eTSIのR-ラインに試乗
今回はeTSIのR-ラインに試乗した。タイヤはティグアン最大の255/40R20サイズとなり、すでに説明したようにDCC Proが標準装備される現時点でのガソリンターボモデルの最上級スポーツグレードだ。価格は588.9万円である。なお、純正インフォテイメントシステムのディスカバープロMax(SSDナビ、通信モジュール内蔵)も標準装備されている充実装備仕様で、オプションとしてはパワーレザーシート、ハーマンガードンサウンドシステムなどが用意される程度。全23種類に及ぶ安全装備、先進運転支援機能を含め、ほぼフル装備と言っていい。
運転席に乗り込めば、R-ライン専用のスポーツコンフォートシートのサイドサポートはけっこうな高さがあり、かけ心地は文句なしに快適で、なおかつしっかりとサポートしてくれる。座面は伸縮式となるから大柄な人でも最適な着座姿勢がとれるはずである。
DCC Proはセンターディスプレーで操作、セッティングでき、コンフォート寄りからスポーツ寄りに、15段階で調整できる。例えばDCCをコンフォートにして、ドライブモードでステアリングをスポーツ、ドライブをエコ、ACCをエコ、オートライトシステムをスポーツにセットするなど、好みに合わせて自由自在である。
DCC Proをまずはコンフォートにセットして走り始めれば、さすがに20インチタイヤだけに荒れた路面ではゴツゴツしたタッチを伝えてくるものの、強靭なボディ剛性、足回り剛性を実感できるフラットかつスポーティに快適な乗り心地に満足できる。一般道、首都高における段差の乗り越えでもショックは最小限だ。コンフォートでもカーブでの姿勢変化、ロールが抑えられ、快適な乗り心地と確かなロードホールディングを両立しているところは、なるほどDCC Proの面目躍如といったところだろうか。とはいえ、DCC Proなしのグレードでも、基本部分がしっかりしているため、走りに不満など出るはずもないと思える。
DCC Proをスポーツ寄りにセットすると、クルマの動きが一段とスポーティになるのと同時に乗り心地はけっこうハードに。それはそれでファンなドライビングフィールを味わせてくれるのだが、普段使いでは、コンフォートでゆったり走るほうが筆者は好みである。スポーツ寄りのセッティングは、山道などを痛快に走りたいときにとっておきたい・・・。
ちょっと気になったのは、エンジンフィール。低回転域ではザワザワ感があり、例えば非マイルドハイブリットの先代のエンジンのほうが(ゴルフ7.5を含む)スムーズな印象を持てた。が、中高回転まで回せば4気筒1・5Lターボエンジンとして文句なしのスムーズさ、トルクの盛り上がりを、もはやトルコンATと変わらない変速ショック皆無の7速DSGのウルトラスムーズな変速、出来の良さとともに味わうことができる。
国内外の4気筒エンジンとしては文句のないハイレベルなエンジンと言える。付け加えれば、アクセルペダルを踏んでエンジン回転を上げ、直後にアクセルペダルを戻したときの回転落ちはやや緩慢。非マイルドハイブリッドの直4 1・4~1・5Lターボエンジンにはなかった現象でもある。
とはいえ、ステアリングフィールはじつにスムーズかつ正確で、20インチタイヤの恩恵もあり、ボディサイズを感じさせないキビキビした軽快な走りが可能だから、運転そのものを楽しめるSUVであることは間違いない。高速走行での直進性の良さは、フォルクスワーゲンとして今さら言うまでもないが、鉄壁である。だから長時間の高速走行も疲れない。ACCの作動もかなり自然で良くなっているのだ。
車内の静粛性もまたハイレベル。巡行時にドライバーの耳に届くのはほぼ20インタタイヤが発するロードノイズで、これならハーマンカードンサウンドシステムをオプションで付けてもいいかな・・・と思わせてくれたほどだった。
装備類ではエレガンスグレード以上に装備されるリラクゼーション機能=マッサージ機能が嬉しい。走りながら背中を空気袋でマッサージしてくれるわけで、ロングドライブでの運転疲労の軽減に役立つ。なお、パワーシートになる本革シートを選べば、リラクゼーション機能はさらに高機能になるらしい。さらにステアリングヒーターも装備されている。
後席エアコン吹き出し口はゴルフ以上の車種に装備されるが、ティグアンは温度調整も可能。2024年夏のような酷暑での後席快適性が格段にアップするはずである。
日本市場でのフォルクスワーゲンは、ゴルフやT-クロス、ポロの人気が高いものの、改めて世界で最も売れているティグアンの実力を確認。日本でのティグアン人気を決定づけ、高める新型であることは間違いないと思えた。気筒休止システムの恩恵もあり、高速走行ではWLTCモード燃費を上回ることもあるeTSIの実燃費の良さも併せて報告しておきたい。
文・写真/青山尚暉