【第三話 猫と400kmの旅へ】
午前11時15分、東京のマンションを出発。キャリーバッグの他に荷物を入れたボストンバッグ1つとダンボール3箱を車に積み、400km先の実家を目指すことに。
後部座席に愛猫と並んで座ると、車は快適なスピードで走り出した。
先に伝えてしまうが、ドライバーのMさん、車の運転が物凄く上手い。
軽ワゴンという、正直乗り心地よりも機能性&収納力に重きを置く車のはずだが、揺れも少なく、ストレスや緊張感を感じさせないドライビングで僕たちを運んでくれる。
後部座席に乗る愛猫のことにも意識を集中し、やさしくブレーキを踏んでいるかのようにも感じた。
横にいる愛猫の様子はどうかというと…
知らない車内、知らない匂い、知らない人。当然、困惑と不安と恐怖と迷惑が混在しまくっている様子。体を丸め、寝ようとするが興奮で寝れないのだろう、目は輝きソワソワしている。
時折声をかけ、安心させながら(安心しないだろうなとは思いつつ…)、編み目越しに頭を撫でながら移動を続けた。
意外にも愛猫は鳴きわめくこともなく、しばらくすると観念したかのように目を閉じ、前足で顔を覆い、自分の世界に入り始めた。
愛猫のその姿にほっと一息ついた頃、次なる不安が押し寄せてきた。
車内にドライバーさんと2人きりだということ。
自分はそれほど人見知りでもないが、弾むような日常会話的トークテーマを常に持ち合わせている人間でもない。でも、これから4時間以上もの静寂を乗り越えられる自信もない。
ならば、何気ない会話でやり過ごすという意識から、インタビュー取材という視点に切り替えた方がいいのでは?
そう思い、ドライバーであるMさんの人となりやこれまでの仕事について聞いてみようと思った。