成功者に共通する資質を子供の頃から育てる『Five Keys』の代表・井上顕滋氏によれば、子どもと接する際、親が感情をコントロールできる状態であることが非常に大切だといいます。そこで、感情をコントロールする5つの方法を、井上顕滋氏の著書『子育てママに知ってほしい ホンモノの自己肯定感』から抜粋して紹介します。今回は、3つめの感情コントロールの方法を紹介します。感情コントロールの方法をすべてをやろうとする必要はありません。自分に合うものを選んで使うようにするとよいでしょう。
感情コントロール(3)~分離:不満を手放し責任者意識をもつ~
私たちは何かを問題と感じるとイライラしたり、不満を感じたりします。子育てでは、子どもがこうだからとか、言うことを聞かないからとか、何度も同じことを言わせるからとか、いろいろなことについて問題と感じることがあるはずです。その気持ちはよく分かります。しかし、ここで思い出してほしいことは、今までの経験のなかでなんらかの問題が起き、不満を感じながら問題に向き合ったときと、冷静な状態で問題に向き合ったときとでは、どちらがスムーズに解決できたかということです。
特に人間関係の問題は、不満を感じながら向き合うと状況が悪化したという経験をほとんどの人がしていると思います。ここで感情をコントロールするために提案したいことは、不満と問題を切り離すということです。その問題に不満を感じるかどうかは自分で選ぶことができます。つまり私たちは「問題を抱えている」という状況に対して反射的に不満を感じているだけなので、問題そのものと、それを不満に思う気持ちとは切り離すことができるのだと認識することが必要です。
問題が起きて不満を感じている状態では、自分は被害者であると感じ、被害者意識を持っています。被害者意識は「誰かのせい」「何かのせい」であり、「自分のせいではない」という前提がなければ生まれません。自分以外の誰かのせいで起きることはコントロールできないので、被害者にならざるを得ません。これでは不満を感じるのも当然です。しかし子育てにおいて発生する問題を、子どもやほかの何かのせいだと考えるのはさすがに無理があります。それらの問題は親自身の過去の選択や関わりによって生み出されたものであるという責任者意識で向き合わなければ、直面している問題を解決することはできません。たとえていうなら、自分は嫌だったのに、車に乗せられて来たくもないところに連れて来られたと不満を言っているようなものです。
これは自分の人生のハンドルから手を離している状態です。そもそも、自分では無理やり連れて来られたと思っていても、実際には自分の意志でハンドルから手を離していただけです。もし、違う方向に行きたいのなら、自分でハンドルを切らなければいけません。ハンドルをきちんと握っている状態が責任者意識です。行きたくないところに来てしまったけれど、自分でここに来たはずだととらえ、どうやったら本当に行きたい方向に行けるかを考えるのがハンドルを握っている状態です。被害者意識から責任者意識に切り替えるための自分に対する質問は「私は意識的または無意識的に、どうやってこの状態をつくりだしたのか」というものです。
この質問によって、子どもやほかの何かに向いていた矢印を自分自身に向けることができます。子育てにおいては、子どもの今の状態を見て、この状態は私の過去のどのような選択が生み出したのだろうと考えることが解決のための第一歩になります。なぜなら人生は選択によってつくられるからです。人生にはしばしば運命と思えるような局面があります。その運命には、変えられる運命と変えられない運命とがあります。選択によって今がつくられているなら、例えば子どもの頃に虐待にあった人は、それが本人の選択かといえば、そんなはずはありません。同様に、障がいを持って生まれた人にとっても、それが本人の選択かといえばそんなはずもありません。これらは自分に矢印を向けてはいけないケースです。変えられない運命を変えようとしても、ずっと苦しみ続けることになるだけです。変えられない運命に関しては、ちゃんと情報を整理した上で、受け入れ方を学ぶしかありません。
ここで考えたいのは、変えられる運命についての対応です。子どもの問題行動は大抵が変えられる運命です。間違いなく言えるのは、変えられない運命以外の私たちの現状は、過去の選択によってつくられているということです。そして未来は、これからする選択によってつくられるのです。ここまでの内容を踏まえて、イライラすることについて、子どもがそういう状態になるまでに自分は何を言ったのか、または何を言わなかったのか、あるいはどんな選択をしてきたのかを書き出してみます。これをしたからこうなった、もしくはこれをしなかったからこうなったという原因が必ずあります。その原因を見つけたときには、子どもに対するイライラは消えているはずです。
文/井上顕滋
いのうえ・けんじ。1970年生まれ。2004年 Result Design株式会社を設立。最先端の心理学および脳科学を学び、それらを融合させることで人それぞれの持つ能力を最大限に引き出す、独自の能力開発メソッドを確立。3000社以上の企業で経営者・経営幹部への指導や研修を行なう。2011年に未来の成功者を育てるため、小学生を対象とする日本初の非認知能力専門塾Five Keysを設立。2015年には非営利型一般財団法人日本リーダー育成推進協会 (JLDA)を創設し代表理事に就任。現在は特別顧問。講座などを通じてこれまで指導した小学生の保護者は4万人を超える。近著『子育てママに知ってほしい ホンモノの自己肯定感』も好評発売中。
子どもに対する感情をコントロールするために親が理解すべきこと
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