マラソンで好記録を出すために、食事やトレーニングに気を配るのは当然。しかし、空気の質も重要ってご存知でしたか? 最新の研究によると、大気汚染がマラソン選手のタイムに悪影響を与えることがわかったそうです。
PM2.5が多いとマラソン選手の記録が低下する
マラソン選手は良い記録を出すために、レース前やレース中に摂取する食べ物や飲み物に細心の注意を払う。しかし、新たな研究によると、レース時の大気汚染のレベルも、走行タイムを左右する因子の一つであることが明らかになった。大気汚染のレベルが高いほど、選手の走行タイムが悪化する傾向があるという。
この研究は、米ハーバード大学博士課程のElvira Fleury氏らによるもので、詳細は「Sports Medicine」に12月18日掲載された。論文の筆頭著者であるFleury氏は、「ハイレベルのマラソン選手は記録向上のために、トレーニング、栄養、シューズやウエア、競技コース、さらに天候まで考慮して大会に臨んでいる。しかしわれわれの研究から、パフォーマンスの最大化には、大気汚染の影響をも考慮すべきであることが示された」と述べている。
Fleury氏らは、米国で定期的に行われている9件の大規模なマラソン大会の2003~2019年のデータ(計140大会分)を利用して、選手の完走タイムと当日の大気汚染レベル(PM2.5濃度)との関連を検討した。解析対象サンプル数は、男性が150万6,137件、女性は105万8,674件だった。
解析の結果、大会当日のPM2.5濃度が1μg/m3高いごとに、男性選手の平均完走時間は32秒(95%信頼限界30~33)、女性選手は25秒(同23~27)長いことが分かった。また、完走タイムの中央値で全体を二分して比較すると、記録が上位の選手の方が、大気汚染による記録低下の影響がより強く認められた。論文の上席著者である米ブラウン大学のJoseph Braun氏は、大学発のリリースの中で、「この結果は、大気汚染が高齢者や影響を受けやすい人々だけに健康リスクをもたらすのではなく、トレーニングを積み最も健康的と目される人々にさえ悪影響を及ぼす可能性のあることを意味している」と述べている。
研究グループによると、これまでの報告で大気汚染が心臓病、呼吸器疾患、肺がんのリスクだけでなく、全死亡リスクとも関連していることが示されているという。また今回の研究で明らかにされた、マラソン選手への大気汚染の影響のメカニズムについては、血圧の上昇、血管の収縮、肺機能の低下、および短期的な認知機能への影響を介してパフォーマンスを低下させる可能性があると推測している。
Braun氏は、「マラソンを完走できるような人は、一般的に非常に健康で高い心肺機能を有している。われわれの解析結果は、そのような極めて健康な人々に対しても、現在の環境基準を超えないレベルの大気汚染が悪影響を及ぼすことを明らかにした」と本研究の意義を強調。また著者らは、「今回のデータは、自動車や発電所のエネルギー源を化石燃料から環境負荷の少ない別の方法へ転換することで、大気汚染物質の排出を削減するという取り組みを支持するものである」と付け加えている。(HealthDay News 2024年12月26日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://link.springer.com/article/10.1007/s40279-024-02160-8
Press Release
https://www.brown.edu/news/2024-12-18/marathon-air-pollution
構成/DIME編集部
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