「HARE」「niko and …」を手がけるアダストリアが苦戦、期待は「GLOBAL WORK」の出店強化と新業態
2025.01.26ファッションブランド「ニコアンド(niko and …)」や「グローバルワーク」を運営するアダストリアは、2024年3-11月が1割の営業減益となりました。10月の残暑で秋物の販売に苦戦。ポイントキャンペーンの日数が少なかったことも加わり、この月の売上高が伸び悩みました。
アダストリアは今期の通期営業利益を5.5%増と予想しています。残り3ヶ月が勝負となりました。
1割もの増収だった前期から伸びが鈍化
アダストリアは「ローリーズファーム」や「スタディオクリップ」などの様々なブランドを展開していますが、主力となっているのが「グローバルワーク」。アダストリア単体の売上高の2割以上を占めています。
「グローバルワーク」の2024年9-11月の売上高は前年同期間比で1.0%の伸びに留まりました。前年は13.1%も伸びていました。主力ブランドで急ブレーキがかかった格好です。
コロナ禍以降のアダストリアの業績は好調そのものでした。今期予想通りの着地で4期連続の増収営業増益です。第3四半期で1割もの営業減益となった今期のアダストリアは、正に瀬戸際に立たされているというわけです。
※決算短信より筆者作成
しかし、アダストリアは通期営業増益の予想を修正していません。
異例の暑さに見舞われた2024年10月がアパレル業界の鬼門に
今期の苦戦が際立っていたのが、2024年10月の集客状況。全店における客数は前年同月の96.8%でした。前年割れとなったのです。
昨年の10月は異例の暑さに見舞われました。1946年の統計開始以来、北日本、東日本、西日本で、10月としては高温の過去最高を記録。これまで最も高かった1998年の+1.28℃を0.93℃上回りました。東京都では最高気温が31.9℃に達する日があったほど。
アダストリアは秋物の販売が不調に見舞われました。ただし、これはアパレル業界全般に影響しており、「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングも10月は既存店の客数が前年同月比で93.1%となっています。
また、アダストリアは10月から20%ポイント還元キャンペーンを実施していますが、2024年は10月30日からの実施でした。2023年は25日からだったので、2024年は同月内のキャンペーン期間が少なかったことも集客に影響しています。
従って11月の集客は回復しています。全店の客数は前年同月比で108.5%。1割近く増加しました。単価が上がったこともあり、売上高は同111.9%と好調です。
一方、12月はやや苦戦気味。全店の客数は101.6%と前年を上回ったものの、新規に出店した店舗を含まない既存店の客数は98.0%でした。
ファーストリテイリングは111.0%。1割以上もの増加です。
2024年12月は北日本の日本海側が寒気の影響を強く受け、太平洋側は日照時間が多く、降水量も少ないという両極端の天候だったという特徴があります。
全国800店舗以上を展開する「ユニクロ」は全国に手厚い店舗網を築いていますが、「グローバルワーク」は11月末時点の店舗数が218店舗であり、関東圏や愛知県、大阪府、福岡県など大都市圏に出店場所が集中しています。
店舗ネットワークの違いが集客に影響した可能性もあるでしょう。
オフシーンにラインナップを広げ銀座に旗艦店もオープン
足元では、主力ブランドである「グローバルワーク」の出店攻勢を強めています。2025年春に銀座の旗艦店をオープン予定。990平方メートルを超える路面型の店舗です。同ブランドはイオンモールやららぽーとなどのショッピングモールを中心に出店してきました。手薄だった一等地で勝負を仕掛けるのです。
銀座への出店といえば、2012年の「ユニクロ」の旗艦店出店を彷彿させる動き。このとき、柳井正代表取締役会長兼社長は「ユニクロが世界一のファッション·ブランドである、ということを日本から世界に向けて発信していきたい」と語り、「ユニクロ」というブランドが世界的なものへと成長するフェーズに入ったことを象徴する出来事でした。
ファーストリテイリングは銀座店を出店した翌期の2013年8月期に売上高が1兆円を突破。業績面でも新展開を迎えていました。
「グローバルワーク」も、2030年2月期までに売上高1000億円を達成する計画を立てています。2024年2月期と比較しておよそ2倍に引き上げるもの。フィリピンやタイなど海外の出店にも意欲を見せており、すでに台湾では成功を収めています。
このブランドはオンシーンのおでかけ需要に強みを持っており、デザイン性やトレンドを取り入れたファッションアイテムが特徴。2023年には「GLOBAL WORK Smile Seed Store」という新業態を開発。インナーやルームウェアなどの商品を拡充し、日常のオフシーンへとラインナップを広げています。
この領域は「ユニクロ」と「無印良品」が得意とし、「しまむら」も力をつけてきたレッドオーシャン。「グローバルワーク」はシェアの奪い合いに参戦したことになります。
文/不破聡