2025年1月20日に就任した米国のトランプ新大統領は、選挙期間中の政権公約の一つとして『金融規制』の緩和を掲げてきた。
現在の『金融規制』では銀行の経営破綻を防ぐために、自己資本比率を高めることなどが求められている一方で、銀行が貸し出しに回す資金の減少などが懸念材料となっているためだ。
そこで市場では新政権が進める『金融規制』緩和への期待が高まっていると見られる。
この件に関して、三井住友DSアセットマネジメント シニアリサーチストラテジスト・相馬詩絵(そうま ふみえ)氏による考察リポートが届いているので、概要をお伝えする。
ポイント1:『金融規制』とは?
現在、『金融規制』では、国際決済銀行(BIS)による枠組みに基づき、銀行の破綻を防ぐため自己資本比率を一定以上の水準に維持することなどが求められている。
1988年にバーゼル合意が設定されて以降、段階的に規制強化が進み、2017年12月には、現在のバーゼルⅢの枠組みが最終化された。
米国では、バーゼルⅢの適用期限を2025年7月までとし、米連法準備制度理事会(FRB)などの『金融規制』当局が対応を進めてきた。しかし、同規定の数値目標は銀行経営の圧迫や、融資態度の引き締めを背景に景気に悪影響を及ぼすとの指摘があった。
ポイント2:景気へ好影響も懸念は燻る
今後『金融規制』緩和として、バーゼルⅢの適用期限の延長や、数値目標の緩和などが議論される可能性が高いと見られている。
その場合、銀行は規制のために積み上げなければならなかった資金に余裕が生じることになり、銀行は企業などへの融資に回すことも可能になる。金利の高止まりが懸念されている足元の環境下だが、『金融規制』の緩和による銀行の融資増加などが、景気をサポートすることが期待されている。
一方、2023年3月には米地方銀行の破綻が市場の動揺を招いた。今後、『金融規制』緩和が進んでいく中で、同様の状況が生じないか懸念が高まる可能性には留意が必要と思われる。
■今後の展開:当面は『金融規制』緩和への期待が高まるが……
1月に入り、FRBにおいて『金融規制』監督を担当しているバーFRB副議長が辞任を表明した。民主党政権下で『金融規制』を進めてきた同氏の退任は、新政権との対立を回避する意図があるとも指摘されている。
こうした動きも背景に、新政権が進める『金融規制』緩和に対して市場の期待が高まっている。
ただし、15日には仏中銀総裁が「危機発生の可能性を高める」旨を指摘するなど、批判の声があるのも事実。銀行・当局が金融危機に対する懸念を視野に入れつつ、『金融規制』緩和が実現されることが求められていると考えられる。
構成/清水眞希