でんぱ組.incメンバー共通の目標は?
――でんぱ組.incとして、チームとして初めての共通の目標が何だったのか教えてください
古川:でも、この日からちょっとでんぱ組.incの方向性が決まったなと思った日があって。
賞レースのライブって言うんですか?優勝とかが決まるようなライブ。お客さんからの投票で、このアイドルが一番良かったって決まるような勝負のライブに出たことがあって、今まででんぱ組.incって 1 回も勝てたことがなかったんですよ。
それは、その、ライブに出た時の動員であったりとか、どんなに頑張ってライブをしても拍手がもらえなかったりとか、なんか成功体験みたいなものがまるでなかったところに、その勝負のライブに出させてもらえるってなって。
そこで私たちは絶対に優勝してトロフィーを持って帰りたい!秋葉原にトロフィー持って帰りたい!という気持ちで、めちゃめちゃ気合い入れたよね?
相澤:確かに。私たち優勝できなかったら秋葉原に帰れません!みたいな MC をして。ちょっと半ば泣きながら MC したりとかして。
多分可愛くなかったと思う。もはや怖かったと思うんですけど、なんかでも、そんな中でライブしたら会場の方が、多分、でんぱ組.incのファンとじゃない方も、なんかちょっと、いつもより見てくれて。
古川:そしたら初めて、そのライブで優勝することができて。
そこからなんか、こうやって頑張れば前に進めるぞ!みたいなのが、なんとなく口には出してないけど、メンバーみんなでなんか分かった瞬間かなって私は思っていて。
でんぱ組.incなりの頑張り方みたいな。それを学んだあの日のライブから、ちょっとみんなの意識が変わったなっていうのはありました。
相澤:なんか本気でやるって言葉で言われてもわかんないし、誰かに本気でやれって言われても本気になって簡単にはなれないんですけど。
「あ、これが自分の本気なんだ」って、本気の出し方気づいたみたいな。
結構怖いけど、やればできるんだなってのを気づいたかもしれないですね。
活動中の印象的な出来事は?
――16年の歴史を振り返って思い出に残っているエピソードを教えてください
相澤:私、武道館に行く前の、武道館に生きたいですってライブでMCした時に、なんか今までMCって、でんぱ組.incはMC 下手だし、台本も何も書かないし、もうその場の思ったこと全部喋ってたんですよ。でも、その日はみりんちゃんとかが今日は大事な発表だからちゃんとMC考えて「武道館の行きたいです」って言おうって言ってくれて。
そしたら、会場から一瞬、一瞬だけ止まった後にブワッて風が吹いてきて、女の子が「一緒に行こうね」みたいなこと言ってくれたんだよね。
なんかそれがすごい嬉しくて。やっぱ当時って現場が結構男の方が多くて、その中でも勇気出して来てくれてる女の子とかが声あげてくれて。
そしたらもう周りの人がみんな「うわー行こう行こう」みたいな。
「行けるよ!」みたいなこと言ってくれて。
「あ。なんか行きたいって私たちだけじゃないんだ。みんなも行きたいと思ってくれてるんだ」ってのを感じて、MCって大事だなみたいな(笑)。
二人:(笑)
相澤:MCってすごい!みたいな。ライブって、アイドルって歌とかダンスだけじゃないんだ。MCとか言葉もちゃんとみんなに伝えようとしたら伝わるんだってのを感じて。
なんかあのMCがもっと下手っぴだったりとか伝わってなかったらちょっと武道館行けてなかったんじゃないかなってなんか思っちゃうぐらい。
すごいなんか覚えてます。あの日の風みたいな。ぶわってお客さんからの風をすごく覚えてる。
古川:なかなかね。目標言うのって恥ずかしいからね。
相澤:我々、特にそうだったね。なんか自分がやりたいこととか、「こうしたいです」みたいなのをメンバーに言うのも最初は躊躇してて言えなくて。
古川:りさちゃんなんて自己紹介するたびに泣いてたんです。
相澤:泣いてました。本当に恥ずかしい。
古川:(笑)。わかる。
相澤:自分のことを自分で主張するの恥ずかしくて。
古川:そんな私らが「武道館、立ちたいです!」って言うのってめちゃめちゃ緊張することだし、馬鹿にされてもおかしくないわけじゃないですか。普通に考えたら行けるようなアイドルじゃなかったので。それを、頑張れってめちゃめちゃ背中押してくれたのが、あの時は確かにすごい今でも鮮明に残ってる。
――それは、いつくらいの時期ですか?
