米国の研究で、都市部の木の減少が子どもの学力低下に繋がる可能性が示されました。害虫によって街路樹が枯れた地域では、子どものテストの点数が低下したというのです。緑豊かな環境は、子どもの脳の発達に良い影響を与えるのかもしれません。
木々と子どものテストの点数との関連とは
並木道や緑豊かな公園は、都会の子どもの脳の働きを高めるようだ。米ユタ大学経済学教授のAlberto Garcia氏と同大学環境・経済・持続可能性学部のMichelle Lee氏は、米シカゴのトネリコの木の半数が害虫によって消失してから、同地域に住む3年生から8年生(日本での小学3年生から中学2年生に相当)の子どものテストの点数が低下したとする研究結果を明らかにした。詳細は、「Global Environmental Change」12月号に掲載された。
Garcia氏は、「トネリコの木を食害する虫が侵入・異常発生した地域では、似たような環境でも害虫による被害はない地域と比べて、子どものテストの点数が低下していたことが明らかになった」と話している。
Garcia氏らは今回の研究の背景について、先行研究では、土地の面積に対する樹木で覆われた地表面積の割合(樹冠被覆率)が高い地域に住む子どもの方が、テストの成績が良いという結果が示されていると説明する。この結果に関するさらなるエビデンスを収集する機会は、不幸にも、米国中西部の街路や庭に植えられていた何百万本ものトネリコの木を枯らしてしまったアオナガタマムシによってもたらされた。この害虫は、2010年から2020年までの間に、シカゴの街路樹の18%を占めていたトネリコの木の半数を枯らし、残る半数も枯れかけているという。
Garcia氏らは今回の研究で、2003~2012年に実施された3~8年生の子どもの標準テストの点数を追跡調査し、トネリコの木の消失が学業成績に影響するのかどうかを調べた。Garcia氏は、「アオナガタマムシが最初にこの地域に入ってきたときと同じ時期に、イリノイ州でこの標準テストが実施されていたのは、ある意味ラッキーだった。イリノイ州の全ての学校が同じテストを実施していたため、学校間で一貫性のあるデータを全期間を通じて得ることができた」としている。
調査の結果、アオナガタマムシの被害を受けた地域では、標準テストの基準に達しているか、基準を上回っている子どもの割合が1.22%減少していた。これはわずかな減少に見えるが、シカゴの学校に通う子どもたちの数が32万人を超えることを考慮すると重大な意味を持つ。
また、Garcia氏によると、「低所得層の子どもが多い学校は樹冠被覆率が低い地域にあることが多いため、トネリコの害虫被害の影響は小さいことが分かった。しかし、害虫被害が大きかった地域に多い裕福な学校に通う低所得層の子どもは、その影響を強く受けていた」という。
Garcia氏らは、樹冠被覆率が低下すると、都市部の道路が高温になり、大気汚染につながるほか、草木によって得られる心理面へのメリットを子どもが得られなくなる可能性があると推測している。Garcia氏は、「その要因の一つとして、同じ学校に通う高所得層の子どもには、帰宅後に酷暑や大気汚染による頭痛から回復するためのリソースがあるが、低所得層の子どもにはそのようなリソースがないことが考えられる」と言う。
Garcia氏は、「都市部の樹木の維持や回復に向けた取り組みは、特に貧困地域の子どもの教育を向上させる上で重要な役割を果たす可能性がある」と結論付けている。また、「快適な環境へのアクセスだけが問題なわけではない。それが存在しないことが、教育のような人生に極めて重要な部分にどのような格差を生み出すのかを理解することが大切だ」と強調している。(HealthDay News 2025年1月2日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0959378024001468?via%3Dihub
Press Release
https://attheu.utah.edu/research/loss-of-urban-trees-affects-education-outcomes/
構成/DIME編集部