「あの子はTっぽい」という悪口があるのはご存知だろうか。
いま、10〜20代を中心にMBTI診断と呼ばれる性格診断がブームになっている。
MBTI診断はENFJ、ISTPなど四文字のアルファベットで性格を表すのが特徴だ。
アルファベットには次のような意味があり、
・外向型(E)と内向型(I)
・感覚型(S)と直観型(N)
・思考型(T)と感情型(F)
・判断型(J)と知覚型(P)
この組み合わせによって16のタイプに性格を分類をするのだ。
令和版・血液型診断とも呼ばれるほどMBTI診断のブームが起こる一方で、「MBTI診断ハラスメント」が起こっている。
※「MBTI」は日本MBTI協会に商標登録されている言葉であり、多くの人がウェブ上で無料診断をしている16タイプ性格診断とは区別されるものである。しかしなながら、本記事では便宜上、世間の表現に合わせて「MBTI」と呼称を使用するものである
MBTI診断は2023年ごろからブームに
MBTI診断は2023年ごろに韓国でアイドルが紹介したことで注目が集まりブームに火がついた。そのブームは韓国だけにとどまらず、日本にも押し寄せ今に至る。
過去に行われた調査では、Z世代の女性の約7割がMBTIを知っていると回答をしている。
出典:株式会社MERY『MERY Z世代研究所 診断コンテンツに関する調査』
周りを見回してみると、MBTIは日常的な会話のネタに使われるだけでなく、友人関係や恋愛関係においてもひとつの指標として浸透しているように感じられる。
90%以上が当たっていると感じている
ここまで広まった大きな理由のひとつが、信頼感だ。
MBTI診断は、ユングの心理学理論に基づいた性格診断という背景がある。
科学的根拠はない(あるいは乏しい)と言われている一方で、ユーザーの多くが当たっていると感じているのもまた事実だ。
出典:株式会社ウェブギフトによるMBTI診断に関するアンケート調査より
16タイプに分類されるMBTIは、相性診断の組み合わせは16×16=256種類となる。身近な人たちとの相性を占った際に、既存の性格診断より細かく分析されていると感じるのは当然だ(例えば、血液型による相性占いは4×4=16通りしかない)。
「Tっぽい」などMBTIハラスメント
MBTIがブームになるにつれて、16種類の性格に優劣をつけるコンテンツも人気になっている。
科学的根拠がないにも関わらず、InstagramやTikTokでは「恋愛上手なMBTIランキング」「収入が高い職業につきやすいMBTIランキング」といったコンテンツが溢れている。中には、特定の性格を挙げて「⚫︎⚫︎はクズ男」のような目を覆いたくなるような直接的に批判をする投稿もある。
例えば、筆者のENFJは「熱意がある」と言われる一方で「重すぎる」などと言われている。
そうした中、やはり特定の性格や特性がとりわけネガティブに取り上げられることが多い。
冒頭でも紹介した「Tっぽい」もそのひとつである。
Tとは、思考型(T)/感情型(F)の思考型(T)を指している。
思考型(T)は論理的に物事を考えるのが得意、感情型(F)は感情的に物事を捉えて共感するのが得意と言われている。
そのため、共感をしてくれなかったり(してくれなそうだったり)、正論でばっかり言う人たちのことを「Tっぽい」と揶揄するのである。
MBTIでESTPとかINTJとか、Tが含まれているかどうかに関係なく、理屈っぽい人=Tっぽいなのである。
一昔前、適当な人を「B型っぽい」と揶揄したのと同じだ。
TっぽいはMBTIブームが生んだ新たな悪口と言えるだろう。
このままでは血液型占いの二の舞に?
思い起こされるのは血液型占いによるハラスメント(=ブラハラ)だ。
00年代前半まで、テレビで血液型による性格の違いを面白おかしく扱った番組が制作された。視聴者の人気もあったことから企画はエスカレート。特定の血液型がバカにれ、人格否定にまで及んだ事例もあったという。
そのため、BPOは2004年「血液型によって人間の性格が規定されるという見方を助長することのないよう要望する」との声明まで発表している。
血液型による性格の違いも、MBTIと同じく科学的根拠はないと言われている。それでも、ブームが加熱した過去がある。
どうかMBTIブームには同じ轍を踏まないでもらいたいものである。
取材・文/峯亮佑