
目次
持ち家を相続することになったら、遺産分割協議・相続登記・相続税申告などの手続きが必要です。漏れなく手続きを行い、スムーズな相続の完了を目指しましょう。
本記事では、持ち家の相続に必要な手続きの流れを解説します。
1. 持ち家を相続する際の手続きの流れ
持ち家を相続することになった場合は、大まかに以下の流れで手続きを行います。
(1)遺産分割協議
(2)相続登記
(3)相続税申告
次の項目から、各手続きの概要を紹介します。
2. ステップ1|遺産分割協議
遺産分割協議は、遺産の分け方を決める手続きです。相続人全員が参加する必要があります。
2-1. 遺産分割協議の流れ
遺産分割協議は、以下の流れで行います。
(a)相続人を確定する
戸籍謄本などを参照して、遺産分割協議に参加すべき相続人が誰であるかを確定します。
(b)相続財産を把握する
亡くなった家族が所有していた財産を調査して、遺産分割の対象となる相続財産を漏れなく把握します。
(c)遺産の分け方を話し合う
相続人全員が話し合い、遺産の分け方を決めます。
(d)遺産分割協議書を作成する
合意した遺産の分け方を遺産分割協議書に記載し、相続人全員が署名と押印をして締結します。
遺産分割の話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所の調停や審判を通じて、遺産の分け方を決めることになります。
参考:遺産分割調停|裁判所
遺産分割に関する協議・調停・審判については、弁護士に相談すればサポートを受けることができます。
2-2. 持ち家を分割する方法の選択肢
持ち家をどのように分割するかは、遺産分割協議において揉めやすいポイントの一つです。
相続人のうち1人が持ち家を相続する場合は、他の相続人に対する埋め合わせが必要になります。別の遺産を多めに相続させる方法や、持ち家を相続する人が代償金を支払う方法などが考えられます。
持ち家を売却することも選択肢の一つですが、立地によっては買い手が付かないケースもあります。また、売却に当たって建物を取り壊す場合は、数百万円程度の解体費用がかかる点にも注意が必要です。
持ち家の買い手が見つからない場合は、建物を解体して更地にした後、相続土地国庫帰属制度を利用することも考えられます。
相続土地国庫帰属制度の利用については、法務局や地方法務局にご相談ください。
3. ステップ2|相続登記
持ち家を相続した場合は、相続したことを知った日から3年以内に、相続登記の手続きを行う必要があります。
相続登記には「相続人申告登記」と「所有権移転登記」の2種類があります。
相続人申告登記は比較的簡単に申請できますが、相続した持ち家を売却する際には、事前に所有権移転登記を経なければなりません。
相続登記は、持ち家の所在地を管轄する法務局または地方法務局に対して申請します。登記申請に当たっては、司法書士のサポートを受けるのが一般的です。
4. ステップ3|相続税申告
持ち家の相続に当たっては、税務署に対する相続税の申告を要するケースがあります。相続税申告に当たっては、税理士のサポートを受けるのが一般的です。
4-1. 遺産総額が基礎控除額を超える場合は、相続税申告が必要
持ち家を含めた相続税がかかる財産の評価総額が、以下の式によって計算する基礎控除額を超える場合は、相続税の申告・納付を行う必要があります。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
4-2. 小規模宅地等の特例を利用する場合も、相続税申告が必要
持ち家の相続に当たっては「小規模宅地等の特例」を利用すると、相続税の負担を軽減できることがあります。
小規模宅地等の特例を利用する場合は、相続税がかかる財産の評価総額が基礎控除額を超えているか否かにかかわらず、相続税の申告が必要です。
参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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