近年、増加している電話詐欺。特に目立っているのが、国際電話経由での振り込め詐欺だ。被害額も増加傾向にある上に、手口も巧妙化している。
今回は、国際電話詐欺の最新状況や対応策について、ITジャーナリスト三上洋氏の解説のもと、紹介する。
いま急増している「国際電話詐欺」
警視庁の公式サイトによると、かかってきた電話番号の先頭に「+」がついた国際電話からの着信は、2023年から急増しているという。
2024年6月は、特殊詐欺に利用された電話番号のうち、約54%が国際電話番号だった。
●国際電話を悪用した詐欺の例
ある都道府県では、数ヶ月前にこんな被害があった。
30代男性の携帯電話に国際電話から着信があり、電話に出ると警察官を名乗る女が「詐欺事件の容疑者として捜査している」などと告げた。またビデオ通話機能によって警察手帳のようなものを見せられた。
その後、検察庁職員を名乗る男から、「金を振り込めば、潔白が証明される」と言われ、男性は相手が指定する口座に500万円超えの金額を送金。家族に相談した後、警察に届け出た結果、詐欺だと判明した。
巧妙化する国際電話詐欺の3パターン
三上氏によれば、国際電話詐欺は近年、巧妙化しているという。主流になっているのが、次の3つだ。
【取材協力】
三上洋氏
ITジャーナリスト。テレビ番組制作会社を経て、1995年からフリーライター・ITジャーナリストとして活動。文教大学情報学部非常勤講師。ITに関するセキュリティ、スマートフォン、節約・お得系情報について、専門家としてTVをはじめ数多くのメディアに出演。著書に「深掘り! IT時事ニュース ── 読み方・基本が面白いほどよくわかる本」などがある。
1.「国際電話ワン切り詐欺」
ワン切りして折り返しかけ直させることで高額な国際電話料金を請求。
2.「偽逮捕状詐欺」
相手に「逮捕状が出ている」と嘘の告知をし、オンラインで偽の逮捕状を見せた後、保釈金などと称して金銭を騙し取る。
3.「偽自動音声詐欺」
自動音声案内で電話料金の未納料金があるなど伝えて金銭を騙し取る。
「特に偽逮捕状詐欺は巧妙で、番号末尾が警察が使っている『0110』であったり、実際に地方の警察が使っている番号と同じであったりと、一見すると本当に警察から電話がかかってきたように思えてしまうこともあります。実際、私の知人も騙されかけたことがあるくらいです。
電話に出ると、警察を名乗って出頭を要請したり、オンラインで偽の逮捕状を見せてきたりします。警察だけでなく、総務省など官庁をかたってお金を騙しとる手口もありますので、注意してください」(三上氏)
「自分は騙されない」と軽く見る人ほど危ない?最新の手口
どれだけ「騙されない」と意識していても、騙されてしまう手口があるという。以下を押さえておき、十分注意しよう。
1.国際電話ワン切り詐欺の騙されやすい手口
●日本語の自動音声メッセージ
国際電話ワン切り詐欺では、かけ直した場合に日本語の自動音声メッセージが流れることがある。この場合、国際電話と気付きにくい。
また災害時に「避難しているあなたの友人からのメッセージを再生します」などのパターンもある。ファストフードの1年分無料プレゼントとしてクイズを延々と聞かされる場合も。これによって通話が長時間になり高額になってしまう。
2.偽逮捕状詐欺の騙されやすい手口
●電話番号の末尾が「0110」
日本国内であれば警察のみしか使えない末尾。しかし海外からの電話番号偽装着信にも使われているため注意。
●電話番号の後半が実在の警察署とまったく同じ
「国際電話番号+○○県警の電話番号」などの番号偽装に注意。
●オンラインでの事情聴取
遠方の県警を名乗って電話をかけてきた上で「今すぐ出頭せよ」と言われる。無理なので断ると「では特別にオンラインでの事情聴取を行う」とLINEでの音声や画像のやりとりまたはテレビ電話形式でのニセ事情聴取が行われる。相手は警察官の制服を着ている場合もある。これによりオンラインの事情聴取が本物だと信じてしまう。
●名指しで逮捕状が出ていることが知らされる
偽逮捕状詐欺では、氏名、住所、電話番号を知っており、名指しで電話をかけてくるので騙されやすい。実際には名簿屋などにある過去の流出データを利用している。
またLINEに誘導された後に、逮捕状の画像が送られてくることがある。実際の逮捕状と同じ形式で、こちらの住所や氏名が書かれているので信じてしまう。
3.偽自動音声詐欺の騙されやすい手口
●料金未払いで焦らせられる
自動音声詐欺の典型パターンは、携帯電話や電気料金の未払いがあると告げられるもの。このとき「すぐに送金しなければ電話や電気が止まってしまう」と焦らせられる。この焦りによって思わず送金してしまう。