今年も残すところ、あとわずか。年を越えるとすぐに受験シーズンがやってくる。年が明けてまもなく始まるのが中学受験だ。ところで、小学校の勉強科目で、好き嫌いや得意・不得意が一番はっきりしているのが算数。特に図形問題については、苦手としている子どもが非常に多い。中でも立体図形問題は苦手意識をもっている小学生が多いといわれている。
ところが、平面図形を正確にイメージする力が身につき、図形の性質を正確に理解する作図力が上達するようになるという小学生向けの図形計算ドリル「AI脳が身につく最強の図形ドリル」(小学館)が登場。さらに、平行・対称・回転の3つの平面感覚を養うことができるほか、立体図形を俯瞰・展開する力を高めることができるという。
この画期的な小学生向けの算数ドリルを開発したのは、現在、スタンフォード大学大学院のAI専攻コースでAIを学び続けている岩波邦明医師だ。岩波氏によると、このドリルをマスターすることで「AI脳」が身につくという。早速、岩波氏に話を聞いてみた。
岩波邦明さん
医師。AI研究者。現在、スタンフォード大学大学院コースでAIを専攻。1987年生まれ。東京大学医学部卒。MENSA会員。在学中に暗算法「岩波メソッド ゴースト暗算」を開発。著書は66万部を超えるベストセラーに。AI資格「Stanford AI Graduate & Professional Certificate」を取得。
突然ですが、みなさんは算数の図形問題が得意でしょうか? 「小学生時代は苦手だった」「図形問題のせいで算数が嫌いになった」 という方も少なくないはずです。 みなさんが小学生だった頃と同じように、 図形問題を苦手とする子どもたちは今でもたくさんいます。そして、当時と同じように、図形問題は中学入試を目指す子どもたちが乗り越えるべき算数の最重要分野であるといわれています。大人たちがどれだけ理路整然と理論を並べ立てたところで納得できなければ、子どもたちは頭を縦に振りません。
また、図形問題をたくさん解くことは、 解き方の引き出しを増やす(ひらめきを得る)ために必要ですが、図形問題が得意になる前に“苦手意識”が芽生えてしまっては本末転倒です。ではどうして図形問題につまずいてしまうのでしょうか。それは図形センスの習得を疎かにしているからだと私は考えます。
本書は、中学入試の算数の図形問題を解くために必要となる(平面図形のイメージ力、立体図形の把握力、 作図力など)のトレーニングを目的にしています。算数の知識のいらないパズル問題を数多く収録しているので未就学の子どもたちでも、楽しく図形センスを磨くことができます。また、本書はもうひとつ重要な力が身につくことを目的にしています。みなさんは「生成AI」という言葉を見聞きした覚えはないでしょうか。新聞などで盛んに報道されている通り、現在、AIは進化の渦中にあります。その飛躍はすさまじく、ゆくゆくは人間社会の在り方を大きく変えるだろうと予測されています。
AIが人間の仕事を奪うのではないかといった危惧を目にすることもありますがどのような形であれ、来るべきAI時代に向けて備えておくべき能力があります。それが「AI脳」=AIを使いこなす力です。私がスタンフォード大学でAIについて学ぶ中で、気づきを得たことが2つあります。ひとつはAIの開発・研究において、数学の習熟が不可欠であること。もうひとつがAIを使いこなす上で基本的な仕組みをイメージとして認識・理解できる力が必要であることです。それこそが「図形センス」なのです。
図形センスとは、複雑な物事を頭の中でシンプルな図へと変換できる力であるとも言い換えることができます。例えば、図のようなAI の仕組みをホワイトボードに書いてわかりやすく伝えられる人は、図形イメージ力が高く、 AIを使いこなしている人といえるでしょう。本書が、子どもたちが図形問題を好きになるきっかけとなり、AI時代を賢く生き抜く一助となることを願っています。
この図形ドリルには、図形計算が得意になる8つのテクニックが網羅されている。著者の岩波邦明医師は、2011年に独自の暗算方をまとめた小学生向けドリル「岩波メソッド ゴースト暗算」を刊行し、シリーズ累計66万部の大ヒットを記録。2023年にはこのメソッドをバージョンアップさせた「小学生が99×99までスイスイ暗算できる最強ドリル」を出版。こちらもたちまち重版になっている。
現在は、米スタンフォード大学大学院コースでAIを専攻し、最高評価の成績を収めたというまさに数学のプロ。その岩波氏が、今回、中学入試までの1か月で図形問題が得意になるというドリルを監修した。岩波氏が「問題集でも参考書でもない、画期的なワークブックです」というように、内容もとてもユニークなものとなっている。算数、とくに図形問題が苦手だというお子さんにプレゼントしてみてはいかがだろう。
スタンフォードで医療用AIを学ぶ医師が開発!ゲーム感覚で楽しめる小学生向けの暗算ドリルも人気
