
認知症と診断された後の平均生存期間は、診断時の年齢や性別によって異なることが最新の研究で明らかになりました。60歳で診断された女性は平均8.9年、85歳で診断された男性は平均2.2年という結果が出ています。年齢が高いほど生存期間は短くなる傾向があり、また女性の方が男性よりも長生きする傾向が見られました。
この研究は、認知症患者とその家族が将来のケアプランを立てる上で重要な情報となるでしょう。
認知症診断後の生存期間はどれくらい?
認知症と診断された後の平均生存期間は診断時の年齢により異なっており、女性では60歳時に診断された場合で8.9年、85歳時に診断された場合では4.5年、男性ではそれが6.5年と2.2年であることが、新たな研究で推定された。エラスムスMC大学医療センター(オランダ)のFrank Wolters氏らによるこの研究結果は、「The BMJ」に1月8日掲載された。
論文の背景情報によると、世界中で毎年1000万人近くが認知症と診断されているが、診断後の生存期間の推定値は研究によって異なる上に、10年以上更新されていないという。Wolters氏らは今回、システマティックレビューとメタアナリシスを実施し、認知症と診断された患者の介護施設入所までの期間および生存期間を推定した。適格条件を満たした論文は261件で、うち235件の研究(対象者の総計555万3,960人)が生存期間に関して、79件(同35万2,990人)が介護施設入所に関して報告していた。
解析の結果、認知症診断時の年齢が診断後の平均生存期間に大きく影響する傾向が認められ、診断時の年齢が10歳上がるごとに生存期間は1.4年短くなると推定された。例えば、診断時の平均年齢が65歳の場合、平均生存期間は男性で5.7年、女性で8.0年、85歳の場合では男性で2.2年、女性で4.5年であった。最も長かったのは平均年齢60歳で診断された女性の場合の8.9年、最も短かったのは平均年齢85歳で診断された男性の場合の2.2年であった。また、全体的には、女性は男性よりも生存期間が短い傾向が示されたが(平均差4.1年、95%信頼区間2.1~6.1)、これは女性の診断時年齢が男性よりも高いことが原因である可能性が示唆された。
さらに、アジアの研究では米国やヨーロッパの研究よりも1.2~1.4年長い生存期間中央値が報告されており、認知症のタイプ別では、アルツハイマー病で他のタイプの認知症に比べて生存期間が1.4年長いことが示唆された。診断から介護施設入所までの期間中央値は3.3年であり、診断後1年以内に13%、5年後には57%が入所していた。
研究グループは、認知症の診断後、ケアの計画を立てる際に課題となるのは、患者がどれくらいの期間、進行性の脳疾患とともに生存するかを予測することだと指摘している。この点を踏まえて、本論文の付随論評を執筆したノルウェー公衆衛生研究所のBjørn Heine Strand氏らは、こうした種類の研究は、認知症患者とその家族にとって非常に重要なデータを提供すると述べている。
Strand氏らは付随論評の中で、「認知症患者の生存に関する理解は大幅に進歩したが、介護施設入所のタイムラインの予測が依然として困難なことに変わりはない。将来の医療サービスを向上させ、認知症患者とその家族の生活の質(QOL)を最適化するには、より正確で状況に応じた洞察を追求し続けることが必要だ」と述べている。(HealthDay News 2025年1月10日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.bmj.com/content/388/bmj-2024-080636
Press Release
https://bmjgroup.com/study-sheds-more-light-on-life-expectancy-after-a-dementia-diagnosis/
Editorial
https://www.bmj.com/content/388/bmj.q2677
構成/DIME編集部
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