
ミニカップに作って保冷バッグに入れれば、夏のピクニックにぴったり。
アメリカで長年愛されてきた、ジェロ―(JELL-O)の名前で知られるゼリー状のデザート。北米でこのジェロ―の消費量が一番多いのはユタ州です。
作り方はとても簡単。沸騰した水に粉末状のゼリーミックスであるジェロ―を入れて溶かし、そこに冷水を加えて混ぜます。あとは冷蔵庫で4時間ほど冷やすだけ。日本の「フルーツポンチ」や「ゼリー寄せ」に似た、子供から大人まで年齢に関係なく愛されるデザートです。今回はこのツルンとした爽やかな食感のジェロ―をご紹介します。
そもそも「グリーン·ジェロ―」って?
見た目は名前の通り鮮やかな緑色のゼリーです。グリーン·ジェロ―は材料を買って自宅で作るのが一般的。スーパーで簡単に手に入るグリーン·ジェロ―のもととなるゼリーミックスのお値段は、ファミリーサイズで1箱2米ドル以下(1ドル150円で計算すると300円)とお手頃です。
家族ごとの思い出と共に語り継がれるユタ州名物として、観光客にも知られるほどの一品なのです。シンプルに家庭でキャセロール皿に作ってスプーンで小皿に分けたり、ピクニック用に小さなカップに作ったり、レストランで味わったりと食べ方も色々です。
スーパーで簡単に手に入るジェロ―
アメリカを代表するスーパーマーケットチェーン店・ウォールマートは、各地域限定の商品が置かれることで観光客にも人気のスーパーです。そんな地域の特色を感じるウォールマートでは、王道のJELL-Oブランド以外にも、様ざまな会社がジェロ―を販売しています。味はユタ州で人気のライム味から、ブルーベリーやバナナ、オレンジやピーチ味まで豊富です。
ユタ州のウォールマートには、多くのメーカーが手がけるゼリー商品がズラリと並ぶ。
冷蔵コーナーには、ひと口サイズですぐ食べられる色鮮やかなカップ入りジェロ―も。
グリーン·ジェロ―がユタ州のソウルフードになったワケ
ユタ州の公式スナック(上院の決議によってのみ)であるほどの人気デザート。冒頭で書いたようにバラエティ豊かなジェロ―ですが、中でもライム味で緑色をした「グリーン・ジェロ―」がユタ州では有名です。
このデザートがユタ州のソウルフードとして定着した背景には、家族の温もりを大切にする人々の食文化に密接にかかわってきた歴史があります。
第二次世界大戦後、アメリカでは加工食品が普及し、ゼラチンデザートの人気に火が付きました。そのとき、フルーツや野菜をゼリーに混ぜ込むレシピが広まったといわれています。
モルモン教文化に根付いた「家族中心の価値観」。ユタ州では、料理が家族や友人同士をつなぐ重要な役割を果たしています。簡単でアレンジしやすく、教会や親族同士の集まりへも手軽に持っていける。そんな理由もあり、ユタ州でもゼラチンデザートが受け入れられたのです。
ポットラック文化と見た目の楽しさ
ポットラック(持ち寄りパーティ)が頻繁に行われるユタ州では、見た目が華やかでユニークな料理が好まれます。そこで筆者も、定番レシピのひとつ「ニンジンとパイナップル入り」のグリーン・ジェロ―に挑戦してみました。
食材は粉末状のジェロ―と細切りにしたニンジン、そしてパイナップル·チャンクのみ
細切りのニンジンを加えるのはちょっとしたユーモアや遊び心の表れも
初めて作ったニンジン入りは、ゼリーのなめらかな食感に、シャキシャキとした歯ごたえが新鮮でした。
遊び心でもう一品。レインボーをイメージした飾り付けで、子供のお誕生日会に招待されたときに大活躍しそう
ちなみに、ユタ州はホームスクールを取り入れている家庭も多いです。ポットラック以外でも、家で子供たちと一緒にハロウィンやクリスマスなどのシーズンごとに、飾り付けを楽しめるのもジェロ―の魅力です。
風味は野菜嫌いの子供たちのために工夫された、日本の「にんじんゼリー」や、さっぱりした「みかんゼリー」に近いかもしれません。子供のころの懐かしい夏のおやつを思い出させるような味です。
ユーモラスなシンボルとしての定着
州外の人々から見ると、ユタ州の食文化はたまに奇妙に感じられるかもしれません。一部の人たちの間でジョークの対象になったりしながらも、親しみを込めた「ユタ州の象徴」のような存在になったジェロ―。
最後に、ファミリーレストランで提供されるジェロ―をご紹介します。
ちなみに地元の飲食店では、ビュッフェの一品として、またはBBQ料理のサイドメニューとして提供されることが多いです。
メニューに「A Utah classic!」と書かれたライム味のグリーン・ジェロ―。筆者流に意訳すると「ユタが誇る定番デザート!」
シンプルなオレンジ味のジェロ―
トッピングにオレンジと生クリームがのった、レモン風味のふんわりムース·ジェロ―
ユタ州を訪れる際は、ぜひ現地でこのユニークなデザートを味わいながら、ユタ州の文化や人々の温もりを感じてみてくださいね。
文・写真/トロリオ牧
2001年渡米、ユタ州ウチナー民間大使。17年間務めたアメリカ政府の仕事を2023年に辞職。現在はNHKラジオ出演や日本のWebメディアで執筆など幅広く活動中。編著に電子書籍『型の中に答えはある』がある。夫婦でRVキャンプやオフローディングを楽しむのが最高の癒しじかん。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。「海外書き人クラブアウォーズ2025」最優秀新人賞受賞。