インフルエンザが猛威を振るい、全国各地で警報レベルの状態が続いている。インフルエンザの大流行に目がいきがちで、存在を忘れそうになるが、現在進行形で新型コロナウイルスに感染している人ももちろん存在する。
いったいコロナとインフルエンザに同時感染したらどうなるのか――。その疑問に呼吸器内科医として、感染症やアレルギー疾患の診療経験が豊富な、藤崎メディカルクリニック副院長の佐藤留美先生に答えてもらった。
同時感染は稀、しかし同時に罹ると重症化傾向に
1月中旬の現在の時点で、発熱、喉の痛み、咳のような不調を感じたら、多くの人が「インフルエンザかもしれない……」と考えるのではないだろうか。しかし、現在流行している感染症はインフルエンザだけではない。
「患者さんが多いのはインフルエンザです。しかしそれ以外にも新型コロナウイルスに感染している人、7~8月から流行をはじめたマイコプラズマ肺炎に感染している人もいます。もちろん、普通のいわゆる“風邪”に罹っている人もいます」
■同時感染の確率は0.2~3%
いろいろな感染症が流行しているということは、例えば新型コロナウイルスとインフルエンザに同時期に感染し、発症する可能性もあり得るのだろうか。
「かなり稀ではありますが、あり得ます。同時感染とは同じ時期に感染し、発症している状態です。新型コロナウイルスとインフルエンザに同時に感染する確率は世界的にみても0.2~3%ほどといわれていますね」
同時感染かどうかを判断するには、通常の検査キットでわかるという。
「現在、インフルエンザや新型コロナウイルスの検査方法としては、抗原定性キットというものがあり、綿棒で鼻の奥の粘膜部分を拭い、判断することができます。インフルエンザと新型コロナウイルスをそれぞれ単体で検査するものもありますが、同時に検査できるキットも全国の医療機関に普及しています」
インフルエンザと新型コロナウイルスの症状はとても似ており、症状だけではどちらに感染したかの判断は難しいという。この同時の検査キットを使用することで「どちらに感染しているのか」が1回でわかるわけだ。そしてもちろん、同時感染をしている場合は両方ともが陽性反応を示すことになる。
■同時感染した場合の治療法は?
「同時感染をすると、両方の症状が合わさり、単独よりも重症化しやすい傾向にあることがわかっています。とはいえ、治療法はそれぞれに感染した場合と大きな違いはありません。熱が高い方には解熱鎮痛剤を、咳がひどい人には咳止めをという形で、対症療法を行います。そして、必要に応じて、それぞれの疾患に対する抗ウイルス薬を処方するという形です。特に基礎疾患がある方やご高齢の方などは重症化リスクがそもそも高い。このような方にはインフルエンザと新型コロナウイルスの抗ウイルス薬を併用し、急ぎウイルスの増殖を抑制して、少しでも症状を抑えるといったケースも出てきます」
1年で数多くの患者と関わる佐藤医師でも、同時感染を診察するのはだいたい年に2~3人程度だという。怖がりすぎる必要はなさそうだが、便利なキットも普及しているため、体調を崩した際には、同時感染をしていないかどうかを調べてもらおう。そして、症状にあった適切な薬を貰うようにすることが、早期改善そして重症化を防ぐために重要だ。
佐藤留美医師プロフィール
2002年久留米大学医学部卒業後、久留米大学病院で研修医として勤務。現在は同大学の関連病院で呼吸器科・感染症科・アレルギー科として勤務する傍ら、2023年10月より藤崎メディカルクリニック 副院長に就任。医学博士、日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本化学療法学会抗菌化学療法認定医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医、日本アレルギー学会アレルギー専門医等を取得。
取材・文/田村菜津季