毎年9月にiPhoneシリーズの最新モデルが登場するのは通例となっているが、Macシリーズはさまざまなプロダクトがあるためか、どのモデルがいつ発売するのか、少々分かりにくいところがある。
2024年後半に発売されたMacシリーズとして今回紹介していくのが、Mac mini、iMac、そしてMacBook Proだ。10月に3日連続で3製品を順次発表していくという、異例の形式でも注目を集めた。
3モデルいずれも、搭載チップセットに最新のM4シリーズが採用されており、前モデルからのパワーアップが図られている。本記事では、最新モデルの実機を試しながら、それぞれのアップデートポイントについて紹介していく。
M4シリーズ搭載でさらにパワフルになったMacファミリー
Macシリーズの新モデルを紹介していくが、前提として、今回の3モデルには全てM4シリーズのチップセットが搭載されている。
発揮するパワーはデバイスごとに異なるものの、CPUやGPU、AI処理関連の性能など、いずれもM2やM3シリーズよりも高速化している。執筆時点でも、M2、M3シリーズを搭載したMacシリーズは現役といえる性能だが、新しくPCを買い替える人や、クリエイティブな作業をPCで行いたい人には、やはり最新モデルがおすすめだ。
また、最新モデルの注目ポイントであるApple Intelligenceだが、執筆時点では日本語に対応していないので、こちらは割愛。2025年中に日本語対応予定となっているので、使い勝手については、別の機会とさせていただく。
■さらにコンパクトでパワフルになったMac mini
デザイン面でのアップデートという意味で、最もインパクトがあるのは、Mac miniだろう。シリーズとして引き継がれてきた縦横19.7㎝四方というデザインからさらに小型化し、縦横12.7cm四方となった。質量も0.67kg/0.73kgと軽量で、デスク上のスペースを圧迫しない、移動させるのも楽というメリットがある。モニターやケーブルやキーボードといった荷物が増えるのでおすすめはしないが、カバンに入れて持ち運ぶことすらできるサイズ感だ。
本体が小型化した代わりに、厚さは1.4cmほど増しているが、デスク上に設置すると、高さは基本的に気にならない。サイズ変更による省スペースのメリットの方が大きい印象だ。
Mac mini発表時に少し話題になったのが、電源ボタンの位置。本体と正体した際に、左奥の底面に電源ボタンが配置されており、「押しにくいのではないか」という意見も見られた。
実際にデスクに設置して使用してみた感想としては、イメージ通り押しにくい。話によると、デスクトップPCの電源はそもそも頻繁に切らないのでは、という発想から、底面への配置が決まったとのこと。つまり、PCはシャットダウンせず、使わない場合はスリープモードにすればいいという考え方だ。ノートPCの場合、バッテリーの消耗といった観点から、使わないシーンでは電源を切りたくなるが、デスクトップPCはそうではないのかもしれない。使い方は人それぞれだが、「スリープモードで使ってね」という、アップルからのメッセージにも思える。
新しいMac miniでは、フロント側にUSB-Cポート、ヘッドホンジャックが搭載されているのも特徴といえる。イヤホンやヘッドホンはいわずもがな、キーボードやマウス、USBハブといった周辺機器と接続する際には、正面からさし込める方が、何かと都合がいいと感じる。Mac miniユーザーとしては、待望のアップデートといえるポイントかもしれない。
排熱構造も進化しており、内部に取り込んだ空気を、各階層から底面まで流れるように設計されているとのこと。そもそもMacに搭載されるMシリーズは電力効率に優れており、旧モデルでも動画編集などは行わない筆者の使い方では、あまり熱を感じるシーンこそなかったが、排熱性能の向上と、それに伴う静音性のアップは、ありがたいアップデートポイントである。
搭載チップセットはM4、もしくはM4 Proとなる。M4モデルは、M1モデル比で最大1.8倍高速なCPU、最大2.2倍高速なGPUパフォーマンス、M4 Proモデルはさらにコア数を増し、GPUはM4の2倍パワフルとのこと。上述した通り、そもそもがパワフルなMシリーズのアップデートなので、極端に性能アップを体感できるシーンは少ないが、動作に引っかかるシーンはなく、複数のアプリを同時に立ち上げていても快適だ。
ディスプレイへの出力は、1台の場合は最大8K/60Hzの解像度、または4K/240Hzに対応。2台以上のディスプレイに出力する場合は、搭載チップセットによって若干違いが現れる。
2台のディスプレイへ接続する場合は、M4モデルだと、Thunderbolt経由で最大5K/60Hzのディスプレイ1台と、ThunderboltまたはHDMI経由で最大8K/60Hzのディスプレイまたは4K/240Hzのディスプレイ1台。M4 ProモデルではThunderbolt経由で最大6K解像度、60Hzのディスプレイ1台と、ThunderboltまたはHDMI経由で最大8K解像度、60Hzのディスプレイまたは4K解像度、240Hzのディスプレイ1台に対応する。
最大数である3台の場合、M4モデルはThunderbolt経由で最大6K/60Hzのディスプレイ2台と、Thunderbolt経由で最大5K/60HzのディスプレイまたはHDMI経由で4K/60Hzのディスプレイ1台に対応。M4 ProモデルはThunderboltまたはHDMI経由で最大6K/60Hzのディスプレイ3台に対応する。
Apple Storeでの販売価格は、M4モデルが9万4800円から、M4 Proモデルが21万8800円からとなる。初めてデスクトップPCを購入する場合や、周辺機器の買い替えを同時に行う場合は、キーボードやマウス、モニター代が別途発生するが、性能を見れば十分安いと感じる。今回試したM4搭載Macの中でも、最も安価な製品なので、試す理由は十分といえるだろう。
