に強いチームなのかが試されるのが2025年です。我がチームにとって一番大事な年に入団したというのはひとつの運命です。この重責をみなさんにも担っていただきたい」との言葉に、ルーキーたちは真剣に耳を傾けた。
和やかに進行した選手たちとの質疑応答。南場会長がわかりやすく回答する。
南場会長が伝えるプロの心得はビジネスパーソンも覚えておきたい
南場会長が講義で語った言葉には野球選手のみならず、ビジネスマンにとってもためになる金言が多い。ここでそのいくつかをピックアップしてみよう。
今季の優勝に向けての意気込みを話す南場会長。指にはベイスターズのマスコット、DB.スターマンのリングが光る。
■その1:DeNAで一番大事にしているのが「デライト」
「DeNAはお客様にデライトを提供しています。デライトは喜びという意味で、中でも顔がパッと明るくなるような、想像を超えるような、輝きを持った喜びというイメージです。昨年優勝してわかったのは、お客様に最高のデライトを届けられこと。経営努力で提供できたデライトとはインパクトがまったく違います。優勝した瞬間のみなさんの顔を見て、勝つことが、どれだけユーザー1人1人の人生や町全体の喜びに繋がるかを痛感しました。やっぱり勝負事は勝たなくてはダメ。だからこそ選手には強くなってもらい、最終的にチームを強くしてほしいと思います」
■その2:プロのステージに立つことは消えない記録の始まり
「ビジネスパーソンにも同じことは言えますけれども、プロとしてのキャリアが始まるということはステージに乗るということで、1回乗ってしまったらもう乗りっぱなしです。同時に、消えない記録が始まっていきます。いい数字も悪い数字も、成績以外の言動も含めて記録に残ってしまうことを覚悟し、プロの責任としてファンへの感謝とリスペクトを持ち続けてください」
■その3:スポーツでもビジネスでも大成する人には2つの共通点がある
「才能がありながら、大成する選手としない選手はどこが違うのか、球界の重鎮にお会いするたびに聞いています。結論からいうと違いは2つあります。ひとつは思いの強さです。思いの強さとは、野球選手としてどれだけ大成したいと思えるか、成功したいと思えるかということ。自分はもっと上にいけるという信念を疑わず、それを諦めずに持ち続けることだそうです。これはビジネスパーソンも、スタートアップの起業家もみんな一緒です。もうひとつが、切れ目のない努力。平凡ですが、良い時も悪い時も努力できるかどうかが大成するポイントになるとのことでした」
■その4:全力プレーがファンへの感謝の表現になる
「プロにとって一番のファンサービスは全力プレーです。ひとりの気を抜いた、集中力の欠けたようなプレーで、取れる星を落としてしまうのは、 何十万人のベイスターズファンの24時間を台無しにします。ファンへの感謝の気持ちは持っているだけではダメで、感謝を表現できることがプロと普通の人間の違いです」
27年ぶりのリーグ優勝と2年連続の日本一がかかった2025年。ルーキーたちの活躍で、沿道1.5kmにわたり30万人のファンが集まった昨年の横浜パレードを今期も見られることを期待したい。
2025年度新入団選手は以下の通り。
【ドラフト指名順】竹田祐選手(投手/三菱重工West)、篠木健太郎選手(投手/法政大学)、加藤響選手(内野手/徳島インディゴソックス)、若松尚輝選手(投手・高知ファイティングドッグス)、田内真翔選手(内野手/おかやま山陽高)、坂口翔颯選手(投手・國學院大)【育成指名順】小針大輝選手(外野手・日本大学鶴ヶ丘高)、吉岡暖(投手・阿南光高)、金渕光希(投手・八戸工業大学第一高)
取材・文/安藤政弘