日本の透析患者は、一般人口より速いペースで肥満化が進んでいることが、最新の研究で判明しました。肥満は腎臓病のリスクを高めるため、専門家は体重管理の重要性を指摘しています。
日本人透析導入患者の肥満化が一般人口以上のスピードで進行中
末期腎不全(ESKD)日本人患者のBMIを経年的に解析した結果、年々肥満者の割合が増加していて、その増加率は一般人口を大きく上回っていることが明らかになった。新潟大学大学院医歯学総合研究科臓器連関学寄附講座の若杉三奈子氏、同大学院腎・膠原病内科の後藤眞氏の研究によるもので、詳細が「Nephrology」に10月27日掲載された。
世界的に人々の肥満化が進んでいて、欧米からは新規のESKD患者にもその傾向が見られることが報告されている。しかし日本では、一般男性の肥満化傾向はあるものの女性ではその傾向が認められず、また新規のESKD患者における傾向はよく分かっていない。
肥満は直接的に、および糖尿病や高血圧を介して腎機能低下を促進することから、仮に日本人患者も肥満化が進行しているのであれば、今後の透析導入患者数抑制のために体重管理の重要性を強く啓発していく必要がある。若杉氏らは以上を背景として、日本透析医学会が毎年調査を実施し構築している透析患者レジストリー(JRDR)と、厚生労働省「国民健康・栄養調査」のデータを用いて比較解析を行った。
解析には2006~2019年にわたる14年間のデータを用いた。ESKDは維持透析の開始で定義し、肥満および低体重は透析導入された年の年末調査時のBMIにより判定した。なお、透析導入年齢は2006年が男性66.2±12.9歳、女性68.4±13.5歳、2019年は同順に69.7±13.1歳、72.2±13.2歳と高齢化していた。透析導入の原因疾患は糖尿病性腎症が多いものの、その割合に経年的な変化はなく、男性・女性ともに腎硬化症が年々増加していた。
まず、男性の肥満者(BMI25以上)率の変化を見ると、2006年時点においてESKD群におけるその割合は18.9%であり、年齢を一致させた一般人口における割合は28.1%、2019年には同順に29.5%、32.6%であって、両群ともに増加していた。ただし、年平均変化率(AAPC)として見ると、前者は3.36(95%信頼区間2.70~4.09)、後者は0.87(同0.26~1.42)であり、ESKD群の方が4倍近い速さで肥満者が増えていることが分かった。
続いて女性の肥満者率の変化を見ると、2006年時点においてESKD群におけるその割合は15.7%であり、一般人口における割合は20.6%と、ESKD群の肥満者割合の方が低かった。ところが2019年には同順に24.9%、20.6%であり、一般人口は変化がなくESKD群が逆転していた。AAPCは前者が2.86(1.65~4.19)、後者は0.01(-0.55~0.57)だった。
次に、低体重者(BMI18.5未満)の割合の変化に着目すると、男性は2006年時点においてESKD群は14.4%、一般人口は5.1%、2019年には同順に10.9%、4.0%であり、AAPCは前者が-2.32(-3.58~-1.13)、後者は-1.47(-2.71~-0.21)と、両群ともに減少していて、ESKD群の減少速度の方が速かった。ただし、2019年時点においてもなお、ESKD群の低体重者の割合は一般人口の3倍近くに上った。
女性の低体重者の割合は、2006年時点においてESKD群は24.4%、一般人口は9.8%、2019年には同順に21.0%、12.8%であり、AAPCは前者が-1.59(-3.09~-0.04)、後者は0.87(-0.02~1.78)であり、ESKD群では有意に減少し一般人口では有意な変化がなかった。ただし男性同様に、2019年時点においてもESKD群の低体重者の割合は一般人口より顕著に高かった。
以上を基に著者らは、「日本でもESKD患者の肥満化傾向が認められたが、同時に依然として低体重者が一般人口よりもはるかに多いことが示された。ESKDリスクのある集団に対する公衆衛生施策として、肥満と低体重の回避を促すメッセージを発信する必要がある」と述べている。(HealthDay News 2025年1月6日)
Abstract/Full Text
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/nep.14410
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構成/DIME編集部
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