「味」の特徴…苦味・渋味が少なく、後味はすっきり
味香り戦略研究所が味覚センサを用いて分析を行い、他の茶飲料と比較したのが以下のグラフ(データは複数の商品の平均値)。「ルイボスティーはグラフの波形が小さく、他の茶飲料に比べておおむね控えめな味であることがわかります」(味香り戦略研究所)
比較するとこの中では紅茶とバランスが近いが、ルイボスティーの方がうま味・渋味いずれの後味も控えめで、苦味も弱い。そのため、飲んだ後の後残り感が少なく、すっきり感じられることがわかった。
だが、ミネラルウォーター(軟水)との比較で意外なことがわかった。ルイボスティーは、お茶のうま味や苦味がありつつ、実は水に近い味バランスだったのだ(上のグラフ参照)。そのため飲み飽きることが少なく、水の代わりとして日常的な水分補給に向いているとのこと。
「香り」の特徴…ウッディな香りとスパイシーさが突出、華やかさや甘さも
味わいとしては水に近いすっきり感だが、お茶にとって重要な香りはどうなのか。香気成分分析では、ルイボスティーの特徴的な香りの要素がわかった(下のグラフ参照)。
ルイボスティーの香りは他のお茶の香りと比較して、ローストしたアーモンドやくるみ様のウッディな香り(グラフの茶色い部分)が非常に強く、また他のお茶にはほとんどないスパイシーさ(紫色の部分)があることがわかる。さらに、フルーティ、フローラルといった華やかさや甘さを感じさせる要素もある複雑な構成でありことがわかった。
「それぞれの要素は他の茶飲料にも含まれますが、ウッディ・スパイシーな香りと、フルーティ・フローラルな香りが両立する構成は、ルイボスティー独特のもの。他の茶飲料にないルイボスティーだけの魅力であり、好きになったら手放せない、クセになる香りと言えるでしょう」(味香り戦略研究所)
これらの分析結果をまとめると、ルイボスティーの味わいは以下の通り。
*味…苦味・渋味が少なく、控えめな味で後味がすっきりしているのでゴクゴク飲める止渇性飲料
*香り…独特の香りによって嗜好性飲料への適性も併せ持つ
この特異な味わいがルイボスティーの魅力だが、ではこの味わいに合うのはどんな食品なのか。
ルイボスティーとペアリングするなら?
「ルイボスティーの『甘くやわらかな香りと穏やかな味わい』は主張が強すぎないため、シーンを問わず飲め、またフルーティ・フローラルな香りは、丸みのある甘さを感じさせ、リラックスしたいシーンに適しています。カフェインを含まないため、寝る前の一杯として最良のお茶と言えます」(味香り戦略研究所)
特におすすめなのが、食事のお供「食中茶」として飲むこと。苦味・渋味が非常に少なく、後味もクリアで、食事の味わいを邪魔せず楽しめるとのこと。
玄米おにぎりや玉子焼きなど、やさしく繊細な味わいの和食系と合わせても主張しすぎない
またフードペアリングでは、香りの要素が近いものを組み合わせる方法があるが、柔らかい甘さの香りを持つルイボスティーには、バニラアイスや、シフォンケーキなどの焼き菓子が合うという。
焼き菓子とペアリングする場合、香りをより楽しめるホットティーだとベター
ルイボスティーの大きな特徴であるウッディな香りの要素に着目すると、かぼちゃの煮物や、熟成感のあるチーズなども相性が良いと予想されるそうだ。
ルイボスティーのスモーキーな香りが、かぼちゃの煮物やチーズの味わいをより引き立てる
一風堂が水代わりにルイボスティーを提供している理由
「特に塩気のある食べ物との組み合わせでは、ルイボスティーのスッキリした後味が、より一層味わいを引き立たせることが期待できます」(味香り戦略研究所)。この効果に着目したのが、福岡県福岡市発祥の豚骨ラーメン店チェーン「博多一風堂」(以下「一風堂」)。同店を運営している「株式会社力の源カンパニー」によると、一風堂の一号店がオープンしたのは1985年。ルイボスティーが日本にまだあまり浸透していなかった2000年頃から、お冷(水)の代わりにルイボスティーを無料で提供しているという。
一風堂で無料提供しているルイボスティー(希望すれば水も提供可能)
導入の理由は、一風堂創業者の河原成美(かわはらしげみ)氏が、ルイボスティーのすっきりとした味わいがとんこつラーメンに合うことを発見したこと。近年では「一風堂といえばルイボスティー」と、すっかりファンの間で定着。「ラーメンに合うから何杯でも飲んでしまう」という声が多く、中にはピッチャーを飲み干しておかわりするファンもいるという。一風堂1店舗あたりで提供しているルイボスティーの量は、1日あたり約90L。ルイボスティー提供店舗約100店舗では、年間におおよそ324万Lにもなるそうだ。
一般的にハーブティーは男性にはあまり浸透しておらず、日常的に親しんでいる人は少ない。でも「ルイボスティー」という名前は知らなくても、「一風堂で出てくるあのお茶」と言えば一発でわかる男性も多いだろう。また、健康茶としてのイメージが浸透してきたため、とんこつラーメンを食べるという罪悪感がルイボスティーで薄れるという面もあるのかもしれない。日本でのルイボスティー人気の高まりと広がりには、その味わいに早くから着目した一風堂も一役かっているといえそうだ。
「自宅でも飲みたい」という声にこたえて一風堂では一部店舗のレジ横やオンラインストアでルイボスティーの茶葉を販売している
取材・文/桑原恵美子
取材協力/味香り戦略研究所、力の源ホールディングス