成功者に共通する資質を子供の頃から育てる『Five Keys』の代表・井上顕滋氏によれば、子どもと接する際、親が感情をコントロールできる状態であることが非常に大切だといいます。そこで、感情をコントロールする5つの方法を、井上顕滋氏の著書『子育てママに知ってほしい ホンモノの自己肯定感』から抜粋して紹介します。
親がどのような感情で子どもに物事を伝えるかは非常に重要であり、子どもと接する際に、親が感情をコントロールできる状態であることが非常に大切であることは前回お伝えしました。今回は、2つめの感情コントロールの方法を紹介します。これも繰り返しとなりますが、すべてをやろうとする必要はありません。自分に合うものを選んで使うようにするとよいでしょう。
感情コントロール~理解:イライラの正体を理解する~
2つ目の方法は、イライラの正体を理解するというものです。子どもに対してどんな時にイライラするかをいくつか挙げてもらいましたが、まずはその中でも特にイライラするものを一つ選んで、その場面を思い出します。そして、イライラしているときに私が「今、何が不安ですか?」と聞いたらどんな感じがするかを考えます。次に、同じ場面について「今、何が悲しいんですか?」と聞いてみたらどんな感じがするかを考えてみてください。
例えば何度言っても勉強しない子どもに対してイライラしているときに、何が不安かと聞かれると「成績が下がってしまうのではないかと不安」などといった答えが出てくるはずです。なぜなら、それが本当の感情だからです。つまりいつも感じているそのイライラ(怒り)は本当の感情ではないのです。本当は悲しいのに怒りとして表現したり、本当は怖いのに怒りとして表現したりすることは、私たちが日常の中で普通にやっていることです。
例えば、子どもの頃に「男のくせに泣くな」と言われて育ったお父さんは、本当は悲しいのをぐっとこらえて感じないようにしたり、怖いのを我慢したりして、その感情の代わりに怒りという形で表現するということがよくあります。ネガティブな思考は考えれば考えるほど増えます。そのネガティブな思考がどんどん大きくなって、よりネガティブな思考へ引っ張られていきます。
しかし内側にたまっているネガティブな感情は、感じると減るようにできています。悲しさでいっぱいになって、思い切り泣いたらかえってスッキリしたという経験がある人も多いはずです。それは、泣いてその悲しさをしっかり感じ、内側にたまっていた悲しいという感情が消費されたことによって内面の悲しみが減ったことを意味します。
そのため、本当は不安に思っている気持ちを怒りで表現し、イライラを子どもにぶつけても、親の不安は減りません。本当は違う感情なのに、怒りとして表現しているだけなので、そのイライラしている感情は収まらないわけです。イライラするシチュエーションについて振り返って具体的に分析してみると、本当の感情は何だったのかに気づくことができるはずです。その上で、「本当は将来のことを考えて不安だったんだ」「本当は私の気持ちを考えてくれなくて悲しかったんだ」などと本当の感情に向き合えると、イライラの感情は消滅しまったく違ったコミュニケーションをとることができます。
文/井上顕滋
いのうえ・けんじ。1970年生まれ。2004年 Result Design株式会社を設立。最先端の心理学および脳科学を学び、それらを融合させることで人それぞれの持つ能力を最大限に引き出す、独自の能力開発メソッドを確立。3000社以上の企業で経営者・経営幹部への指導や研修を行なう。2011年に未来の成功者を育てるため、小学生を対象とする日本初の非認知能力専門塾Five Keysを設立。2015年には非営利型一般財団法人日本リーダー育成推進協会 (JLDA)を創設し代表理事に就任。現在は特別顧問。講座などを通じてこれまで指導した小学生の保護者は4万人を超える。近著『子育てママに知ってほしい ホンモノの自己肯定感』 も好評発売中。