2024年のユーキャン新語・流行語大賞に「アサイーボウル」がノミネートされていましたね。五十音順だったので先頭に出てきて面くらいました。え、今年アサイーボウルって流行りましたっけ。2010年代に一度ヘルシーブームで流行ったことはありましたが。まあ、タピオカミルクティーやマリトッツォ、高級食パンみたいに「流行り食品」がなかったので捻り出した、といったところでしょうか。私好きですよ、アサイーボウル。冷凍のアサイーシャーベットにブルーベリーやいちご、はちみつをかけて食べたらおいしい。栄養価が高いんですよね、確か。ハワイに行ったときもオーダーしたのですが14ドルくらいで少し高く、さらに量も多くて途中からフードファイトみたいになっちゃいましたが。
にしてもハワイ、物価がエグかったです。2023年に行ったのですが、チップ含めるとやってられないよ。今回はそんなハワイと日本の関係を温故知新していきたいと思います。まず音楽面なのですが、ムード歌謡って実はハワイアンなんですよね。スティールギターの奏法がハワイアン丸出し。ほわぁーんってやつ。そもそも昭和初期に導入されたハワイアン音楽は若者の中でハイカラなものだったらしく、戦後のアメリカ本土でのハワイアンブームも相まって演者が増え、結果的にムード歌謡へと魔改造されていくわけです。
ハワイブームを経てハワイ飯ブームへ
文化面からのハワイブームも見ておきましょう。そもそも日本人の海外渡航が自由化されたのは1964年なのですが、約1年前に加山雄三さん主演『ハワイの若大将』が大ヒット。海外旅行=ハワイ、という方程式が作られていったようです。そして1970年代、1ドルが360円という超円安にもかかわらず海外旅行の定番として定着、加速度的に日本人観光客が増えていき、それに伴い日本語メニューや日本語対応の店員、日本店舗のハワイ支店などジャパンフレンドリーになっていき、英語が苦手な日本人にとっては、さらに行きやすい海外へと認知されていきました。
そして1980年代後半、バブル景気の時期は日本人による爆買いが始まります。アラモアナセンターでお買い物しまくっている映像を当時ニュースで見た気もします。このアラモアナセンター、バブル期に先駆けてダイエーの子会社に買収されていたんですって。すっかり日本人シフトになっていたんですねえ。99年に売却したようですが。あと芸能人が年末年始を過ごす場所としてもおなじみでしたよね。ホノルル空港で芸能リポーターが突撃してたのが懐かしい。あの動く歩道で塩対応する芸能人ごっこをしたい人生だったな。
そんなハワイですが日本の不景気に伴って2000年代に日本人観光客が減少。しかし2010年代にグググッと伸びたとのこと。原因は「ハワイ飯ブーム」。誰が仕掛けたんでしょうか? 確かに今まで注目されることのなかったハワイグルメがおしゃれ飯として紹介され始めました。ロコモコ、パンケーキ、コナコーヒー、ガーリックシュリンプ、そしてアサイーボウルもここで再登場です。パンケーキの行列はちょっと笑っちゃいましたよね。音楽面もJack Johnsonをはじめとしたサーフミュージックが流行、さらにBruno Marsもハワイ出身と、ムード歌謡からの華麗な脱却もできていたんですね。
時代とともに形を変えながらも日本人に人気なハワイ。しかし2023年の日本人渡航者は約57万人。1990年は約200万人とのことなので寂しい限りです。コロナ禍後のハイパーインフレと円安に置いていかれた印象です。実際、私が行った時も日本人少なかったし、日本語スタッフやメニューも減っていました。そんな中の「アサイーボウルが流行語」。もっと気楽にハワイ旅行ができる狼煙だと信じたいところですねえ。爆買いとかはもういいからさ!
文/ヒャダイン
ヒャダイン
音楽クリエイター。1980年大阪府生まれ。本名 前山田健一。3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学卒業後、本格的な作家活動を開始。様々なアーティストへ楽曲提供を行ない、自身もタレントとして活動。
※「ヒャダインの温故知新アナリティクス」は、雑誌「DIME」で好評連載中。本記事は、DIME2・3月号に掲載されたものです。