1月17日の厚生労働省の発表によると、今月6日から12日までの1週間に報告された全国のインフルエンザの患者数は、17万2417人、1医療機関あたりの患者数は、35.02人だったという。
4週連続で「警報レベル」の30人を上回る状況で、まだまだ感染対策に気が抜けない。ここまで流行しているインフルエンザだが、特徴はどういうものなのだろうか。呼吸器内科医で、感染症やアレルギー疾患の診療経験が豊富な、藤崎メディカルクリニック副院長の佐藤留美先生に答えてもらった。
現在流行しているのはインフルエンザA型、その特徴は?
インフルエンザといえばA型とB型とC型があり、大きな流行の原因となっているのはA型とB型。そして、現在流行しているインフルエンザはA型だ。インフルエンザA型というと熱が出るイメージがあるが、今年の症状に特徴はあるのだろうか。
■今年の傾向は吐き気や下痢のような胃腸障害
「インフルエンザA型に罹ると、38度以上の高熱が急激に出がちです。そして咳や鼻水、全身の倦怠感、頭痛、筋肉痛や関節痛といった症状が伴います。このような症状は例年ほぼ変わりません。しかし今年の傾向として、例年の症状にプラスして、吐き気や下痢、胃もたれ感などの胃腸の不調を訴えられる方を例年以上に見かけます」
■重症化するケースも
更に佐藤医師が例年以上だと感じるのが、重症化傾向にある人の存在だ。
「私が診察している中での実感ではありますが、肺炎の合併症を起こしている人も例年より多い印象です。新型コロナウイルスの方が合併症として肺炎を起こす確率がインフルエンザより高いとされ、インフルエンザと肺炎の合併症で受診される方はこれまで少ない印象でした」
インフルエンザの重症化予防のために多くの人が10月上旬から12月にかけてワクチンを接種するが、ワクチンを打っていても、インフルエンザに感染する場合がある。
「基本的にはワクチンを接種していてインフルエンザを発症した場合、熱が出ても、 38度いくかいかないかくらいのイメージです。もし、ワクチンを打っていなければ、38度以上の熱が出て、肺炎などの合併症を引き起こすリスクが高いと思われます。今年のインフルエンザは例年より肺炎の合併症が多く怖いな、と感じています」
今、流行に備えてできることは?
インフルエンザの流行はまだまだ続きそうだ。体調が悪いと感じたら、医療機関を受診すべきだが、時間帯や体調によっては様子見をしようと思うこともあるだろう。様子見をしようと思った時には、まず何をすべきだろうか。
「まずはとにかく休息です。無理はせず、睡眠をとり、食事をし、ストレスをためこまないようにしましょう。この初期症状の段階できちんと休むことで、悪化を防ぐことができます。そして必要に応じて市販薬も活用しましょう。総合感冒薬ではなく、熱が出ているならば解熱鎮痛剤、咳が出ているならば咳止めという形で、出ている症状に合った薬を選ぶことがおすすめです」
ドラッグストアにはたくさんの薬が並んでいる。副作用が出がちな薬や、基礎疾患がある人にとっては飲んでいる薬との相性が悪いケースもあるため、薬剤師に相談しつつ薬を選ぼう。
佐藤留美医師プロフィール
2002年久留米大学医学部卒業後、久留米大学病院で研修医として勤務。現在は同大学の関連病院で呼吸器科・感染症科・アレルギー科として勤務する傍ら、2023年10月より藤崎メディカルクリニック 副院長に就任。医学博士、日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、日本アレルギー学会アレルギー専門医等を取得。
取材・文/田村菜津季