「緑茶でうがいをしてください」
風邪をひいて病院に行ったら、医者からこんなことを言われた人もいるだろう。様々な効能があると言われ、注目されているお茶は、2025年、「お茶割り」として大ブレイクの兆しがある。お茶割りとは、焼酎などをお茶で割ったアルコール飲料のこと。
「ここ数年、お茶割りは徐々に流行ってきていて、ネット検索数は上昇傾向にあります」と話すのは、一般社団法人日本お茶割り協会の理事で、株式会社クラフト・ティーの代表取締役・新谷健司さん。
「ハイボールはサントリーが“角ハイ”を出してから需要が増えた。レモンサワーも専門店ができるほど流行ったのは、大手メーカー参入と時期が重なっています。お茶割りも、2024年はサントリーが『こだわり酒場のお茶サワー~伊右衛門~』を発売。三和酒類が『いいちこ』をお茶で割る“いい茶こ”を打ち出して、若者が外食シーンでお茶割りを飲む機会が増えています。例えば、大学生がカラオケボックスなどで飲む際、炭酸系はお腹が張るからと飲みやすいお茶割りを注文する。そうした若い人が近い将来、社会人になって飲みに行く際にお茶割りを選ぶと思います」
まさに、お茶割り大ブレイクの夜明け前といった情勢のようだ。
お茶割りが楽しめる個性的な店舗を紹介
東京では、学芸大学と目黒に店舗を構える飲食店『茶割』が、本格的なお茶割りを提供する先駆的存在。ここは日本お茶割り協会の代表理事、多治見智高氏が経営している。100種のお茶割りと100種の唐揚げなどを提供する画期的なコンセプトでファンも多い。
写真は「抹茶のJINRO割」700円(中央)、「ミルクティーのラム割」700円(左)、「青いさんぴん茶の翠ジン割」650円(右)。10種類のお茶×10種類の割り方で100通りのお茶割りから選ぶことが出来る。
●茶割 目黒
東京都目黒区下目黒1-3-28 サンウッド目黒 地下1F
電話:︎03-6417-9811 営業時間17:00~23:00
https://chawari.tokyo/
お茶割りを扱う店は全国で広がりをみせており、お茶どころでもある京都では、京都駅構内にあるティースタンド『ぶぶる』が2024年夏から「玉露ハイ」「玉露サワー」などを提供している。じつはこの店、宇治茶で有名な祇園辻利の直営。つまり、お茶メーカーもお茶割りに乗り出したというわけだ。
「2024年は夏が長かったこともあり、玉露サワーは暑い日によくご注文いただきました。特に男性のお客様からの注文が多かったです」(株式会社祇園辻利 広報担当・井出由香さん)
写真は「玉露レモンサワー」850円。濃厚な味わいでゆっくりと楽しめる。「玉露ハイ」750円、「玉露サワー」800円。いずれも提供は店内のみ、テイクアウト不可。
●ぶぶる
京都市下京区東塩小路高倉町8-3 JR東海京都駅構内アスティ京都2階(新幹線中央口横)
電話:︎075-681-0002 営業時間9:00~21:30(不定休)
https://buburu.jp/
全国的ブームになりつつあるお茶割りだが、地域によって呼び名が異なるという。
「47都道府県の飲食店での名称を調査したところ、“お茶割り”と呼ぶのは滋賀県から東の地域。京都府から西はお茶サワーや緑茶ハイなど様々です。東日本から西日本に徐々に“お茶割り”という名前は広がりつつあります」(前出・新谷さん)
もちろん自宅でも気軽に楽しめる!お茶割りの魅力
2024年秋には、お茶割りを想定した焼酎も登場。オエノングループの福徳長酒類株式会社が発売した『宇治抹茶焼酎』は、米焼酎もろみに京都府産の茶葉を使用した宇治抹茶を加えて蒸留した本格焼酎で、本品とお茶を1:3で割るお茶割りを推奨している。
「抹茶ならではの心地よい香りとほのかな甘みが特長の本格焼酎です。このまま飲んでもおいしいですが、お茶割りにすることで、『宇治抹茶焼酎』とお茶の互いの風味が引き立ち、お楽しみいただけると思います」(オエノンホールディングス株式会社コーポレートコミュニケーション室・玉井智子さん)
宇治抹茶由来のほのかな甘さは緑茶との相性がよく、なめらかで飲みやすい。寒い日は温かいお茶で割っても楽しめる。
●宇治抹茶焼酎(福徳長酒類)
アルコール度数20度。600ml、1188円。
https://www.oenon.jp/product/shochu/maccha/uji-maccha-shochu.html
「お店によってはお茶割りをつくる際、ペットボトルのお茶や粉末のお茶を使っているところもありますが、リーフやティーバッグから抽出したお茶を用いると、より味や香りが引き立ちます。オペレーションの問題もあるかとは思いますが、リーフやティーバッグから水出しなどでお茶を淹れ、それを使ったお茶割りを提供してもらいたいですね」(前出・新谷さん)
実際にリーフからつくるお茶割りを提供している店では、外国人観光客にも好評だという。抹茶はすでに大人気なので、お茶割りが日本でしか飲めない“ジャパニーズ・カクテル”として認知されれば、インバウンド需要も見込める。お茶割りが日本のお茶業界を牽引していけば、年間400億円市場になるとの見方もある。
まずは飲食店でお茶割りを見つけたら試してみる。あるいは自宅で自らお茶割りをつくってみる。飲み口がよく香り高いお茶の余韻に浸りながら、日本ならではの喫酒アイテムの可能性を実感してみては?
取材・文/インディ藤田
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