テレビ離れが進むとともに、年代・性別ごとの嗜好に合わせた映像コンテンツが次々と公開される昨今。もはや家族みんなで一つの番組や映像作品を見ることはなくなったかと思いきや、最近になって「お茶の間回帰」のような現象が起こっていることがこのほど、Amazonの調査によって明らかになった。
そんなAmazonの「令和のお茶の間実態調査」が家族やパートナーと同居している15歳~79歳の男女1,400名を対象に実施された。調査結果は以下の通り。
家族やパートナーとテレビ画面でコンテンツを楽しむ「お茶の間」回帰の傾向
■家の中でのコンテンツ視聴方法はテレビ画面が最も多い(56.7%)
家の中で最も多いコンテンツ視聴方法について尋ねたところ、テレビ画面という回答が56.7%を占める結果となった。スマートフォンと回答した人が26.1%、パソコンと回答した人が11.9%、タブレットと回答した人が5.1%と続き、テレビ画面でコンテンツ視聴を楽しむ人が最も多い結果となった。
さらに、同居している家族やパートナーと、一緒にテレビ画面でコンテンツを視聴する平均頻度については、半数を超える55.1%が毎日と回答。家族やパートナーとテレビ画面の前に集まることが多いという傾向が明らかとなった。
■家族・パートナーとの時間を重要視している人は3人に2人以上
家族やパートナーとの時間を重要視する人が3人に2人以上(66.8%)おり、そのうちここ数年でテレビ画面での視聴機会が増加したと回答した人は40.3%にのぼり、減少したと回答した人(9.7%)の4倍以上という結果となった。
テレビ画面での視聴機会が増加した理由としては、約半数(48.8%)が「大画面や高画質で好きな動画を見る方が熱中できる、楽しめるため」と回答した。さらに、視聴機会が増加したと回答した人のうち8割以上(81.0%)は、今後、家族やパートナーと一緒にテレビ画面でコンテンツを視聴する時間を増やしたいと回答。
この結果から、多様な視聴コンテンツが増加したり、個人デバイス使用が普及したりする中でも、家族やパートナーとの時間にはテレビ画面が重要な役割を期待され、「お茶の間」に回帰しようとしている傾向がうかがえる。
令和のお茶の間を支えるのは家族やパートナーとの「推し活」の存在
■3人に1人が家族やパートナーと一緒に推し活をしている実態が明らかに
現在、推し活をしている人が3割以上いる中で、そのうちの3人に1人(36.4%)は家族やパートナーと一緒に推し活をしている実態が明らかになった。
また、一緒にコンテンツを見ることが最も多い人としては、49.2%が配偶者・パートナー、40.1%が親・子供と回答した。さらに、9割以上(94.1%)が家族やパートナーとの推し活をテレビ画面で視聴していると回答し、多数を占める結果となった。この結果から、家族やパートナーとテレビ画面の前に集まるきっかけに「推し活」があることが明らかとなった。
■2025年に推したい対象はMLB(メジャーリーグ)ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が最多
2025年に推したい人、モノを尋ねたところ、大谷翔平選手の名前が最も多く挙がった。以降はアイドル、アーティスト、キャラクターや、漫画・アニメなど幅広いジャンルの回答が続く結果となった。
さらに、家族やパートナーの推し活に関するエピソードを尋ねたところ、「推しのコンテンツを正座しながら見ている」、「母が今まで一人で映画館に行くこともなかったのに、一人で10回くらい同じ映画を見に行っている」といった面白い推し活エピソードが多数出てきた。
■専門家が語る、お茶の間の変遷とお茶の間回帰の理由
2010年代に「テレビ離れ」が起こったのは、スマートフォンの普及でYouTubeやストリーミングサービスを通じて動画を視聴する人が増えたことが要因の1つだと考えられます。そして、スマートフォンでの視聴習慣が進む一方、大きな画面でコンテンツを見たい欲求が高まり、2020年のコロナ禍によって在宅時間が増えたことも相まって、テレビ放送への一時的な回帰が起こったのではないでしょうか。その動きが加速化すると、テレビをインターネットに接続すればスマートフォンで見ていた動画がすぐに大画面で楽しめることに多くの人が気づき、今度はYouTubeやストリーミングサービス、TVerや民放放送局による見逃し再生なども活性化したことでテレビ画面での視聴傾向が急速に高まったのではないかと思います。
そのような傾向の中で、テレビは家族が共有するリビングルームの真ん中に置かれていることが多いことから、一人だけで好みの動画に熱中するのは憚られる。結果としてスマートフォンとは違い、家族で一緒にコンテンツを楽しむ傾向が高まったのではないでしょうか。こうした「お茶の間回帰」の傾向が今回の調査ではっきりとわかったと言えます。
さらに、テレビ画面で家族やパートナーとの共通の推しコンテンツを一緒に視聴する「推し活」視聴が顕在化したのも興味深い結果だと見ています。「お茶の間回帰」と言っても、一昔前のように家族全員で放送を観るのとは違います。「推し活」が広まったのは多様なコンテンツが様々なサービスを通じて楽しめるようになったからです。
「お茶の間」で家族と「推し活」を楽しむ傾向は、時代の自然な流れといえるでしょう。多くの人たちが自分の好きなコンテンツを自分の好きな人と楽しむようになったのは素敵な現象だと思います(解説/境 治氏)
●境 治氏
1962年福岡市生まれ。東京大学文学部を卒業後、87年、広告代理店I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターとなる。93年に独立。2006年からロボット、11年からはビデオプロモーションに在籍。13年7月から、再びフリーランスになり、メディアコンサルタントとして活動。個人メディア「MediaBorder」をnoteで運営。著書『拡張するテレビ』『嫌われモノの広告は再生するか』
<調査概要>
調査名:「令和のお茶の間実態調査」
調査対象地域:日本全国
調査対象:家族やパートナーと同居している15歳~79歳の男女1,400名
調査期間:2024年10月10日(木)~10月15日(火)
調査方法:インターネット調査
※本調査は、アマゾンジャパンが株式会社ネオマーケティングに委託し実施した調査だ。
※本調査では小数点第1位で四捨五入しているため、合計数値が100%とならない場合がある。
出典元:アマゾンジャパン調べ
構成/こじへい