2022年の環境省調査によると、国内では毎年79.8万トンの衣類が供給されるが、その64.5%が廃棄されている。中でも伝統的な日本の着物は、文化的遺産でありながら、約一兆円相当が廃棄され続けていると言われている。
1975~2020年までの1世帯当たりの「和服」の年間支出の推移
令和5年度生活文化調査研究事業(和装)報告書、文化庁
こうした着物の扱いを見直そうと、リメイクして再利用する動きが活発になってきた。最近、海外からも注目されているSamuraiALOHA(サムライアロハ)では、着物をリメイクしたアロハシャツが大人気となっている。今回はSamuraiALOHAの櫻井鉄矢さんに、サムライアロハの魅力について、聞いてみた。
SamuraiALOHAの誕生と東日本大震災
――とても素敵なアロハシャツですが、最初に会社概要について伺います。起業したきっかけや、現在までの道のりを紹介してください。
櫻井さん 大学を卒業してブランド品を中心とした古物商・質屋を手掛ける企業に入社しました。店長を経て2009年、28歳の時にフランチャイズ事業の課長となりましたが、2011年、東日本大震災で故郷の宮城県岩沼市が大きな被害を受けてしまいます。そこで、故郷に帰り、実家の家業を再建するとともに、これまでやってきたフランチャイズ店を地元で運営することにしました。
古物商の仕事をする中で、着物の実態を知ることになります。世代を超えて受け継がれてきた貴重な着物が、たくさん存在していました。着られなくなった着物は、国内で約2億着あると言われてますが、これらは貴重な文化財でもあります。何とかその価値を高めるような仕事ができないかと模索していました。
さらに、東日本大震災で、地元・岩沼市の保育園が流されてしまい、子どもを預ける場所が無く、仕事に行けないお母さんたちがたくさんいて、そうした状況を何とかしたいとも思い、 年、アパレル事業をスタートさせました。
現在、宮城県のお母さん達の手で1着ずつ洗い、裁断し、福島県・岩手県の縫製職人の皆様の手でアロハシャツに仕立て直しています。サムライアロハは一着の着物から一着しか作れないので同じシャツはありません。
――創業から今まで、SamuraiALOHAを展開する上で、苦労した点は何ですか?
櫻井さん 周囲の説得ですね。サムライアロハに限らず古物商もそうですが、東日本大震災という極限状態に近い状況で、人脈も資金もない人間が「質屋を起業する!」と言ったり、ましてや「着物からアロハシャツを作る!」と言ったら周囲は気でも狂ったのかと思うでしょう。前例がないこと進めることだったので、狂気にも似た自信を持って周囲を説得し進めていく気持ちを持ち続けることが、大変でした。
現在は古物商とサムライアロハ事業を合わせると、約9億円近い年商になっております。東日本大震災後の文字通り瓦礫の中から、資本金300万円での出発でしたが、優秀な社員や様々な方々の協力によりここまで何とかやってきました。