成長投資枠の売却&再投資シミュレーション
ここでは、新NISA2年目を見据えた具体的な売買イメージを紹介します。
・シミュレーション1:大幅上昇セクターを利確→翌年移行
1. 2025年4月:成長投資枠240万円のうち150万円を使い、ハイテクセクターのETF(米国株中心)を購入。
2. 2025年9月:想定外の好業績や金利低下などが重なり、ETFが大きく値上がりして含み益が+30%に。
3. 2025年12月:さらなる上昇が見込みにくいと判断し、年内に全額利確して利益を確定。これで2024年は成長投資枠を使い切った形になるが、もう一度同じ年に投資枠を“復活”させることはできない。
4. 2026年1月1日以降:売却分の150万円(※購入額ベース)が翌年の成長投資枠として再び利用可能になる(実際の売却益は課税されず手元に残る)。
5. 2026年1月4日:相場全体を見直し、新たな割安セクターや成長分野に240万円枠のうち150万円を再投資。必要ならば、残りの枠90万円も追加投入する。
ポイントは、値上がり益を年内に一旦確定しても、翌年に枠が再利用できること。これにより、必要に応じて定期的なポートフォリオ入れ替えが行いやすくなります。
・シミュレーション2:資金需要で売却→翌年再投資
1. 2025年初頭:結婚資金や引っ越し費用が必要になる見込みはあるものの、成長投資枠240万円のうち100万円を個別株に投資。
2. 2025年11月:予定より早くまとまったお金が必要になり、仕方なく個別株を売却。含み益は少ししか出ていないが、現金が必要なため年内に売却する。
3. 2026年1月1日:売却額分の100万円が再び成長投資枠として使えるようになる。
4. 2026年中:結婚や引っ越しが一段落つき、余裕資金が復活したら、新たに100万円をNISA枠で再投資可能。
もちろんマーケット動向に左右される部分はあるものの、「ライフイベントでお金が必要」→「NISA枠商品を売っても翌年リセットされる」→「落ち着いたら再投資」という流れが組みやすい点が、従来にはなかった利便性と言えるでしょう。
資金需要と新NISAの使い方
新NISA2年目を迎える2025年も、家計や人生設計の中でさまざまなイベントが考えられます。
こうした資金が必要になるタイミングと、NISA枠での投資タイミングをどう組み合わせるかが重要です。新NISAでは「売却して現金化しても、翌年1月1日に枠が復活する」という仕組みがあるため、もしもの出費が想定される方にとっては、大きな安心材料になります。
【新NISAのポイント:余裕資金での投資を心がける】
とはいえ、いつでも売却して枠が翌年に復活するからといって、投資資金をギリギリまで削ってしまうと、予期せぬ出費や相場急落時に“含み損確定”での売却を強いられる恐れがあります。最低3~6か月分の生活防衛資金は現金や普通預金で確保し、残った資金を新NISAへ回すのが基本戦略となるでしょう。
失敗例と成功例から学ぶ、2年目の注意点
・失敗例:投資枠“再利用”を過信しすぎたケース
ケース:「せっかく翌年枠が戻るなら今年は遠慮なく売買しよう!」と考え、短期的な値動きばかり追いかけて何度も売買を繰り返す。
結果:タイミングのズレによって思うように利益が伸びず、むしろマイナスになることも。再利用できるのは“翌年”であって、“同じ年内”に何度も出し入れできるわけではない点に注意。
教訓:年間240万円の成長投資枠を何度でも自由に使えるわけではない。あくまで「年度をまたいで復活する仕組み」であることを踏まえ、長期目線を基本にしながら必要に応じて売買を行うのが賢明。
・成功例:値上がり局面で一部利確→翌年の良い買い場を活かす
ケース:2024年後半に値上がりした銘柄を年末近くで利確。短期的にはさらに上がるかもしれないが、目標のリターンを達成したため一旦利益を確定。
結果:翌年(2025年)1月に枠が回復したところで、市況が調整局面に入り割安になったセクターやETFを再投資し、さらなるリターン獲得に成功。
教訓:利確タイミングをある程度計画的に考え、年度末(12月)あたりで見極めを行うと、翌年枠をスムーズに使える。欲張りすぎず、計画的に利益を確定できる人が新NISAの再利用メリットを活かしやすい。
まとめ:長期視点と柔軟な売買の両立を目指そう
2024年に始まった新NISAは、非課税期間の恒久化や生涯投資上限1,800万円といった大きな枠組みに加え、成長投資枠の再利用(翌年枠の復活)という従来にはない特徴的な仕組みを備えています。
新NISAの真価は、長期・分散・積立という投資の基本を押さえつつ、毎年の相場や資金状況に応じてポートフォリオを柔軟に調整できるところにあります。これは、多忙なビジネスパーソンでも自分のライフサイクルに合わせやすい制度と言えるでしょう。
大切なことは「必要以上に売買を繰り返して手数料負けすることなく、メリハリある再投資を行う」ことです。
何でもかんでも年末に利益確定すればいいわけではありませんが、明確な目標リターンを設けたり、資金ニーズを見据えたりしたうえで売却→翌年再投資を計画的に実行できると、大きなメリットを享受しやすくなります。
2025年は新NISAにとって2年目となり「1年目の学びを活かして最初の大きなアップデートをする」絶好のタイミングです。
相場は常に動き、予想外の出来事が起きるかもしれませんが、柔軟に動ける新NISAの特性を活かしながら、長い目で資産を育てる姿勢を大切にしてください。
「非課税制度だからこそ余裕をもって長期保有し、必要な場面で賢く利確・再投資を行う」これこそ、新NISA2年目における投資戦略のひとつとして検討できる考え方ではないでしょうか。
文/鈴木林太郎