現地時間2025年1月20日、アメリカ・ワシントンの連邦議会議事堂の円形大広間においてドナルド・トランプ氏の第47代大統領就任式が行なわれた。注目の就任演説は、冒頭で「アメリカの黄金期は今から始まる」、そして「1月20日は解放記念日」と述べるなど、そのアメリカ第一主義を鮮明にしたものになった。
そんな領就任演説と施政方針に関する考察リポートが三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から到着しているので概要をお伝えする。
トランプ大統領は就任演説でアメリカ第一の政策を進めると宣言、不法移民対策強化に着手へ
米国では1月20日に大統領就任式が行われ、共和党のドナルド・トランプ氏が第47代大統領に就任した。トランプ氏は、首都ワシントンの連邦議会議事堂で就任を宣誓。国民に向け約30分の就任演説を行なった。
今回のレポートでは、トランプ氏の大統領就任演説で示された具体的な政策方針を整理し、全体的な受け止めと、今後の金融市場への影響について考えていく。
就任演説について、トランプ氏は、「アメリカの黄金時代が今始まる」、「ただシンプルにアメリカを第一に考える」と切り出し、具体的な政策に言及していった(図表1)。
まず、不法移民対策では、メキシコとの国境における国家非常事態宣言を発令することによって、不法入国を即時に阻止し、何百万人もの犯罪者の外国人を強制送還すると述べた。また、軍隊を派遣し、不法移民の流入を阻止する意向も示した。
■エネルギー政策も方向転換、演説内容は基本的にこれまでの発言どおりで大きなサプライズはなし
また、エネルギー政策について、トランプ氏は過剰な政府支出とエネルギー価格の高騰がインフレを招いたと指摘。国家エネルギー緊急事態宣言を発令する方針を示し、石油などの掘削を進めると発言した。
また、グリーン・ニューディールに終止符を打ち、電気自動車(EV)の義務化を撤廃する意向や、戦略石油備蓄(SPR)を上限まで再補充し、エネルギー輸出を拡大する考えを表明した。
トランプ氏はこのほか、関税の徴収に向けた外国歳入庁や、行政コスト削減に向けた政府効率化省の発足にも言及した。
また、最強の軍隊を再構築することや、宇宙開拓では火星に星条旗を立てることにも触れ、さらに、太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河(中米パナマ)を取り返すなど、強硬的な対外姿勢を示した。
ただ、いずれの内容もトランプ氏のこれまでの発言どおりで、就任演説に大きなサプライズはなかったと判断できる。
■関税引き上げは初日回避へ、米国第一、インフレ抑制の観点ではもとより極端な引き上げは困難
市場ではトランプ氏の大統領就任初日の関税引き上げ有無が焦点となっていたが、複数の米メディアの報道によると、トランプ氏が就任初日に署名する大統領令に新たな関税の導入は盛り込まれない模様だ。
演説内容にサプライズはなく、就任初日の関税引き上げも回避される見通しのため、為替市場は、いったんドル安で反応したものの(図表2)、目先の金融市場は総じて落ち着いた動きが予想される。
引き続き関税の動向は要注意ですが、米国第一、インフレ抑制の観点で考えれば、極端な引き上げは困難と思われる。米国はデカップリング(分断)政策の一環として、貿易、投資、技術移転を制限するため、対中関税を40%程度まで引き上げる公算は大きいとみている。
ただ、他の国に対しては、通商や投資の面で米国経済に有利な条件を引き出すための交渉術にとどまり、一律10~20%の輸入関税導入は回避されると考えている。
構成/清水眞希