「VUCA」というビジネス用語がある。変動性、不確実性、複雑性、曖昧性を指す英単語の頭文字をとった造語で、AIなどの社会実装によってビジネス環境が大きく変化していることを示す。この予測困難な社会の到来を見据えて2020年3月、文部科学省は学習指導要領「生きる力」を公示。これを機に、中学受験算数の難化が囁かれるようになった。中学受験は、受験者数が増加傾向にあるなど、競争激化の渦中にあるもののひとつだ。そして高まる受験熱は、新たなトレンドを生んだ。2ケタ同士のかけ算で使える、暗算ドリルが続々登場しているのだ。そんな数ある暗算ドリルのなかで大きな話題を呼んでいるのが、小学生向けの暗算ドリル『小学生が99×99までスイスイ暗算できる最強ドリル』(小学館)である。
『小学生が99×99までスイスイ暗算できる最強ドリル』では、この本で初出となる「あゆみ算」を扱っている。「あゆみ算」とは、最先端のAIを学ぶ現役スタンフォード生でもある岩波邦明医師が独自に考案した画期的な暗算法のこと。東京大学医学部在学中に開発・出版し、累計発行部数66万部のベストセラーを誇る『岩波メソッド ゴースト暗算』から、およそ12年の歳月を経て開発した最新メソッドなのだ。
最新メソッド「あゆみ算」では、脳のワーキングメモリに着目している。計算する際に頭の中で扱う数字の数を減らすことで、2ケタ×2ケタの暗算を簡便化。筆算よりも速くかつ正確に2ケタ同士のかけ算が暗算できるだけでなく、「最短の工程で暗算できるから、誰でも簡単にマスターできる」「問題を解くたびに情報処理能力(プログラミング脳)がグングン育つ」など、さまざまなメリットがあるという。どうして岩波医師は新たな暗算メソッドを開発したのか? そのきっかけは、スタンフォード大の大学院コースで最先端のAIを学ぶ中で「AI開発に数学が不可欠」という確信を得たことにあると話す。
スタンフォード大学で医療用AIの開発に挑む
岩波邦明さん/医師・現役スタンフォード生。1987年生まれ。東京大学医学部卒。在学中に暗算法「岩波メソッド ゴースト暗算」を開発。著書は66万部を超えるベストセラーに。
――岩波先生は現在、スタンフォード大学でAIの勉強をしています。医師でありながらAIを学ぶ理由をお聞かせください。
2022年11月、オープンAI社が生成AIのChatGPTを公開し、世界中に衝撃を与えました。私も衝撃を受けたひとりで、大きな衝撃を受けたと同時に、生成AIの世界に興味が湧いたのです。翌年2月頃からプログラム言語やAIの勉強を始め、現在はスタンフォード生として大学院コースを受講しています。
――最新のAIについて勉強するなかで、気づきがあったそうですね。
はい。生成AIは100%数学でできていると言っても過言ではない。そんな確信を得ました。高校数学の分野でいうと、微分や確率、ベクトルですね。数学が生成AI開発の根幹部を支えているのです。「数学を勉強しても将来、何の役にも立たない」という言葉をよく聞きますが、数学は世界の最前線を切り開くために必須な知識だと改めて気づきました。
――「生成AIが数学でできている」とはどういうことでしょうか?
例えば、ChatGPTはどうやって回答を導き出すのでしょうか。「今日の天気は?」という質問に、天気に対応する言葉群から答えを選んでいると考える人は多いと思いますが、実際は違います。確かに昔はそのようなプログラムだったこともあります。しかし現在の生成AIは、数式によって確率的に最も正しい〝らしい〞ものを選んでいるのです。開発のステージでは、この回答の精度を向上させるために、微分を用いて数十億、多いときには数千億ものパラメーターを調整しているのです。この調整によって、いわゆるAIの賢さが決まります。
――数式で導き出すということは生成AIに学習させる段階で、数字で学習させるのでしょうか?
そのとおりです。生成AIのひとつであるChatGPTは〝言語〞ではなく言語を〝数字〞に置き換えてデータを蓄積します。そのおかげで生成AIは、それぞれの言語モデルを習得させる必要がなくなります。ChatGPTが英語だけでなく日本語やほかの言語でも高い性能を発揮できるのは、それが理由のひとつだと考えられます。
――先生はAIを勉強した先に、どのようなビジョンを思い描いているのでしょうか?
医療用の生成AIを開発したいと思っています。例えば、医療画像を生成するAIです。X線写真を学習させた画像生成AIがあれば診療、研究、教育など多分野で活用できるようになるでしょう。自閉症の人たちをサポートする対話型AIの開発も考えています。ジョブインタビュー(就職面接)の練習やアドバイスをしてくれるAIがあれば、自閉症の方々の生活を大きく助けることができるでしょうし、そういった医師という仕事に直結する生成AIの開発ができればと、精進しています。
『小学生が99×99までスイスイ暗算できる最強ドリル』(小学館)では、2ケタ同士のかけ算全8100パターンに対応する新しい暗算法「あゆみ算」ほか、6つの暗算法「ラッキーあゆみ算」を収録している。