1日にグラス1杯程度のワインを飲む人は、心筋梗塞や脳卒中などのリスクが最大50%低下するという研究結果が発表されました。尿中の成分でワイン摂取量を正確に測ることで、心臓保護効果がより明確になったとのことです。
ワインの心臓保護効果、客観的な指標で明らかに
毎日、少量のワインを飲むことで心臓の健康を守ることができる可能性を示唆する研究結果が報告された。この研究では、ワインを1日グラス半分から1杯程度飲む人は、ワインを全く飲まない人に比べて、心筋梗塞、脳卒中、心不全などの心血管疾患(CVD)リスクが50%低いことが示された。論文の上席著者であるバルセロナ大学(スペイン)Ramon Estruch氏らによるこの研究の詳細は、「European Heart Journal」に12月18日掲載された。
ワインとCVDとの関連を検討したこれまでの研究では、ワインの摂取量を対象者の報告に基づき把握していた。しかしこの方法では、対象者が記憶違いを起こしている可能性や虚偽の報告をしている可能性が考えられ、正確性に欠けていた。
それに対し、地中海式ダイエットの有益性を検討するスペインのPREDIMED試験の一部として実施された今回の研究では、対象者のワイン摂取量を尿中の酒石酸量の測定という客観的な測定方法を用いて追跡し、CVDとの関連を検討した。酒石酸は、特にブドウやワインなどに豊富に含まれている化学物質で、尿中に排泄される。そのため、尿中の酒石酸を測定することで、過去5~6日以内にワインやブドウを摂取したかどうかが分かるのだという。
対象は、PREDIMED試験参加者の中からCVDを発症した685人と、ランダムに抽出された625人(CVD症例との重複78人)の計1,232人(女性657人、平均年齢68歳)。これらの対象者は、食事摂取頻度調査でワインの摂取量を報告するとともに、試験開始時とその1年後に尿中の酒石酸の測定を受けており、ベースライン時の測定値に基づき5群(<1μg/mL、1~3μg/mL、3~12μg/mL、12~35μg/mL、>35μg/mL)に分類された。
その結果、酒石酸が3~12μg/mL(軽度の摂取量、月にワイングラス3~12杯)の群と12~35μg/mL(中等度の摂取量、月に12~35杯)の群では<1μg/mLの群に比べて、CVDリスクがそれぞれ38%と50%有意に低いことが明らかになった。一方、対象者の自己報告に基づくワインの摂取量とCVDリスクとの関連は有意ではなかった。
Estruch氏は、「ワインには、他の研究で観察されたものよりもはるかに大きな保護効果のあることが分かった。50%というリスク削減は、スタチンなどの一部の薬剤で達成できる効果よりもはるかに高い」と欧州心臓学会(ESC)のニュースリリースの中で述べている。
ただしEstruch氏は、「本試験の対象者はスペインに住む心疾患リスクが高い高齢者であるため、研究結果は他の国の人には当てはまらない可能性がある」と指摘している。また、同氏は、「もう一つの重要な問題は、適度なワイン摂取が何歳から『好ましい』と考えられるかということだ。最近の研究によると、ワイン摂取の予防効果は35~40歳ごろから認められることが示されている」と述べている。さらに、「女性の適度な摂取量は男性の半分程度とし、食事と一緒に摂取する必要があることも留意すべき重要な点だ」と付け加えている。
この論文の付随論評を執筆したIRCCS Neuromed(イタリア)疫学・予防部門のGiovanni de Gaetano氏は、この研究結果は、ワイン摂取に関する公衆衛生上の勧告に「広範囲にわたる」影響を及ぼす可能性があると話す。同氏は、「尿中の酒石酸量などの客観的バイオマーカーの使用は、アルコール研究における重要な方法論上の進歩を表している。これは、ワインの摂取量に関するより正確で信頼のおける測定法であり、飲酒が健康に与える影響に関する進行中の議論の一部を解決するのに役立つ可能性がある」と述べている。(HealthDay News 2024年12月18日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://academic.oup.com/eurheartj/advance-article/doi/10.1093/eurheartj/ehae804/7920812
構成/DIME編集部
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