女性の自己肯定感を上げて、誰からも愛される『エレガント・グローバル・アカデミー』を主宰している西村僚子さんによると、男性も女性も気くばりこそが人生を好転させるカギだと主張している。「気くばりは最高の生存戦略である」と説く西村さんに、職場ですぐに始められる気くばりのやり方を教えてもらおう。
気くばりに必要だったのは自己肯定感
気くばりの大切さは誰もが認識すること。でも、実際に気くばりしようとすると、「私なんかが余計なことをして、迷惑なのでは?」とか「断られたらどうしよう」と思い悩むのが普通である。西村僚子さんも気くばりの大切さを説く一方で「実は気くばりで一番大切なのは、実は自己肯定感なのです」と説く。
「人を否定しない、ジャッジしない、肯定する、まるごと受け入れる……気くばりにはこうした意識が必要なのですが、自分自身に対してできないことを、他人に対してするのは至難の業です。つまり、まず自己を肯定すること。ありのままの自分をまるごと受け入れることが出来て、初めて人のことも丸ごと受け入れ、心からの気くばりができるようになるのです」と教えてくれた。
西村さんの新刊書“「気くばり」こそ最強の生存戦略である”(SBクリエイティブ刊、定価1650円)でも、気くばりについて、「最初にアイムオーケー(私は大丈夫)のマインドになると、自然にユーアーオーケー(あなたも大丈夫)のマインドも生まれます。それが気くばりという実際の行動につながっていくということなのです」と書いている。
さらに、西村さんによると、気くばりとは自分が気くばりをしたいと思える相手に喜んでもらうため、そうすることで自分自身が満たされるためのものだとしている。つまり気くばりはかなり自分ファースト寄りの行為と捉えている。
「自分を削ってまで相手を満たそうとするのではなく、相手を満たすことで自分も満たされるというのが私の考える気くばりです。そういう意味での気くばりをして行くためにも、まず自己肯定感を上げることが必要なのです」と主張している。
具体的に西村さんが自己肯定感を上げるための手法として1)一か月間毎日私は私のことが大好きと口に出して言う、2)次の二ヶ月目には毎日自分を褒める、3)三ヶ月目は毎日他者を褒めることを心がける。と提案してくれた。声に出すことで自己肯定感をアップさせることができるという。
さらに、よくありがちな過去のミスや経験から、自己否定しそうな時、西村さんは「ネガティブな思い込みは重いゴミです。さっさと捨てましょう!セミナーなどでは、思い込みは重いゴミ、3秒過去は生ゴミです、と話すことがあります。自分でかけた呪いは自分で解くことができます。過ぎ去った過去はもう二度と戻って来ません。生ゴミを大切に抱えていても臭いだけですよね?ゴミを捨てた方がすっきりしますよ」とアドバイスしてくれた。
気くばりは「親切」ではない
自己肯定感を上げたら、実際に気くばりをしてみよう。西村さんはまず好きな人に気くばりをすることから始めようと提案している。西村さんによると、気くばりは「みんなに平等に親切にすること」ではないとはっきりと述べている。
「気くばりで人をえり好みするなんて、良くないとか、誰に対しても親切にしなければいけない、と思う人がいるかもしれません。誰に対しても親切であるのは、素晴らしいことだと思います。確かに私もそうありたいなと思いますし、実際、誰に対しても親切であるように心がけています。
しかし、『ただ単に親切であること』と、『本当に相手のために心を砕いて気くばりをすること』は違います。私が述べたい気くばりとは、単なる親切よりもずっと深い、いわば『愛の為せる技』とも呼べるものです。相手に対する愛、さらには自分に対する愛ゆえに、幸せなコミュニケーションをとり、幸せな人間関係を築いていくためのものなのです。
時間は有限です。なるべく親しくなりたい人、好きな人とだけ深く付き合うことに、時間を使いたい。私にとって気くばりとは、そのためにすることです。みんなに等しくではなく、本当に大切にしたい人に思い切り気くばりをするのです」と教えてくれた。
そうした気くばりを続けた結果、初対面が怖くなくなったり、好かれたい人に好かれたり、苦手な人が近くからいなくなりトラブルに巻き込まれなくなるほか、良いご縁やチャンスやお金ばかりに恵まれるようになると言う。気くばりがもたらす効果は大きそうだ。
西村さんは「ご縁もチャンスも、人生をより良くしてくれるものは、たいてい人が運んでくれるものです。それほど近しく付き合いたいと思えない人たちにまで向けていた意識を、本当に親しく付き合いたいと思える人たち向けることができれば、必然的に人間関係が濃く強くなり、全方位的に行くことが起こるのです。本当に大切にしたい人に思いっきり気くばりをしましょう」と提案している。
気くばりの基本を身に着けよう
気くばりの基本の第一は「相手に興味をもつこと」で、相手に興味を持つことが気くばりの出発点だと、西村さんは考えている。
相手がどんな人物で、どんなことを喜ぶのか、あるいは好まないのか、こうしたことがわからなければ的を得た気くばりができず、喜んでほしい相手に喜んでもらうことができない。気くばりをするためには、相手をよく観察する必要がある。相手に興味を持つことが気くばりの出発点である。
相手に興味をもつと言われても、何から始めればいいか困る人も多い。そんな人には相手との共通点を探すゲームが効果的だ。人は自分と共通点が多い人に対して、親近感を抱きやすい。心理学の「類似性の法則」で、共通点を探す会話で相手に興味をもとう。
会話を通じて、即興で相手との共通点を探すのが難しい場合は、事前準備ができる場面で相手のことをリサーチすることが効果的である。ビジネスパーソンにとって事前準備は仕事の基本であるが、この基本を徹底的にやることで、相手との共通点を探すことができる。
本当の気くばりでは相手に合わせない
ここで注意点だが、気をくばることと相手に合わせることは全く違うということ。相手が欲しがっている言葉であっても、自分の本心から言えないことは、言うべきではない。深い関係を築くには、相手と本心で向き合うことが一番良いからである。ありのままの本当の自分として、相手と向き合おう。自己肯定感があれば可能である。
相手に合わせようとして、心にもないことを言うのは自分が疲れてしまう。自分を偽るのは心を削る行為と同じこと。相手といる時に本当の自分でいられない時間が多かったら、それは健全な関係とは言えない。
「気くばりは気疲れするものではなく、むしろ相手を喜ばせることで、自分自身も満たされること。この大前提かからも、相手に合わせるという発想は捨てましょう」と西村さんは提案している。