
PPTは複数の意味を持つ略語だ。省略される前の英語は各分野別にまったく示す内容が異なるため、混同しないように意味を押さえておこう。代表的な4分野の「PPT」を紹介する。
目次
英語の頭文字を取った略語は、長い単語を短く表現できる便利な言葉だ。その一方で、「PM(午後、プロジェクトマネージャー)」や「ST(通り、標準時間、土曜日)」のように、同じ表記で意味の異なる略語がいくつもできてしまう問題も抱えている。
「PPT」も紛らわしい略語の一つだ。業界や分野ごとに複数の「PPT」が略語として使われているため、基本的な意味を知らないと、勘違いからトラブルに発展するケースもあるだろう。
そこで本記事では、各分野で使われる「PPT」の意味と正式名称について解説する。
ビジネス・IT分野の「PPT」はパワーポイントの略
PPTの意味としてもっともポピュラーなのは、マイクロソフト社が提供するプレゼンテーション用ソフト「PowerPoint(パワーポイント)」の略語だろう。
パソコン・IT分野はもちろん、プレゼンテーションソフトを使用するあらゆる職種・業界でおなじみの言葉と言える。
■PPTはパワーポイントの拡張子「.ppt」を指す
パワーポイントで作成したファイルには、拡張子として「.ppt」(または「.pptx」)が自動で付与される。そのため、日常的にパワーポイントを利用している人であれば、PPTは見慣れた略語のはずだ。
ちなみに拡張子とは、ファイル形式を識別するための文字列で、ファイル名の最後に入力されている。たとえば、画像ファイルであれば「.jpeg」、Excelファイルであれば「.xls」「.xlsx」、Wordファイルであれば「.doc」「.docx」がそれぞれ固有の拡張子となっている。
■日本語ではPPTの代わりに「パワポ」の略語が使われる
パワーポイントを指すPPTだが、日本語の会話においては「パワポ」と略されるか、省略せずに「パワーポイント」とそのまま呼ぶケースが多く、口語で「PPT」と呼ぶことは一般的ではない。職場によりケース・バイ・ケースな部分はあるものの、パワーポイントのファイルの拡張子=PPTと覚えておけば事足りる場合が多いだろう。
美容分野の「PPT」はポリペプチドの略
美容分野においても「PPT」の略語が使われる。特にシャンプーやトリートメント、コンディショナーなどのヘアケア製品にはPPTが配合されている。髪の補修成分として有名なので聞いたことのある人も多いだろう。
■PPTの正式名称は「Polypeptide(ポリペプチド:たんぱく加水分解物)」
美容分野におけるPPTは、Polypeptide(ポリペプチド)を略した言葉。ポリペプチドとは、たんぱく加水分解物のことで、タンパク質が水に溶けやすいかたちに分解された状態のものを指す。PPTは、毛髪などのより大きなタンパク質に付着してダメージを補修する効果が期待されている。
■美容成分のPPTは髪の毛の補修成分を指す
PPTは、シャンプー、コンディショナーなど家庭用のヘアケア製品をはじめ、美容院やヘアサロンで使われるトリートメント剤や髪の保護剤としても活躍している。
特に、ヘアカラーやパーマ、ブリーチなど髪を痛めやすい施術を行う際には、PPTを配合したトリートメントが併用される場合が多い。
PPTが配合されたトリートメント剤は、パーマなどの熱処理によって剥がれた髪のキューティクルを補修し、髪質を改善させる働きがある。
化学分野で使われる「PPT」は検査などに用いられる単位
化学分野では、食品検査などで微量な成分を計測する際の単位としてPPTが使われる。
■化学や検査のPPTは「parts per trillion(1兆分の1)」を表す単位
単位としてのPPTは、parts per trillion(1兆分の1)を略した言葉。たとえば水質検査や食品検査などで非常に微量な成分を検出する際に使われる。
pptの濃度を水と食塩の割合を参考に見てみると、食塩1pptは、水1リットルに対して食塩が0.000000001g溶けている状態を指す。
なお、単位としてのPPTは、大文字「PPT」ではなく小文字で「ppt」とするのが基本だ。
■食品検査や公害問題で活躍するPPT
pptは非常に微量な単位であるため、日常生活で使用するケースは少ないだろう。
単位としてのpptが活躍するのは、主に化学分野、食品分野、環境分野、製薬分野などで、検査において、食品中や水分中、大気中に含まれる微量な成分を検出する必要がある際に使われる。
医療分野の「PPT」は専門的な療法や疾病名
医療分野においても「PPT」の略語が使われるケースがある。ただし、他の分野と比較すると医療分野のPPTは専門性の高い療法や疾病名となっているため、日常生活を送るうえでは覚えておかなくても支障ないケースが多い。
■医療用語のPPTその1:小児理学療法(pediatric physical therapy)
小児医療における理学療法(pediatric physical therapy)を略して「PPT」と呼ぶ。療法に加えて、小児理学療法士をPPTと表記する場合もあるので、医療関係者であれば知っておいて損はないだろう。
なお、理学療法士とは、患者の身体機能回復を目的としたリハビリを実施する役職のこと。PPTは小児を専門とした理学療法士を指しており、疾病やけがで身体機能が失われている患者を対象に、「起き上がる」「立つ」「歩く」などの機能の回復や維持を目的としたリハビリを行う。
■医療用語のPPTその2:pineal parenchymal tumors(松果体実質腫瘍)
医療用語としては、病名の一つである「松果体実質腫瘍(pineal parenchymal tumors)」もPPTが略語となっている。
松果体実質腫瘍とは、名前の通り、松果体(脳の中央部付近にある小さな器官)にできる腫瘍の一種だが、グレード1の場合は良性腫瘍であり、早期に切除することが重要となる。グレードが2、3と進行していくにつれて、摘出手術のリスクや水頭症発症のリスクが高まり、グレード4では「松果体芽腫」「松果体芽細胞腫」と呼ばれる。進行が早い脳腫瘍の一種となるため、早期発見・早期治療が理想とされる。
※情報は万全を期していますが、正確性を保証するものではありません。
文/編集部