
「帰社する」を、適切な状況で使えていますか?似たような意味の言葉として「退社する」や「退勤する」がありますが、正確に使い分けられているのか気になる方もいるかもしれません。「帰社する」の意味や使い方、また、テレワークの普及とともに注目されるようになった「帰社日」についてもご紹介します。
目次
ビジネスシーンで「帰社」という言葉をよく使いますが、どんな時に使う表現なのかきちんと理解していますか。正しい意味を覚えて、適切なシーンで使いましょう。
「帰社する」とは?意味や使い方を例文でご紹介
■「帰社」の意味
「帰社(きしゃ)する」とは、出先から自分の会社に帰ることです。たとえば、次のように使います。
- 営業担当の社員が全員帰社したら会議を始めよう。
- 佐藤は15時に帰社する予定です。
参考:デジタル大辞泉
■「退社する」との違い
混同されがちな言葉として「退社する」が挙げられます。「退社」とは、その日の勤めを終えて会社から退出することです。
会社への移動を示す「帰社」とは異なり、「退社」は会社からの移動を示します。なお、「退社」の反対語は「出社」で、自宅などから会社に行くことを意味します。
- 佐藤はすでに退社いたしました。明日、再度お電話をいただけますか。
- 17時に退社する予定だったが、仕事が長引き18時を超えてしまった。
また、「退社」は勤務している会社を辞めることも意味します。この場合の「退社」の反対語は、「入社」です。
- 一身上の都合で退社した。
- 定年退社した後も、嘱託として働く予定だ。
■「退勤する」との違い
「退勤」とは、勤務が終わって、勤め先から退出することです。「退社」とも言い換えられますが、「退社」には会社からの退出と退職の2つの意味があるため、誤解を生じないためにも退出を伝えるときには「退勤」のほうがよいかもしれません。
なお、「退勤」の反対語は「出勤」です。
- 佐藤は退勤しました。明日、こちらからかけ直させます。
- 退勤した後の時間を使って、華道を習い始めることにした。
■「退職する」との違い
「退職」とは、勤めている職を辞めることや、現職を退くことです。「退社」とも言い換えられますが、「退社」には退勤の意味もあるため、会社を辞めるときには「退職」を使うほうが誤解は生じにくいでしょう。
- 定年退職した後は、悠々自適な毎日を送っている。
- 退職まであと1年だ。
■「直帰する」との違い
「直帰(ちょっき)」とは、出先での勤務が終わった後に職場に戻らず、そのまま家に帰ることです。出先から職場に戻る「帰社」とは、対になる言葉ともいえるでしょう。
- 今日は直帰してよいと上司からいわれているため、早く帰宅できそうだ。
- 営業先が自宅に近いため直帰したいが、会社で一仕事残っているため帰社しなくてはいけない。
帰社日とは?
帰社日とは、勤務先の職場に行く日のことです。本来、帰社は「出先から会社に戻ること」を意味しますが、帰社日の帰社は「会社に行くこと」を意味します。
たとえば、建設現場で働く方なら、朝は直接現場に出勤し、現場から自宅に帰ることが多いかもしれません。セミナー講師、家電や住宅の修理スタッフなども、勤務先に行かずに直接現場や依頼先に行く機会が多いでしょう。
また、テレワークの普及により、自宅やコワーキングスペースで働く方も増えてきました。そのため、勤務先に行く機会がほとんどなく、上司や同僚との接点が減っている方も珍しくありません。
このように「会社に行く」ことが日常的ではない働き方をしている方には、帰社日が設けられていることがあります。
帰社日が存在することで現場や自宅などで働く方も定期的に出社し、職場の人々とコミュニケーションをとったり、会社でしかできない業務を実施したりできるようになります。
■帰社日に実施すること
帰社日に実施することは、会社によって異なります。たとえば、以下を実施することがあります。
- 会議
- 勉強会、セミナー
- 雑談
- 懇親会
帰社日は、オンラインで実施することもあります。たとえば、全国に社員がいる企業の場合、社員の所在地によっては出社が難しいかもしれません。
会議アプリやテレビ電話などを活用してオンラインで帰社日を過ごし、普段会うことがない同僚との交流を深めます。
■帰社日を設定する目的
すべての企業に、帰社日が設定されているわけではありません。現場や自宅で働く社員が多い企業であっても、帰社日を設定していないことがあります。
実際に帰社日があると通常業務に従事する時間が減り、企業としての生産性が低下するのではという考え方もあります。
しかし、次の目的で帰社日を設定する企業も少なくありません。
- 帰属意識の向上
- コミュニケーションの活発化
- 課題共有・解決
- 業務の方向性の明確化
- 担当業務以外の業務についての理解を深める
いずれも企業の存続と発展、社員の満足度向上などにプラスになる目的です。それぞれの目的について、詳しくご紹介します。
帰属意識の向上
社員は、一人ひとりが会社を代表する存在です。しかし、会社に行く機会がほとんどない場合、会社に所属しているという意識が希薄になるかもしれません。定期的に出社することで、帰属意識の向上を期待できます。
コミュニケーションの活発化
チャットや電話などでもコミュニケーションをとることはできますが、やはり実際に会って話すのと比べると希薄になりがちです。コミュニケーションを活発にするためにも、定期的に帰社日を設けることがあります。
課題共有・解決
一人で働いていると、今、会社で何が問題になっているのか気付きにくくなってしまいます。また、課題が発生しても、自分一人で解決しようと考えるかもしれません。帰社日を設けることで意見を交換する機会が増え、課題の共有や解決を図れることがあります。
業務の方向性の明確化
同じ業務に従事する場合でも、目的意識を持つのと持たないのではモチベーションや意思決定に大きな差が生じます。業務の方向性を明確にし、すべての社員に周知するためにも、帰社日は有意義です。
担当業務以外の業務についての理解を深める
他の社員の話を聞くことで、担当業務以外の業務についての理解を深められます。自分の業務がどのような意味を持つのか客観視でき、モチベーションを持って取り組めるようになります。
正しい言葉で表現しよう
会社を起点として出発するときは「退社」や「退勤」、会社を終点とするときは「帰社」や「出勤」などの言葉が適切です。
正しい言葉を選ぶことで、自分や同僚の状況を正確に表現できます。相手に誤解を与えないためにも、正しい言葉を選びましょう。
構成/林 泉