2024年は打者に専念して数々の記録を打ち立てた大谷選手だが、来季は「投手・大谷」がマウンドに帰ってくる。そこで、プロ1年目の大谷選手とバッテリーを組んでいた鶴岡慎也さんに、当時の印象や大谷選手が投手として大成できた理由、周囲の選手に与えた影響について語ってもらった。
初登板の捕手を務めて対戦相手としても熟知する解説者が語る!
野球解説者
鶴岡慎也さん
2002年ドラフトで北海道日本ハムファイターズに入団。投手の良さを引き出す捕手として定評があった。2014年に福岡ソフトバンクホークスに移籍。2018年から再びファイターズでプレーし、2019年からはコーチ兼任選手に。2021年限りで現役引退後、野球解説者として活動。ラジオ番組『鶴岡慎也の焚き火トーーク』が毎週金曜『グッチーのGood Friday!』(HBCラジオ)内でオンエア中。
大谷選手が北海道日本ハムファイターズに入団した当時。鶴岡さんは一軍正捕手を務めていた。
「僕は社会人野球・三菱重工横浜の出身なんですが、大谷選手のお父さんも同じチームでプレーされていたそうです。お母さんも同社バドミントン部に在籍されていたという縁で、彼が入団してすぐに挨拶に来てくれました。第一印象は『礼儀正しい』の一言。しゃべり方にも落ち着きがありました」
野球のプレーに関して、打者としては突出したポテンシャルを示していたが、投手としてはまだ粗削りな面が目立ったという。
「とんでもなく良い投球をするけれど、その精度は低かった。5球のうちナイスボールは1〜2球。僕はダルビッシュ(有)投手のファイターズ時代にもボールを受けていましたが、完成度に差がありましたね。ちなみにMLBへ移籍する直前のダルビッシュは、5球中4球は打者が手が出ないボールを投げていた。ただ見方を変えれば、大谷選手には、まだ伸び代があったということだと思います」
鶴岡さんは翌年、福岡ソフトバンクホークスへ移籍。今度は相手チームの一員として大谷選手と対峙することになる。
「印象的だったのは、打席で対戦するたびに彼が成長した姿を見せてきたことです。5の1だったナイスボールの精度が、5の2になり、その翌シーズンでは5の3になっていく。特にピンチの場面で投球のギアを一段上げたピッチングには手も足も出ませんでした」
鶴岡さんは2023年のWBCではブルペン捕手として侍ジャパンに帯同。再会した大谷選手には、精神面での成長も感じたという。
「常にチームの勝利のためにプレーしている点が、大谷選手のすごさだと思います。きれいごとなしに、チームが優勝するために自分がどんなプレーで貢献すればいいかを第一に考えている。だからあれだけのホームランバッターが、出塁の確率が上がると思えば、セーフティーバントまでトライするんです。言ってみれば二刀流の原点もそこにありますからね。投手でも打者でも貢献できるから両方ともやる。その姿勢がブレないからこそ、2024年のワールドシリーズでもドジャースを世界一に導けたのだと思います」
現役引退後は野球解説者として活躍する鶴岡さん。そんな解説の立場から見た、大谷選手が日本プロ野球界に与えた功績とは!?
「選手たちのトレーニングに対する意識に、改革を起こしたことだと思います。ウエイトトレーニングを重視する先駆けはダルビッシュ投手だったんですが、そのメソッドがファイターズに残っていたことも大谷選手には幸運だったかもしれません。トレーニングで体を鍛えることが野球の上達につながる。そう意識を変えたんです」
これまで野球に限らず、ほかの種目も含めて、日本人選手は世界の舞台で戦ううえで「パワーでは勝てない」というのが定説だった。だから技術で勝負するのだ、と。
「大谷選手がその常識を打ち破ってくれたんです。しっかりトレーニングさえ積めばパワーが売りのMLBでもトップに立てる。多くの日本人選手に自信を持たせてくれました。実際、ヤクルトの村上(宗隆)選手やジャイアンツの岡本(和真)選手はWBCの舞台でパワーでも互角以上に戦えることを証明した。大谷選手がプロ野球界に与えた一番の功績でしょう」
鶴岡さん本人が、大谷選手と間近で接して受けた一番の影響は、「試合中の対応力の重要性に気づけたこと」だという。
「大谷選手はたとえ1打席目で打たれたとしても、攻め方を変えて2打席目には抑えてみせる。彼ほど考えながらプレーしている選手はいません。対応力の大切さを知ることができたことは、解説業にも生きています。ある打者が凡打しても、何か狙いが見えたら、その意図を拾って解説してあげたい。その失敗が次の打席、次の試合の成功にどうつながっていくのか。普段からそういう解説をするように心がけていますが、それは大谷選手の影響でもありますね」
2024年は打者に専念した大谷選手だが、来季はドジャースでの二刀流に挑む。鶴岡さんが期待する「投手・大谷」の活躍とは?
「彼ほど考えて野球をしている選手はいないと言いましたが、それは試合中の対応力だけでなく、年単位の計画性についても言えることです。手術明けですがケガの原因は分析済みのはず。もしかしたらスイーパー(※)を多投していたスタイルが変わるかもしれない。きっと我々の想像を超えてくれる。どんな〝NEW大谷〟を見せてくれるのか。今から楽しみです」
「スイーパーを多投する投球がどう変わるか。新しい一面に期待です!」
「トレーニングに対する意識を変えました。翔平は自分自身の肉体を研究し尽くしていますね」
大谷選手は練習中から最新機器を使って、移動距離や速度、加速度、心拍数などを計測。そこから導き出された肉体の疲労度などを数値化し、コンディションの管理を行なっている。そこまで徹底しても、完全にケガは予防できないもの。しかし、大谷選手はこれまでケガをするたびに、対策を練り上げて大きくなって帰ってきた。2025年のシーズンは大谷選手の新しい一面を目にできるチャンスだ!
※横方向に大きく曲がる変化球。2023年WBCの決勝戦で大谷選手がマイク・トラウト選手から三振を奪ったボール
取材・文/田中周治 撮影/藤岡雅樹(鶴岡さん)、田口有史(ロサンゼルス・エンゼルス時代)
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