モバイルゲームで一時代を築き、2025年5月に国内のダウンロード数が6200万を超えた「パズル&ドラゴンズ」が、2025年2月で13周年を迎えようとしています。
運営するガンホー・オンライン・エンターテイメントは盤石な収益基盤を構築しているものの、成長性には陰りが出つつあるのも事実。ヒット作の創出に向けた活動に余念がありません。
売上の6割を韓国の子会社が占める
2024年12月期1-9月の売上高は前年同期間比21.8%減の764億円、営業利益は同32.8%減の158億円でした。ガンホーは前期が2割もの増収、1%近い営業増益となっていました。
今期はその反動減と言える状況です。
前期の増収に貢献したのが韓国のゲーム会社Gravity。この会社はソフトバンクの傘下にありましたが、2008年にガンホーが株式を取得して子会社化しました。Gravityは「ラグナロク」というドル箱タイトルを持っています。
Gravityは2020年7月に「ラグナロクオリジン」をリリースしてヒット。そのタイトルを2023年4月に東南アジアで配信しました。これが売上高を押し上げます。
実は近年のガンホーにおけるパズドラの収益貢献はそう大きくありません。2023年12月期は売上高のおよそ6割がGravityのもの。2024年12月期3Q単体も同様でした。
しかも足元で前期の反動減を受けていることから、ラグナロクシリーズの収益貢献が中長期において盤石なものではないことを物語っています。
年々増加するガンホーの研究開発費
パズドラは息の長い人気を獲得しており、ガンホーもコラボイベントなどを定期的に実施してファン離れを食い止めようとしています。しかし、どうしても緩やかに減衰するのが世の常。これは11周年を迎えた「モンスターストライク」(MIXI)、10周年の「白猫プロジェクト」(コロプラ)も同様です。
ガンホーは次なる収益基盤となるヒット作を生み出さなければなりません。
目下、研究開発には多額の資金を投じています。2020年12月期は17億4300万円、2021年12月期は21億1300万円、2022年12月期が21億4900万円、2023年12月期は23億8800万円が投じられています。年間20億円もの開発費を計上し、年々その投資額は増加しているのです。
20億円という金額は、スクウェア・エニックス・ホールディングスに匹敵するもの。同社の2024年3月期の研究開発費は20億5800万円でした。
不具合を修正した「DEATHVERSE: LET IT DIE」の売れ行きは?
2024年12月期にリリースしたタイトルが「ディズニー ピクセルRPG」。ディズニーキャラクターが活躍するスマートフォン向けRPGゲームです。18の国と地域で配信を開始し、7日間で世界累計100万ダウンロードを突破しています。
新作の売上貢献は4Qから。減収の巻き返しを図るほどの強さがあるのかは、通期決算の一つのポイントとなるでしょう。
なお、このゲームの開発協力を行ったのがエイリム。この会社はもともとgumiの子会社で、「ブレイブ フロンティア」シリーズを手がけたことで知られています。ガンホーは2024年12月にエイリムの株式を取得し、完全子会社化することを決定しました。
M&Aによって開発力の強化やタイトルのポートフォリオ拡大を図るという手法は、資本力のあるガンホーは選択しやすいものであり、今後加速する可能性があります。
足元で開発を進めるタイトルの中で、異色とも言えるのが「DEATHVERSE: LET IT DIE」。ガンホーは2016年12月に「LET IT DIE」というPlayStation向けのゲームを発売しており、このタイトルは2023年1月に800万本を記録しています。「DEATHVERSE: LET IT DIE」はその後継作品。2022年9月に発売したものの、2023年7月にサービスを停止しました。トラブルが多発したためで、ガンホーはこれを手直しして再リリースする予定です。
近接戦型のバトルロイヤルで、美しいグラフィックの独特な世界観が特徴的。一部のファンからは高い評価が得られており、作り手側の並々ならぬこだわりが伝わる作品です。
ガンホーには、販売本数1100万を突破した「ニンジャラ」というヒット作があります。モバイルゲームだけでなく、コンソールゲームで成功させられるかは成長するにあたって重要な要素となるでしょう。
モバイルとコンソールで成功させたのがサイバーエージェント
ここしばらくはモバイルゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」のスマッシュヒットからの反動減に苦心していたものの、2024年2月に発売したPlayStation用ソフト「グランブルーファンタジーリリンク」が発売から11日で販売本数100万を突破しました。ゲーム事業は2024年9月期が増収となっています。
更に2025年春には「シャドウバース ワールズビヨンド」という人気シリーズの最新作をリリースする予定。競合も開発の手を緩める様子はありません。
現在、ガンホーがグローバル配信を前提として開発しているタイトル数は5本。新規IPの創出を計画しており、再成長の起爆剤となる可能性もあります。
2025年はNintendo Switchの後継機がお披露目すると見られており、ゲーム業界の活発化も予想されます。
ガンホーは満を持してのヒット作を生み出すことができるのか、ファンの注目が集まります。
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文/不破聡