LIXILはこのほど、水道水中のアルカリ度が緑茶、紅茶、ハーブティー、コーヒーの香りや味に及ぼす影響を調査した結果、アルカリ度が高いと香りが強くなることが確認されたと発表した。
研究背景
水道水には、さまざまな成分が含まれており、お茶やコーヒーの風味(香りと味を合わせて感じる感覚)に影響を与えている。たとえば水の硬度については、「硬水」「軟水」という言葉などにより、ある程度一般的に認知されており、硬度により風味が異なることを知っている方も多いのではないだろうか。
一方、水道水に含まれる水のpH緩衝能(pHを一定に保とうとする力)の指標ともなるアルカリ度は、その地域の水源に応じて硬度と同じような差があるが、アルカリ度が風味にどのような影響を与えるのかは解明されていなかった。
そのため、本研究では水のアルカリ度に着目し、お茶やコーヒーの風味成分に及ぼす影響を硬度、pH、残留塩素と共に確認した。
研究概要
アルカリ度、硬度、pH、残留塩素を調整した水を用意し、それぞれの水(80℃)で緑茶を淹れ、香りに関わる香気成分と、味に関わる呈味成分を網羅的に分析した。その結果、緑茶の香気成分に関してはアルカリ度の影響が最も大きく、アルカリ度が高くなるとモノテルペンや青葉アルコールが増加し、緑茶特有の香りが強くなる傾向が確認された。
味に関してもアルカリ度の影響が最も大きいことが確認され、アルカリ度が高くなると渋味成分が減少し、うま味成分が増加する傾向が見られた。アルカリ度以外の成分については、硬度が高くなると有機酸が減少することが確認されたほか、残留塩素に関しては、カテキン類の減少傾向が見られた。
以上の結果から、アルカリ度、硬度、残留塩素、pHの各水質は、緑茶の香りや味の成分にそれぞれ異なる影響を与え、その影響度合いにも差があることがわかった。特にアルカリ度は緑茶の風味に強い影響を及ぼす重要な因子であることが示唆された。
先述の結果にて、アルカリ度が緑茶の風味に影響を及ぼすことが明らかになったことを踏まえ、アルカリ度が紅茶、ハーブティー、コーヒーの香気成分に与える影響も調査した。アルカリ度を調整した水(98℃)を用意し、それぞれの水で各試料を淹れ、香気成分を網羅的に分析したところ、アルカリ度が高くなると、紅茶、ハーブティー、コーヒーすべてにおいて香りが強くなることが確認された。
研究まとめ
今回の研究により、お茶やコーヒーの風味には、アルカリ度が大きな影響を与えることが初めて解明された。アルカリ度は緑茶の渋味、うま味、香りに影響しており、使用する水のアルカリ度によって、緑茶の風味が大きく変わることが示唆された。
さらに、アルカリ度が高くなると紅茶、ハーブティー、コーヒーの3種類とも香りが強くなるということも明らかとなった。今後、アルカリ度と他の水質因子の相互関係が香りや味に及ぼす影響を明らかにしていくことで、将来的にアルカリ度の調整によるさまざまな飲料の風味制御が期待できる。
出典:LIXIL
構成/こじへい