古川:武道館の2年前だと思います。多分、恵比寿リキッドルームで初めてワンマンライブををした時だと思うので。
――いわゆる地下アイドル時代ですか?
古川:んーと。
相澤:デビューはしてる?トイズさんから。
古川:キラチュン歌ってるからしてるかな。そうですね。だから、まだまだ本当にやっとトイズファクトリーさんに見つけてもらって、『Future Diver』を出して『キラキラチューン』を出した頃。
全然そんな、売れる”う”の字もないような頃。で、本当に「こんだけ期待してもらってんだから頑張ろう!」っていう時だから、その優勝したライブで頑張り方を見つけた上で、じゃあ目標を言ってみようってところだったのかな。でも全然ぺーぺーの頃でした。
相澤:そうですね。
――古川さんは思い出に残っているエピソードはありますか?
古川:時期が飛んでも良いですか?
個人的なんですけど、やっぱり、私の人生の中でもかなり大きな転機というか、ターニングポイントになった日のことをすごく覚えていて。
それは私がライブで結婚発表した時の瞬間ですね。
私、あの……結婚してもアイドルを続けられるっていう立場にアイドルという言葉を持っていきたかったっていう思いがずっとあって。
アイドルを職業にしたいなという思いがずっと強くありました。
で、いざ、私が、その、当事者になるかもしれないっていう時にやっぱりすごく迷っちゃって。本当に結婚したままアイドルって続けられるんか?みたいな。
ファンの人になんて言われるんだろう?とか。世間のでんぱ組.incを見る目がまるで変わってしまうんじゃないか?みたいな。
めちゃめちゃ悩んでどうしようかなって考えたんですけども、やっぱり私は自分の人生も取りたいし、でんぱ組.incも諦めたくなかったんで、そういった人生を歩む場合は一体どうしたらいいんだろう?って考えた時に、誠実にファンの皆様の前で一番最初に私の口から報告するのが一番いいだろうと思って、ライブで発表することを決意しました。
それで、私が一人で、MCで「古川未鈴は結婚します」って言った瞬間が忘れられなくて、正直、「金返せ」って言ってその場で帰っちゃう人がいてもおかしくない発表というか、本当にシーンとしてもおかしくないよなっていう覚悟で、私はその発表に挑んだので、本当に緊張しながらこの一言、「結婚します」っていう一言で、今までやってきたアイドル人生に本当に一石を投入してしまうというか、ひっくり返す瞬間だなという気持ちでライブで、みんなに伝えたら、思いがけない光景が目に広がって。
それが、うわーーー!って。
すごい、みんなが、そのうわーには悲鳴もあるし、驚きの声もいろいろあったんですけど、うわーってなってくれて。
赤いペンライトをばーーって振ってくれて。
その中で一番うれしかった言葉が「でんぱ組.incを続けてくれてありがとう 」って言葉がめちゃめちゃ大きくて。
おめでとう!とかはもちろん言ってくれたけど、ありがとうって言われるって思ってなかったので。
そのみんなやっぱやめるって思ってたみたいなんですよね。結婚することで。
相澤:先に結婚のこと言って。「結婚します」って言ったから、「あれ、おめでとうだけど、もしかしてやめちゃうの」みたいな一瞬その、多分、息を呑む瞬間があって、でも「続けます」って言ってくれて、それでうわーってなったっていうのが。
本当になんかさすが勝てないね、ファンの方にはね。
古川:本当に。もうだから「なんで私はこんな悩んでたんだろう」と、発表することに。
もっとファンのみんなのこと、信じてればこんなに悩むことはなかったのにって思うぐらい。本当に私はファンの皆さんに恵まれたなという。
その時のことが本当に、一番人生の中でも印象に残ってる出来事の一つです。
アイドルの結婚や出産に思う事は?
