裁判所のジャッジ
裁判所
「B子は妻に慰謝料170万円を払え」
―― B子さん、不服そうですが
B子
「私が非難されるのは筋が違うと思います。だって、夫Aから妻の愚痴を聞かされ、夫Aのことをかわいそうだと思って交際を始めたからです」
裁判所
「たしかに夫Aはいろいろと愚痴を言ってたようだし、『将来、妻と離婚するつもりだ』なんて言ってたようだけど、あなたと付き合ってる間いつまでも離婚に向けた動きがないし、家庭内別居状態じゃないことも気づいてましたよね。だからあなたには非難されるべき事情があるのです」
B子
「としても、暴行を受けた以降は、夫Aからストーカーのように追いかけられていたんですよ。私は…被害者です。自分から望んで夫Aと接していたわけではありません」
―― たしかにそうですよね。拒否したら何をされるか分かりませんもんね。裁判所さん、どうですか?
裁判所
「B子さんが不法行為責任を負うことに変わりはありません。夫Aにカギを壊されたことやカバンをひったくられたことについて被害届を出していないし、警察への相談や110番を繰り返してはいますが性的関係を続けているからです」
■ 雑感
うーん、けっこう厳しい判断ですね。裁判官によっては「ある時点以降は性行為に応じざるを得なかったのでB子に責任ナシ」と判断する人もいると思います。
ほんで、慰謝料なんぼ?
―― 慰謝料を170万円とした理由は何でしょうか?
裁判所
「以下の事情を考慮しました」
〈慰謝料アップ要素〉
・不貞行為は約4年も続いている
・2度も夫Aの子を中絶。妻の精神的苦痛は大きい
・夫婦関係の破綻が決定的となった
裁判所
「あと、B子は妻に嫌がらせ電話したり、手袋を投げつけたりしていますが、この嫌がらせ行為は執拗(しつよう)かつ悪質」
■ 注意!
浮気相手が本妻 or 本夫にイランことをすると払う慰謝料がアップする材料となります。
とはいえ、今回は慰謝料がダウンしたポイントもありました。
〈慰謝料ダウン要素〉
・浮気相手の女性B子は暴行を受けていた
・精神的にカナリ追い詰められていた
―― 嫌がらせで慰謝料がどれだけアップしたんでしょうか? あと、ダウン要素でどれくらいダウンしたのでしょうか?
裁判所
「……。当裁判所は本件に顕(あらわ)れた一切の事情を考慮して慰謝料を算定しました」
―― もうちょい詳しく聞きたいのよ!
裁判所
「これにて閉廷!」
裁判官の脳内は分かりません。今回は以上です。またお会いしましょう
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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