DIME MAGAZINE
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日刊スポーツ・ノブ斎藤 特別寄稿
ポストシーズンでより一層際立ったポジティブな言動
大谷選手は歴史を変えた。メジャー7年目で初出場したポストシーズンの初戦。強敵のライバル球団パドレスとの地区シリーズ開幕戦で、初回から3点先制された。この状況でドジャースは、データ上だと過去0勝14敗だった。だが、大舞台での戦いを求め、これまで以上の集中力を発揮していた大谷選手には、数字上の星勘定など関係ない。2回に強烈な3ランで同点に。バットを両手で放り投げ、大きく口を開けて叫んだ。目いっぱい感情を表現し、浮足立つチームを鼓舞。流れが変わった。
この強烈な1発から、鮮やかな逆転勝ちで幕を開けたメジャーリーグの2024年ポストシーズン。わかりやすい結果だけでなく、目に見えない部分でも大谷選手はドジャースを引っ張った。「緊張しない」と大舞台を楽しみ、前向きな姿勢を崩さない。1勝2敗でシリーズ敗退の危機に立たされても「2連勝すればいい。後がないって感覚自体がない」と、前だけを見て突き進む。チーム全体に一体感が生まれるようになった。
節目で結束を強める「言葉の力」も際立った。地区シリーズ第5戦。負けられない試合の前日に「（第4戦は）全員でつかみとった勝利だと思うので、明日もできれば必ず勝てる」と力強く言った。ポストシーズンを通じては、同僚の山本由伸投手を激励。能力を信じ、背中を押し続けた後輩は、ワールドシリーズ制覇への原動力になった。
ドジャースは過去2年、シーズンで圧倒的な成績を残してもポストシーズンで早々に敗退。勝負強さに課題があった。だが、今季は違った。最大の強敵だったパドレス、奇跡的に勝ち上がってきたメッツを次々に撃破。各選手が各自の個性を理解し、同じ目的に向かって戦う集団となった。全員野球に大谷選手が醸し出す不屈の精神が加わったことで、粘り強いドジャース野球が誕生したのである。
ナ・リーグ優勝決定シリーズの第6戦。大谷選手の一打から、難敵攻略への突破口が開いた。第2戦で苦戦したメッツの左腕マナイアから第1打席で中前打。先制された直後に「先頭打者として流れを戻せる仕事がしたい」と、打線に勢いを生んだ。4番エドマンの適時二塁打で逆転につなげ、同投手を3回でKO。「苦しい試合も多かったですし、全員でつかみとった素晴らしいゲームが多かった」と、戦い方を振り返った。
離脱せずに出場を続けていた大谷選手は、ワールドシリーズ第2戦で左肩を負傷。それでも第3戦に強行出場した。「チームの士気だけは下げたくない」。大谷選手は病院で診察後に出場可能と判断するや否や、同僚選手とのグループチャットで試合に出る意思を伝えた。試合中のパフォーマンスだけではない。どんな形でも勝利に貢献しようとする姿勢は、世界一を目指すチームの結束力を高めた。
初戦は延長10回2死からフレディ・フリーマンの逆転満塁本塁打で逆転勝利を挙げ、第5戦では5点差から逆転してワールドシリーズを制覇したドジャース。試合後の記者会見で大谷選手は言った。
「1番から9番まで、オフェンス面でいえば本当に自分の仕事をプロフェッショナルにこなしていく選手たちが集まっていたなと。どれだけ（点を）取られても諦めずにブルペン（救援陣）もつないでいく。そういう気持ちが本当に勝ちにつながっているかなと思ってます」
大谷選手が強豪ドジャースにポジティブな影響力を与え、大谷選手もチームに助けられた。それが世界一への扉を開いたのである。
取材・文／斎藤庸裕（ノブ斎藤） 撮影／田口有史
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