古川:結婚したりとか、出産したりとか。ライフステージが変わると卒業の道を選びがちというか、それが当たり前みたいな風潮があると思ってて。そんなことはなくていいのになって思ってて。
女性アイドルでも一生の職業にできる、仕事にできる。そんなふうにアイドルの価値を高めたって言ったら偉そうですけど、そういうことができたら私はアイドルやった甲斐があるなって昔から思ってて。
相澤:ずっと言ってたよね。ずっと言ってて、「悔しい」みたいなのをずっと言ってて横で聞いてた。
でもなんか私たちがアイドルをやってた時代が特にそうだったなって。どんどん入れ替わることが、若い子の一瞬の青春を見たいみたいな。なんか、それってすごく、私たちから見たらすごくエゴな感じもどうしても感じちゃってたんですよね。
でも、昔のアイドルさんってまたちょっと違う。松田聖子さんとか。そういう往年の方って今もアイドルとしてステージに立っている。アーティストでもあるのかもしれないですけど。
その差って一体なんだったんだろって。アイドルしててもわかんないから。でもすごく悔しさがあって。
古川:なんか綺麗に卒業するのもめっちゃかっこよくて。それはそれでめっちゃ美しいじゃないですか。ただ、だったら私は続ける道もらっていいじゃないかなっていうのがあって。
そこなんか謎に切り開いてやろうみたいな、変な目標みたいなのもずっとありましたね。
相澤:なんか綺麗さとか、その美しさのために好きなのにやめなきゃいけないとかっていうことが嫌だよね。
今までアイドルなるまであんまり自分の好きなこととかを優先してやって来れなかったっていうのもあるから、あんまりその、クラスで一番とかそういうこともなったことなかったし、なんで自分が一生懸命やってる好きなことに対して誰かに決められなきゃいけないんだろう、みたいなのは私はすごいあったかもしれない。
古川:確かにね。
アイドルとして在るべき姿とは?
――アイドルとして、こう在るべきだって貫き通したもがあれば教えてください
相澤:アイドルって何かな?という状態で実は始めちゃったもんであれなんですけど、う~~ん。
古川:じゃあ私から行きますね。
相澤:どうぞ。
古川:なんか、やっぱ、私なりのアイドルは誠実であることかなと思ってて。
やっぱ等身大の自分をみんなに見てもらうっていうことを、私は徹底してやってたつもりではありました。
もちろん、すごいキャラのあるアイドルさんもすごい可愛いんですけど、私はやっぱ長くやりたかったっていうのがすごくあったので、長くやるためにはやっぱ無理はしちゃいけないなと思って、私らしい言葉でしゃべるとか、こういうインタビューで嘘をつかないとか。
相澤:ちょっと、他のアイドルが嘘ついているみたなこと言わないでもらっていいですか、ほんと(笑)。
古川:ちがう、ちがう(笑)。自分の言葉で喋るっていうね。
相澤:台本みたいにしないとか、脚本家いる感じしたりとかね。
古川:なんかやっぱ嘘の言葉って響かないなと思って。
相澤:響かないね。
古川:だからこういうこと言って欲しいという台本が来たとしても絶対に自分の言葉で喋ろうっていうのは徹底して私はやってました。信念かもしれません、これは。
相澤:でもやっぱりアイドルになってから、より気をつけるようになったのは、その見た目とかもそうですけど、本当にそういうことって当たり前じゃんってなるかもしれないけど、やっぱり私に時間とお金を使ってくれるみんなに何かちょっと特別な時間をあげたいから、でも本当にそれって、心の問題で。
なんかちょっと姿勢を良くするとか、常にもう本当にケアを怠らないとか。本当に普通のことなのかもしれないんですけど、なんかそういう日々の生き方とかって全部出るというか。だから赤信号渡んないとかね。そういうこと。
本当に誠実に、確かに誠実に近いかもね。
だからなんか日々生きてる瞬間、息してる瞬間、この食べたものの瞬間、寝た瞬間とか全部の摂取したものが全部、私の表現になると思っちゃうから。
なんかそれを、もちろん落ち込む日もあるんですけど、「ああ、昨日メイク落とさないで寝ちゃったな」とか、「昨日の良くなかった」とかっても思うけど、でも、それももうもはや全部受け入れて、これも自分だからじゃあどうしよう、とか。これをどういう表現に変えていこう、とか。
なんか常に自分から発せられるものが恥ずかしくないようにみたいなのは、もしかしたら無意識に近いけど意識してるかもしれないですね。