
人間関係を良好に保つためにもお互いに「敬う」気持ちを持つことが大切ですが、そもそも「敬う」とはどのような意味なのか、具体的に何をすれば良いのかわからないという方も多いのではないでしょうか。 「敬う」の意味や尊重・尊敬の違い、実際の行動についてご紹介します。
目次
「敬う」の意味とは?
「敬う(うやまう)」とは、相手を尊んで礼を尽くすことや、尊敬することです。対象を自分よりも高位のもの、あるいは上位のものとして捉え、礼を尽くす際に使われます。神や仏などの存在だけでなく、老人や先生、親のように身近な相手も敬う対象となることがあります。
- 先生を本当に敬っているなら、そのような言葉遣いにはならないはずだ。
- お互いに敬う気持ちを持つことで、人間関係は円滑になる。
参考:デジタル大辞泉
■「尊ぶ」との違い
「尊ぶ(とうとぶ、たっとぶ)」とは、尊いものとして崇める(あがめる)ことや、価値あるものとして重んじることを意味する言葉です。「敬う」と類似した意味を持つ言葉ですが、「尊ぶ」は対象の価値を認めて大切にする意味があり、神仏や祖先だけでなく、自由意思や拙速のように抽象的なものに関しても広く用いられます。
- 人命を尊ぶ気持ちがあれば、すべての人にやさしくなれるのではないだろうか。
- わたしたちは個人の自由意思を尊びます。
参考:デジタル大辞泉
■「崇める」との違い
「崇める」とは、極めて尊いものとして敬うこと、崇敬することを意味する言葉です。神や祖先のように、絶対的な存在を拝むようにすることを指します。文章によっては、「尊ぶ」と置き換えられます。
- 彼女はあるアイドルをまるで神様のように崇めている。
- あの家の子どもたちは、幼いときから祖先を崇める気持ちを持つように躾けられている。
参考:デジタル大辞泉
「敬う」は具体的には何をすること?
「敬う」とは相手を尊敬し、礼を尽くすことです。尊敬の気持ちを持って行動すれば「敬っている」ことを示せますが、具体的に何をすれば良いのかわからないと感じる方もいるかもしれません。
例えば、次のような思いやりのある行動をすれば、相手に対する敬う気持ちを表現できます。
- ドアを開ける
- 話を丁寧に聞く
また、次のような行動でも、相手に対する敬う気持ちを表現できます。
- 相手に会うときは身だしなみを整える
- 丁寧な言葉を使う
■天を敬う
座右の銘としても選ばれることが多い言葉の一つに「敬天愛人(けいてんあいじん)」があります。敬天愛人とは、天を敬い、人を愛することです。
そもそも天とは、大空や自然界、信仰の対象としての天、神様などのさまざまな意味があります。敬天愛人の「天」にもさまざまな解釈がありますが、天地自然をつかさどる道理と考えることもあるようです。
敬天愛人は、明治維新の中心人物としても知られる西郷隆盛が揮毫した言葉としても知られています。時代を越えて多くの人に敬愛されてきた西郷隆盛は、道理を敬い、人々や人々で作られる社会を愛することを信念としていたのかもしれません。
■人を敬う
「敬う」は人に対しても使われる言葉です。高齢者や先生、目上の親族など、身近な存在ではありつつも、敬意を持って接する相手は数多くいるのではないでしょうか。
また、特定の人に限定せず、すべての人を敬う気持ちも大切です。お互いが敬う気持ちを持って接すれば、言葉遣いや態度が丁寧になり、些細なことでトラブルが生じにくくなるかもしれません。
■神仏を敬う
神仏などの人を超えた存在も、敬う対象となることがあります。神仏を信じるかどうかに関わらず、人の理解を超えているものに対して敬う気持ちを持てば、驕り高ぶることがなくなり、一日一日を丁寧に生きられるかもしれません。
また、自分自身は神仏を敬う気持ちがなくても、他人が神仏を敬う気持ちを尊重することも大切です。他人の気持ちを理解するように努めることは、お互いに敬う気持ちを持つことにもつながります。
ビジネスでも活かしたい相互尊重(アサーティブネス)
