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パンデミック、気候変動、AI、今こそ「ジョーズ」を観るべき理由

2025.01.13

映画『ジョーズ』(1975年)を今改めて紹介する理由は、現代が直面する “見えない恐怖”や“社会の歪み”といったテーマが、ますます我々の日常に重なるからである。パンデミック、気候変動、AIの急速な進化――これらの脅威は、まるで海の中で待ち構える巨大なサメのようだ。違いがあるとすれば、サメは少なくとも音楽で警告してくれるが、現実の問題は無音で襲ってくるということ。

それでも、『ジョーズ』が教えてくれるのは、逃げ場のない状況でも「やるしかない」という現実と、逃げ回る中で見つける自分の勇気である。それでは、この映画の特異な魅力を “自然”、“社会”、“人間心理”の3つの軸から振り返り、なぜ今なお観る価値があるのかを考察しよう。

【名作解剖ショー】映画『ジョーズ』

『ジョーズ』に登場するサメは、ただの捕食者ではない。それは、我々が抱く「海はきれいだが、サメに襲われたらどうしよう」というビーチでの妄想を具現化した存在だ。海という広大な舞台は、実際には人間が全く制御できない自然そのもの。だからこそ、サメはただ怖いだけでなく、何とも言えない「自然って怖いな」という漠然とした感情を煽る。

そしてこの映画の演出が巧みな点は、サメを見せないことで恐怖を増幅させることだ。ジョン・ウィリアムズの名曲は、もはや「何かが来る!」という恐怖を音符に変えたようなものだ。音楽を聞いただけでプールサイドの水も不安に見えるほどだ。

社会の歪みが浮き彫りに

アミティ島の町長や観光業者たちは、まるで「サメより観光客が重要」と言わんばかりの態度を取る。これ、どう考えても現代の無理な仕事優先の姿勢と重なるではないか。「サメがいないことにすれば、問題もない」という発想は、会議で「その課題、来週に回そう」と言うのと同じくらい現実逃避だ。

さらに面白いのは、住民たちが意外とこの状況を冷静に受け入れていることだ。「海に入るのが怖い?じゃあビーチバーで飲むだけさ」という姿勢は、現代でも「リモートで働けないなら公園で仕事しよう」みたいな柔軟さを感じさせる。

人間心理の描写が生む共感

保安官ブロディの葛藤は、多くの観客が共感するポイントだ。「海が怖いのに海辺で働く」彼の姿は、カフェインに弱いのにカフェで仕事をする人間の矛盾に似ている。しかし、彼がサメと向き合い、自分の恐怖を克服する姿は、観客に「俺だってやれる」と思わせる。

そしてサメ猟師クイントはどうだろう?彼の強烈な個性と悲劇的な結末は、ある種の「古き良き時代の男らしさ」を象徴している。彼の最後のシーンは、自然の圧倒的な力と人間の脆さを見せつけるもので、恐怖を通り越して「これだから自然は手ごわい」と思わせる。

フーパー博士も忘れてはならない。彼は「科学で何とかする!」という現代人の希望を象徴している。しかし、サメを相手にしている時点で「科学で何とかする」というのが、いかに難しいかを痛感させられる。

『ジョーズ』の普遍性

『ジョーズ』は、単なるスリラー映画ではなく、人生における困難をどう乗り越えるかを描いた寓話である。見えない恐怖にどう対処するか、そしてどうやって「やるしかない」を受け入れるか。サメの出現をきっかけに、それぞれの登場人物が自分なりの成長を遂げる。

パンデミック、気候変動、AIの進化といった現代の問題は、音楽もなしに忍び寄ってくるが、『ジョーズ』を見れば少なくとも「どう向き合うか」のヒントを得られる。たとえサメが出てこなくても、ジョン・ウィリアムズの音楽が頭の中で再生されるかもしれない。

文/井上イッキ

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