■ポップなカラーバリエーションと高性能が特徴のiMac
一体型PCとも呼ばれるiMacもM4チップ搭載モデルが登場。グリーン、イエロー、オレンジ、ピンク、パープル、ブルー、シルバーと、カラフルなカラーバリエーションが用意されている。
大きく括れば、Mac miniと同じくデスクトップPCだが、ディスプレイと一体型になっているのに加え、購入時にはキーボードとマウスかトラックパッドが同梱されるため、周辺機器を揃えなくてもいいという利点がある。使っていて感じるのは、デスク上にモニター、キーボード、マウス以外のものを置かなくても完結する利便性だ。
ディスプレイは24型で、4.5K Retinaとなる。筆者は普段4K対応のモニターを利用しているが、発色の良さや解像度の高さはしっかりと体感できる。ある程度の角度調節はできるが、高さの調節ができないのが少々残念なポイントと感じる。
筐体デザインの変わったMac miniと比較すると、マイナーチェンジという印象もあるiMacだが、内蔵カメラは1200万画素にアップデート。Web会議の際などに、被写体を自動認識して画角を調節するセンターフレーム機能や、デスク上に置いてあるものを上から撮影したように画像処理するデスクビュー機能に対応する。特にデスクビュー機能は、会議時に手元でデモを行う場合や、手書きのメモなどを映す際に重宝する新機能となる。
電源ケーブルは支柱部分にマグネットで接続するようになっており、ケーブル一本で動作するのもありがたいポイント。インターフェースは背面右側に集約されており、最小構成でThunderbolt/USB 4、上位構成だとThunderbolt 4を4つ備える。背面のインターフェースは、ケーブル類がまとめやすいというメリットと、抜き差ししにくいというデメリットが両立する。個人的には少し使いにくいポイントにも感じるが、1台でほぼ完結しており、ワイヤレスキーボード、マウスが同梱されることを考えれば、些細な問題なのかもしれない。
搭載チップセットはM4のみで、ProやMaxモデルは選べないが、M4チップの中にも、CPUコア数の違うものが選べたり、搭載メモリ、ストレージをカスタムできる。ストレージは必要に応じた容量を選ぶことになるが、CPUコア数やメモリ容量は、ほとんどの人が最小構成でも納得のいくパフォーマンスを発揮するはずだ。
■最上位チップセットも選択できるMacBook Pro
ノートPCの最上位モデルであるMacBook ProもM4ファミリーとして登場。M4チップに加え、M1 Pro比で3倍高速なM4 Pro、M1 Max比で最大3.5倍高速なM4 Maxも選択できる。
主なアップデートポイントは、やはりM4シリーズ搭載による各所のパワーアップ、およびAI処理性能の向上。普段そこまで負荷の大きな作業をしない筆者が紹介するのも心苦しいが、動画編集のパワフルさ、快適さについては別の記事にて紹介しているので、こちらも合わせて確認して欲しい。
【関連記事】動画編集は誰でもできる時代に!「iPhone 16 Pro」と「Mac」で始めるAI動画編集入門
パワフルなチップセットに目が行きがちなMacBook Proだが、随所に使いやすくなったと感じられるポイントがある。特にインターフェースは、最小構成でもThundelbolt 4が3つ搭載され、外部ディスプレイ接続も2枚まで可能に。SDカードスロット、HDMIポートも備えるなど、拡張性が大幅に向上している。
MacBook Proが優秀なノートPCであるのは間違いないが、自宅で長く使用するのであれば、外部モニターやキーボード、ワイヤレスといった周辺機器と接続したくなる。ワイヤレスでは賄いきれない部分も多くあるので、拡張性の向上は、使い勝手に直結する。充電に使えるMagSafeポートも備えられているため、USB-Cポートがフル活用できるのもポイントだ。
M4シリーズ搭載のMacBook Proの大きな特徴の1つに、バッテリー性能がある。M4モデルが最大24時間のビデオストリーミング、M4 Proが最大22時間のビデオストリーミング、M4 Maxは最大18時間のビデオストリーミングが可能となっている。
今回はM4 Pro搭載のMacBook Proで試しているが、とにかくよく電池が持つ。MacBookにMシリーズのチップセットが搭載されて以降、バッテリー持続時間については、常に高水準を維持しているが、パワフルさを増しながら、省電力性も突き詰められているのには好感が持てる。
M4シリーズ搭載のMacBook Proには、14インチモデルと16インチモデルがある。今回は14インチモデルを使用しているが、厚さ1.55cm、質量1.60kg(M4 Proモデル)と、少々分厚く、重いと感じる。筆者が普段、MacBook Air(M1)を持ち歩いているからでもあり、インターフェースが豊富な弊害でもあるが、ノートPCとしての携帯性は優れているとはいい難い。実際に試していて、唯一ともいえる、使いにくさを感じるポイントだ。
■全モデルメモリ16GBスタートになったのもポイント
今回登場したM4シリーズ搭載Macは、いずれもメモリの最小容量が16GBとなる。Apple IntelligenceをはじめとするAI処理を快適に動かすためには、ある程度のメモリ容量が必要であるためと考えられる。
とはいえ、メモリ容量が大きくなる恩恵は、日頃のマルチタスク、PCゲームのプレイといったシーンでも非常に有用。チップ性能の高さも相まって、今回試した3モデルで、パワー不足を感じるシーンは基本的になかった。M1シリーズと比べても、各動作のスムーズさは確かに感じられる。
デスクトップPC、一体型PC、ノートPCと、それぞれコンセプトが異なるため、どれがおすすめというわけではない。購入の際には、使い方に合わせたモデルを選ぶように心がけてほしい。
取材・文/佐藤文彦
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