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伝統と革新の融合!若き職人が集う関美工堂「ヒューマンハブ天寧寺倉庫」が世界を魅了する理由

2025.01.19

福島・会津若松市の関美工堂本社「ヒューマンハブ天寧寺倉庫(以下、HHT)」が、オランダのデザイン誌『FRAME』が主催する国際デザイン賞「FRAME Awards 2024」コワーキングスペース部門最優秀賞を受賞した。

関美工堂は1946年に創業し、世界ではじめて木製の板に漆塗りと蒔絵を施した表彰用楯を商品化した企業。

現在はホテルライクな上質空間を演出する「BITOWA」、国産漆で暮らしを彩る「urushiol」、野に漆をキーワードとした「NODATE」といった漆器ブランドを有し、漆器の魅力を幅広い世代に発信している。

▲建築家・長坂常さん率いる「スキーマ建築計画」が設計

3代目を引き継いだ関昌邦社長の幼少時の遊び場でもあった旧本社・工場をリノベーションして2022年に再始動したのがHHT。

外装は当時の雰囲気を残しているが、断熱材や床暖房のおかげで建物のなかはかなり快適だ。

自分でできることはDIY、中に眠っていた廃材をアップサイクルして再利用するなど限りある予算に収まるよう工夫したという。

▲関昌邦社長

リノベーションするにあたり、ダメ元でスキーマ建築計画に打診したところ、その心意気をくんで快諾してもらえたそう。

「憧れの建築事務所に設計してもらい、その建物が目的、意義も含めて評価されたのは本当にうれしい。とてつもなく大きなプレゼントをいただいた気分です」(関社長)

職人をサポートし、漆器や会津の文化を発信する場

HHTは鉄骨2階建てで、1階部分はカフェとショップ、シェア工房、シェアキッチン。

工房とキッチンはガラス張り。オープンファクトリーのように常に職人がいるわけではないが、タイミングがあえば漆器作りにいそしむ職人の仕事ぶりや、加工食品を開発する様子を見学できる。

ショップに並んでいる製品がどうやって作られているのか垣間見ることで、もっと深く製品を知ろうと思える。

漆器は木を削りベースとなる器を作る「木地師」、漆を塗る「塗師」、装飾を施す「蒔絵師」らによる分業制で、職人たちは工房に弟子入りして技術から伝票の書き方、銀行との付き合い方まで多岐にわたって学び、道具をわけてもらって独り立ちしてきたのだが、会津塗の市場規模は縮小し弟子をとる工房もほとんどない。

「平成元年をピークに市場規模は2000年に4分の1、そこから数年でさらに7分の1まで落ちたと言われています。

木地師や塗師、蒔絵師の技術を学ぶ学校はあっても、肝心の職場がありません。かといって1から設備投資するのも非現実的です。HHTのシェア工房で、やる気も実力もある職人が独り立ちするまでサポートできれば」(関社長)。

シェア工房に登録した職人には、関美工堂だけでなく他社からの依頼を受けてよし。

職人は機材を使って技術を磨き、取引先を増やす。一方の関美工堂は全国的に職人不足と言われている現在でも生産数を確保できる。

職人を増やせば、地域を丸ごと盛り上げられる。

シェア工房の役割はスケールが大きく、職人不足に悩む他の業界の参考にもなりそうだ。

現在、大工兼木地師、仏具店勤務の塗り師といったダブルワークの職人が在籍し、自立を目指している。

ショップの営業時間は10~18時(カフェ~17時)だが工房利用は24時間いつでも使えるため、夜や雨の日など空いた時間に作業できるメリットは大きい。

来場者にとっては、工房に職人がおらず見学できない日は少々残念だが、ショップには写真のような木地師の仕事ぶりをイメージできるディスプレイが点在。

また、漆塗りの箸は販売だけでなく、箸天や持ち代(持ち手部分)の研ぎ出し体験や青貝張り体験(金・土・日曜開催)も。

工房見学からショップに至るまで、手仕事のおもしろさに触れる仕掛けが満載で、未来の職人を発掘できるかも?

▲カフェスペースで用いられているのも関美工堂の漆器

「学校行事で店に来た地元小学生がふたり、その後にメモ帳を持って来店。

なんで小学生が来たんだろうと話しかけ、会津木綿や会津塗の話をしたところ、6000円ほどの葉っぱモチーフの皿を買って帰ったことがありました。

小学生にとっては高額なので引き留めましたが、それでもコレがいいと。

漆器のよさに気づいてくれたことがうれしく、今も覚えています。もう高校を卒業しているはず、どうしているかなぁ」(関社長)。

2階はコワーキングオフィスとプリントラボ。漆器業界に限らず、いろいろな業界の人が交流することでモノ作りのヒントが生まれる場だ。

エプソンの協力を得たプリントラボには大判印刷や布印刷ができるプリンターを設置。一般の人でも使えて、少量からプリント可能。

製品誕生から数年かけていい状態に育つ

HHTには会津漆器から地元食材、会津木綿のアパレル、みやげ物など業種を問わずちょっといいモノ、人が集まる場所だ。噂を聞きつけ、その和が大きくなるという好循環が生まれつつある。

地方都市はともすれば人口が流出し、地域に根ざした文化や技術が廃れてしまうが、人が集まれば立て直すきっかけになる。

関美工堂の漆器ブランド「urushioil」では木地ができた年を刻んでいて「たとえば3年前の製品が店頭にあると古いと思うかもしれませんが、漆器は時間をかけることで木地や塗料が落ち着いていきます。つやつやの漆は塗ってから20年くらいでピークを迎えるとも。

ウレタン塗装は塗った瞬間がピークで年月がたつと劣化していきますが、3年前、5年前の漆器はワインでいうところのビンテージ」と関社長。

リノベーションして生まれ変わったHHTも時とともに漆器と地域を盛り上げ、未来につなぐ場に育ちそうだ。

【問】関美工堂

取材・文/大森弘恵

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