
精進落としとは、葬儀終了後に行う会食のことです。葬儀の参列者に対して感謝の気持ちを伝えるために設けられる場ですが、何らかの理由で行わない場合は引き出物や『御膳料』などを渡します。今回は、精進落としとは何かについて、詳しく解説していきます。
目次
精進落としという言葉を聞いたことがあっても、具体的にはどのようなものなのか、詳しく知らない人もいるかもしれません。正しい意味を理解して、教養を身につけていきましょう。
精進落としとは
まずは、精進落としの意味や由来を見ていきましょう。また、通夜振る舞いとの違いについても解説します。
■葬儀後に行う会食のこと
精進落としとは、葬儀の終了後に行われる会食のことをいいます。もともとは、『故人は亡くなってから四十九日目に浄土へ旅立つ』という仏教の考え方に基づき、四十九日の法要が済んだ後に行われていたものです。
故人が浄土に行くまでの間、質素な料理を食べて過ごしていた遺族が、四十九日の法要が済んだ後に通常の食事に戻す儀式でした。しかし、現代では葬儀当日に済ませることが多く、僧侶や参列者に向けていたわり・感謝の気持ちを示す場となっています。
■精進落としと通夜振る舞いの違い
精進落としと混同されがちなものに、通夜振る舞いがあります。どちらも葬儀関連の会食ですが、目的や実施するタイミングに違いがあります。精進落としは葬儀後に開く会食なのに対し、通夜振る舞いは通夜の後に提供される料理です。
また、精進落としは僧侶や親族など限られた人に対して提供するものですが、通夜振る舞いは通夜の参列者全員に振る舞われるという違いがあります。しかし、どちらも故人をしのび、参列者への感謝を表す大切な機会であることに変わりはありません。
精進落としに必要な準備
初めて葬儀関連の手配を任され、精進落としにどのような準備をしたらよいのか分からない人もいるでしょう。ここでは、精進落としに必要な準備について解説します。
■会場を決める
精進落としの会場選びは、参列者の人数や予算、地域の慣習などを考慮して決定します。一般的に、葬儀場・火葬場・レストラン・自宅などで行いますが、参列者の移動のしやすさなども考慮して決めることが大切です。
葬儀場を利用する場合は、多くの施設に精進落とし用の部屋が用意されており、移動の手間を省けるというメリットがあります。
また、葬儀時間を短縮させるために、収骨までの待ち時間を使って火葬場で行うことも珍しくありません。ただし、火葬場によっては精進落とし用の会場が限られている場合があるため、事前に確認が必要です。
レストランを利用する際は、故人とゆかりのある場所を選ぶのも一案ですが、直前の予約になることが多く、不可能な場合があるので注意しましょう。
自宅で行う場合は、落ち着いた雰囲気で故人をしのぶことができますが、準備や片付けの負担が大きくなるのが難点です。
■料理を手配する
精進落としでは、一人一膳ずつの料理を用意します。どのような料理を出すか、特に決まりはありません。
一般的には、仕出し弁当・すし・会席料理などを用意することが多いようです。故人の好物や、地域の特色を取り入れるのもよいでしょう。
ただし、鯛や伊勢海老など、お祝いの席で出されるような食材は避けるのがマナーです。また、幅広い年代の人が参加することを考えて、メニューの内容が偏らないように配慮しましょう。
参列者が希望すれば、アルコールの提供も問題ありません。迷ったときは、葬儀社や専門店に相談すると、人数や予算に応じたメニューを提案してくれます。
精進落とし当日の流れ
精進落としは、故人をしのぶ大切な時間です。滞りなく進められるよう、当日の流れや注意点を確認しておきましょう。
■着席する
参加者がスムーズに着席できるよう、席次表やテーブルに置く名札を用意しておくのがおすすめです。精進落としの席次は、葬儀とは異なるマナーがあるので注意しましょう。
最上座には僧侶を案内し、その次に世話役など、葬儀に尽力してくれた人が座ります。喪主や遺族は、僧侶から離れた下座に座るのが一般的です。
一般の参列者がいる場合は、席順に厳格なルールはありません。年齢が上から順に着席するなど、地域のルールや関係性を考慮して決めるとよいでしょう。また、赤ちゃん連れの参列者には出入り口付近の席を用意するなど、状況に応じた配慮も必要です。
■開始のあいさつをする
精進落としの開始時には、喪主または親族代表があいさつをします。このあいさつは、葬儀が滞りなく終了したことや、参列者への感謝を述べるものです。
<開始のあいさつの例>
「本日は故〇〇の葬儀にご参列いただき、誠にありがとうございました。皆さまのおかげで滞りなく式を執り行うことができました。ささやかではございますが、お食事をご用意いたしましたので、故人の思い出話などをしながらお召し上がりください。」
喪主以外の親族が代表してあいさつする場合は、故人との間柄を含めた自己紹介もします。
■献杯の後で会食する
開始のあいさつが終わると献杯をします。献杯の前には、故人の友人などがあいさつをしますが、開始のあいさつをした人がそのまま行っても問題ありません。
<献杯のあいさつの例>
「故〇〇の友人の〇〇と申します。ここに故人をしのび、皆さまに献杯をお願いしたいと思います。どうぞご唱和ください。献杯。」
献杯は乾杯とは異なり、グラス同士をぶつけたり高く掲げたりしないのがマナーです。献杯が終わり、喪主や進行役が「お召し上がりください」と促したら会食が始まります。
会食中、遺族は参列者の席を回りながらお礼の言葉を伝えましょう。1時間から1時間半程度で終了するのが一般的です。
■締めのあいさつをする
喪主または親族代表が、締めのあいさつをして終了します。参列者への感謝の気持ちとともに、今後の法要予定などについても伝えましょう。
<締めのあいさつの例>
「本日は長時間にわたりご参列いただき、誠にありがとうございました。皆さまから故人の思い出話をお聞きし、家族一同、心温まる時間を過ごすことができました。
四十九日法要は、来月を予定しております。どうぞ足元にお気を付けてお帰りください。本日は誠にありがとうございました。」
終わりを意味する『お開き』は、お祝いの席で使われる言葉なので、葬儀関連の会食では使わないのがマナーです。