ウェザーニューズは能登半島地震から1年、阪神淡路大震災から30年となる今年、地震防災に対する意識や備えについて実態を把握して、防災・減災へとつなげることを目的として「減災調査2025年」を実施。先日、結果を発表した。
本稿では同社リリースを元に、その概要をお伝えする。
なお、ウェザーニューズでは、防災・減災への意識を高め、日頃からできる災害対策を知ってもらうことを目的に1月15〜17日の3日間、気象情報番組「ウェザーニュースLiVE」にて特別企画「防災WEEK 〜もしもの備えをいつもから〜」を実施する。
約6割が家具の転倒防止を実施、しかし過半数が住宅の耐震性に不安
2024年の元日に発生した「能登半島地震」および1995年1月17日に発生した「阪神淡路大震災」では住宅の全壊や半壊、室内の家具の転倒などにより、多くの人的被害や家財の損失が生じた。
地震災害時に生命や家財を守るためには、住宅や家具への地震対策や、防災グッズの準備が極めて重要だ。そこで、住宅や住まいにおける災害対策について調査した。
住宅内の地震対策について、「食器棚や本棚の転倒防止対策はしていますか?」と質問、「ほぼしている」「一部している」「していない」「する必要がない」から選択してもらった。
回答を集計した結果、「ほぼしている」と「一部している」との回答を合わせて、6割以上が転倒防止対策をしていることがわかった。
都道府県別に見てみると、「ほぼしている」または「一部している」と回答した人の割合が最も多かったのは宮城県で78.2 %、次いで和歌山県が73.6 %、宮崎県で69.4 %となった。
東日本大震災の被災地や、南海トラフ地震の影響が懸念されている太平洋側の地域で対策の実施率が高くなっており、過去の被災体験や将来的な地震リスクから地震防災への意識が高いことが考えられる。具体的な対策方法としては、突っ張り棒やL字金具が主流となっているようだ。
一方で「面倒だ」「賃貸住宅のため」「コスト面」などの理由から対策を実施していない人も約4割いることが判明した。
地震が発生した際、家具が転倒すると負傷する恐れがあり、近年発生した地震では、家具の転倒や移動による負傷者が30〜50 %にのぼるというデータもある(※1)。
(※1) 東京消防庁「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック」
家具の転倒でストーブのスイッチが押されて火災が発生したり、避難経路を塞いで閉じ込められたりなどの二次被害につながる場合もあるため、家具が落下したり転倒しないよう対策をしておくことが重要だ。
続いで防災グッズについて、「防災グッズの保管場所を決めていますか?」を質問、「決めている」「決めていない」「持っていない」から選択してもらった。
回答を集計した結果、約8割が防災グッズを持っており、そのうち約7割が明確な保管場所を定めていた。保管場所は「迅速な持ち出し」が重視され、玄関付近や避難経路上に置いている人が多いようだ。
また、家と車、1階と2階それぞれに保管するなど、リスクを分散する工夫をしている人もいた。
■住宅の地震対策について調査すると深刻な課題も明らかに
住宅内の対策が進む一方で、住宅そのものの地震対策について調査すると、深刻な課題も明らかになった。
「自宅の耐震性について不安がありますか?」と質問して回答を集計した結果、「とてもある」と「ある」と答えた人を合わせて過半数が、自宅の耐震性について不安を持っていることが判明。
都道府県別に見てみると、「とてもある」または「ある」と答えた人の割合が最も多かったのは岡山県で69.5 %、次いで島根県が69.3 %、和歌山県で66.7 %となり、上位8県が西日本に集中していた。
近年大きな地震が起きていない都道府県を中心に、対策や見直しが後回しになってしまっている可能性が考えられる。不安を感じる要因としては、目視できる亀裂や床の傾きなど建物の不具合、築年数の古さ、立地条件などが挙げられていた。
建物の耐震基準は建築基準法によって定められているが、この耐震基準は度々改正されている。
1981年5月31日までに確認申請を受けた建物は「震度5程度の中規模の地震で大きな損傷を受けないこと」が基準となっているが、1981年6月1日以降に確認申請を受けた建物は「中地震では軽微なひび割れ程度の損傷にとどめ、震度6程度の大規模な地震で建物の倒壊や損傷を受けないこと」という基準に変わっている。
自宅がいつ建てられ、どの耐震基準で作られているか、その後耐震補強などが行われているかを確認しておくことが大切だ。
災害時の停電対策として4人に1人がポータブル電源を所有、乾電池も重視
また、災害避難時に重要となる電源確保に関する調査も行なった。
「停電対策として、ポータブル電源やモバイルバッテリーは持っていますか?」と質問、「モバイルバッテリーのみ」「両方持っている」「ポータブル電源のみ」「持っていない」から選択してもらった。
回答を集計した結果、約8割の方がモバイルバッテリーを持っており、およそ4人に1人がポータブル電源を持っていることがわかった。
蓄電機器の普及が進む一方で、乾電池の必要性はどのように変化していくのか、「乾電池は避難時に今後も必要だと思いますか?」と質問した。
回答を集計した結果、「とても重要」と「必要だと思う」と答えた人を合わせると、9割以上が乾電池は必要だと考えていることがわかった。
理由を聞いたところ、充電式のモバイルバッテリーのバックアップとしての役割や、懐中電灯やラジオなどの基本的な防災グッズの電源としてのニーズ、長期保存が可能な信頼性やさまざまな機器で使用できる汎用性の高さが挙げられていた。
しかし、重量負担やUSB充電式機器の増加、使用機会の減少を理由に「不要」とする意見も少数ながら存在していた。
現時点では依然として高い必要性を示す乾電池xが、新しい機器の普及や社会システムの変化により、そのニーズは今後変化する可能性がありそうだ。
調査概要
調査名/「減災調査2025」(能登半島地震から1年 阪神淡路大震災から30年)
対象/スマホアプリ「ウェザーニュース」利用者
期間/2024年12月29日〜2025年1月4日
回答数/1万6684名
関連情報
https://weathernews.jp/s/topics/202501/090115/
https://weathernews.jp/s/topics/202501/090135/
構成/清水眞希