「相互尊重(アサーティブネス)」とは、お互いが相手を尊重することです。どちらか一方が相手を尊重するのではなく、お互いがお互いを尊重し、相手に配慮した言動を心がけます。
相互尊重を実現するには、まずは自分自身のスキルに自信を持つことが必要です。そのうえで、相手に誠実かつ率直・対等に向き合うことが求められます。
■尊敬と尊重の意味の違い
「尊敬」とは、相手の人格を尊いものと認めて敬うことや、行為・業績などを優れたものと認めてその人を敬うことです。一方、「尊重」も価値あるものや尊いものとして大切に扱うことを意味します。
いずれも相手の価値を認めて敬うことは同じですが、尊敬には相手を高めるニュアンスが含まれる点が異なります。自分と同等の存在として相手を重んじ、敬うときには「尊重」、相手を高めて重んじ、敬うときには「尊敬」というように使い分けられるかもしれません。
参考:デジタル大辞泉
■自己尊重・他者尊重・相互尊重の意味の違い
自己尊重とは、自分自身を重んじ、敬うことです。あるがままの自分を受け入れ、欠点も含めて自分自身を好きになることで、自分は価値のある存在だと肯定できるようになります。
一方、「他者尊重」は他人を重んじ、敬うことを意味します。相手の気持ちを慮り、共感する姿勢を持つことで尊重すれば、相手と良好な関係を築けるようになるでしょう。
「相互尊重」はお互いがお互いを重んじ、敬うことです。どちらかが一方的に相手を敬うだけでは、相互尊重は実現しません。社内や取引先との関係において相互尊重を実現するためには、まずは自分自身が相手を敬う気持ちを持つことが大切です。
■アサーティブネスの必要性
人が多く集まる企業などの組織では、人間関係のトラブルが起こりがちです。人間関係にトラブルが生じると、コミュニケーションがとりにくくなるだけでなく、業務効率や仕事への意欲が低下することもあります。
誰にとっても居心地が良く、働きやすい環境を保つために注目されているのが「相互尊重」の考え方です。お互いを尊重することで人間関係を良好に保ち、働きやすい環境を実現できます。
■アサーティブネスコミュニケーションとは
アサーティブネスコミュニケーションとは、自分と他者を同程度に尊重しつつ、自分自身の気持ちを適切に表現することです。アサーティブネスコミュニケーションを実施することで、次のメリットを得られます。
- 人間関係の改善
- チームの強化
組織のなかではコミュニケーションは日常的に行われます。アサーティブネスコミュニケーションを実施することで人と人のつながりが強化されると、良好な関係を築きやすくなるでしょう。
また、お互いがお互いを尊重すれば、敬意を持ったコミュニケーションが日常化します。チーム内での人間関係が良好になる効果も期待できます。
■アサーティブネスコミュニケーションを高める方法
アサーティブネスコミュニケーションはトレーニングにより高めることが可能です。よく利用される方法としては、DESC法が挙げられます。DESC法は次のステップで実施します。
- 描写する(describe):解決すべき問題や相手の行動を描写する
- 表現する(express)、説明する(explain):描写した内容を主観的に表現し、他者の気持ちに共感する
- 提案する(suggest)、具体的に表現する(specify):現実的かつ具体的な解決方法を提案する
- 選択する(choose)、結論(consequence):提案を受け入れた・受け入れない場合についての行動を考慮し、判断する
敬う気持ちを表現しよう
相手を敬うことは、人間関係の基本です。まずは自分自身を愛し、他者を愛し、お互いに敬意を持って接することから始めてみましょう。
また、相手を敬う気持ちを表現することも大切です。思いやりのある行動、丁寧な言葉遣い、適切な身だしなみなどにも配慮し、お互いの敬う気持ちを表現していきましょう。
構成/林 泉