近年にない大流行となっているインフルエンザ。昨年12月23日から29日の1医療機関当たりの患者数が64.39人と、1999年に統計を始めてから最多となったというニュースは、今回のインフルエンザがどれだけ流行しているのかをリアルに感じさせる話題だった。
インフルエンザはどのようにしてうつる?
インフルエンザウイルスはすぐ側にいると思っていい状況だ。罹らないようにするために、そしてうつさないために何をすべきか、呼吸器内科医で藤崎メディカルクリニック副院長の佐藤留美先生に教えてもらおう。
(1)くしゃみや咳による飛沫感染
インフルエンザは飛沫感染と接触感染で感染するという。
「飛沫感染とは、くしゃみや咳で舞ったしぶきを吸い込むことで感染することです。くしゃみや咳は、遠くまで飛ぶ力を持っていて、2メートルくらいは届きます」
お互いマスクもない状態で、目の前でくしゃみや咳を浴びたら、感染する危険性はかなり高いといっていいだろう。
(2)ドアノブなどを介する接触感染
では、接触感染とはどういうものだろうか。
「感染した人が自身の目や口、鼻などを触った手で、ドアノブなどに触れます。そこを感染していない人が触れて、目や鼻、口といった粘膜に触れた時に体内にウイルスが入るという感染経路です」
マスク、手洗いうがい以外には?インフルエンザの感染を防ぐ方法
飛沫感染や接触感染を防ぐためにも、そして広げないためにも、マスクやマメな手洗いうがいは必須な感染対策だが、ほかにも意識して行うといいことがあるという。
「感染した人は、共有部分を触った際にはアルコール消毒をこまめに行うよう意識し、自分が使ったタオルなども他人に共有させないようにしましょう。何よりインフルエンザに罹ったと思った時には、速やかに休むこと。症状が強く出ている間は特に感染力が強い状態です。自分の体調を早く改善させるためにも休息は必要ですし、周りにうつさないためにも発症して5日間は不必要な外出は避けましょう」
体調を崩している人が身近にいる場合は、換気と湿度の調整も意識しよう。
「インフルエンザウイルスは、低温と乾燥に強いウイルスです。湿度を保つために加湿器などは積極的に利用しましょう。そして、ウイルスを物理的に外に押し出すようにこまめに換気をして室内の空気を入れ替えるといいですね」
ウイルスを肉眼で見ることはできない。多くの人が使う場所はこまめに掃除を行うべきだが、そもそもウイルスはアルコール消毒をしなければどれくらい存在するのだろうか。
「インフルエンザウイルスに関しては、どれくらい付着しているかは不明です。しかし新型コロナウイルスの場合、付着する物によって異なりますが、長い時は1週間ほどいたという報告がされています。もちろん付着量の違いはあるため、多ければ多いほど感染力も強くなり、滞在時間も長くなるでしょう。大げさな言い方にはなりますが、1週間や2週間程度は存在している可能性があるかもしれません。そのため、アルコールでの拭き掃除などは定期的に行うといいですね」
体調が悪くなると、すぐに医療機関を受診したくなるが、そこにうっかり感染を広げてしまう落とし穴もあるという。
「実はインフルエンザの抗原検査は、熱が出て12時間ほど経過しないと陽性反応が出ないことがあります。体内でインフルエンザウイルスの増殖が少ない時期に検査をしても陰性反応が出てしまい、“インフルエンザじゃなかった”と油断してしまう人がいます。症状が出てすぐに受診した場合は、“インフルエンザではない”と言われても気は抜かないでくださいね」
家族や職場の人に広めないためにも、陰性反応だとしても油断は禁物。体調が悪くなりすぐに受診してしまった場合は、念のためもう一度検査を行うことを検討してもよさそうだ。
佐藤留美医師プロフィール
2002年久留米大学医学部卒業後、久留米大学病院で研修医として勤務。現在は同大学の関連病院で呼吸器科・感染症科・アレルギー科として勤務する傍ら、2023年10月より藤崎メディカルクリニック 副院長に就任。医学博士、日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、日本アレルギー学会アレルギー専門医等を取得。
取材・文/田村菜津季