成功者に共通する資質を子供の頃から育てる『Five Keys』の代表・井上顕滋氏によれば、子どもと接する際、親が感情をコントロールできる状態であることが非常に大切だといいます。そこで、感情をコントロールする5つの方法を、井上顕滋氏の著書『子育てママに知ってほしい ホンモノの自己肯定感』から抜粋して紹介します。今回は、4つめの感情コントロールの方法を紹介します。感情コントロールの方法をすべてをやろうとする必要はありません。自分に合うものを選んで使うようにするとよいでしょう。
感情コントロール(4)~視点:違う側面を探す~
私たちは何か出来事があると、無意識のレベルで物事や出来事の一面だけを切り取って、これは良いことだとか悪いことだというように見方を固定しています。しかし、物事や出来事は多面的なもので、そもそもある一つの角度からの見方に固定すること自体が間違いです。写真を撮るとき、正面から撮るのと上から撮るのとでは全然違いますし、下から見れば、また違った見え方をします。物事や出来事もこれと同じです。
一般的に頭が固いといわれる人は、これはこういうものだと一方向からしか見られません。 一方、頭の柔らかい人は、瞬時にいろんな角度から見ることができます。例えば、イライラする原因があったときに、その出来事をほかの角度から見てみたらどうだろうかと考えます。「ほかにどんな見方ができるか」という質問を自分に投げかけるのです。それから「これは何を学ぶチャンスなんだろう」と問います。あるいは「もし、今起きていることが神様からのプレゼントなら、どんな意味があるのか」と考えてみます。そうやって出来事を見たときに、一つの正解を求めようとしてしまうこともありますが、こうでもあるし、こう考えることもできると多面的に見ることができれば、感じていたイライラの感情に変化が出ているはずです。
これは訓練が必要で、知っていることとできることとの間には大きな差があります。例えば、子どもが学校で嫌な思いをして帰ってきたとします。子どもの話を聞いて、お母さんが「ああ、そうなの。かわいそうに」という会話だけで終わってしまえば、その子ども自身の中で、「自分は被害者なのだ」という見方で固定されてしまいます。それも真実には違いないので、一つの方向から見たらそれはそれで正しいということになります。
ただ、そのときに「なるほど、そうか。つらかったね」と寄り添った上で、「でもお母さんには、これがすごく大きなチャンスに感じられるんだけど、それは何だと思う?」というように、違う見方を示せば、子どもの視点を切り替えることができます。ただ、そのためには親自身がさまざまな側面から物事を見ることができなければなりません。
しかし視点の切り替えだけが上手になると、楽観的なだけの人になってしまう可能性があるので注意が必要です。深刻な問題が起きたときに「え?こう考えればいいじゃん!」というように非常にポジティブに考える人がいます。それ自体は悪いことではないのですが、ポジティブに考えるだけで、実際には問題が一切解決していないということでは困ってしまいます。そうならないように注意して、冷静に物事を多面的に見るようにします。
ここで、イライラする状況について、こういうところが足りないからイライラしてしまうけれど、こういう見方もあるという、違う視点を考えてみます。これは得手不得手があるので、別の視点をなかなか思いつかない人は、トレーニングが足りないだけだと理解して、普段から意識して多面的に物事を見るようにすることです。
文/井上顕滋
いのうえ・けんじ。1970年生まれ。2004年 Result Design株式会社を設立。最先端の心理学および脳科学を学び、それらを融合させることで人それぞれの持つ能力を最大限に引き出す、独自の能力開発メソッドを確立。3000社以上の企業で経営者・経営幹部への指導や研修を行なう。2011年に未来の成功者を育てるため、小学生を対象とする日本初の非認知能力専門塾Five Keysを設立。2015年には非営利型一般財団法人日本リーダー育成推進協会 (JLDA)を創設し代表理事に就任。現在は特別顧問。講座などを通じてこれまで指導した小学生の保護者は4万人を超える。近著『子育てママに知ってほしい ホンモノの自己肯定感』も好評発売中。