2024年も堅調な動きを見せた米国株。2025年は積極財政と規制緩和を掲げる次期トランプ大統領が就任するだけに、さらなる上昇気流も期待されている。その一方で、強気な関税政策も気になるところだ。
今回は、そんな2025年の米国株の見通しに関するリポートが三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩 氏から届いているので概要をお伝えする。
米国株を取り巻く2025年のマクロ環境は比較的良好、要警戒の関税引き上げは慎重な判断に
2024年の米国株は堅調に推移し、ナスダック総合株価指数は33.4%、S&P500種株価指数は26.6%、ダウ工業株30種平均は14.9%、それぞれ上昇した(昨年末から12月24日まで)。
特に、米エヌビディアなど、時価総額の大きいハイテク7銘柄「マグニフィセント・セブン(壮大な7銘柄、MAG7)」は好調で、マイクロソフトを除く6銘柄が、ナスダック総合指数の上昇率を上回った。
米国株を取り巻く2025年のマクロ環境は、比較的良好と考えている。実質GDP成長率は2024年が前年比+2.8%、2025年は同+2.3%と予想しており、3月と9月の25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)ずつの利下げにより、成長ペースの大幅な鈍化は避けられるとみている。
関税引き上げは要注意ですが、中国には一定程度の引き上げが見込まれるものの、他の国とは個別交渉の可能性が高く、慎重な判断がなされると思われる。
■市場では2025年の米企業業績の見通しも良好、世界の半導体市場規模も拡大が続く見通し
2025年の1株あたり利益(EPS)の伸び率について、直近の市場予想ではS&P500指数全体で前年比+14.3%となっている(図表1)。
業種別では、一般消費財(アマゾン、テスラなど)が同+11.9%、情報技術(アップル、マイクロソフト、エヌビディアなど)が同+21.1%、通信サービス(グーグルの持ち株会社アルファベット、メタなど)が同+14.6%と、MAG7を含む業種は、いずれも良好な見通しが確認できる。
世界半導体統計(WSTS)が12月3日に公表した資料によると、世界の半導体市場の規模は、2024年に6269億ドル(前年比+19.0%)に拡大。2025年はさらに6972億ドル(同+11.2%)に拡大する見通しだ。
AI(人工知能) 関連では、データセンター投資の継続に加え、AI 機能搭載端末の増加など、裾野の広がりが半導体需要を押し上げるとの見方が資料で示されており、米半導体関連企業には好材料と思われる。
■ダウ平均は来年末4万6600ドルへ、上振れ余地ありとみるがMAG7株価調整時の影響に要注意
以上を踏まえると、2025年の米国株は底堅い推移が予想され、弊社は2025年12月末の着地水準について、ダウ平均は4万6600ドル、S&P500指数は6300ポイント、ナスダック総合指数は2万1300ポイントを見込んでいる。
基本的な見方は、主要ハイテク銘柄や内需関連セクターなど、優良銘柄の業績期待を背景に、株価水準は緩やかに切り上がっていくというものだが、着地の上振れ余地は十分あるように思われる。
なお、MAG7などのハイテク株は、高い人気を背景に、近年の米国株のけん引役となってきた。ただ、投資マネーが極端に集中した結果、MAG7の時価総額は11月末時点でS&P500指数の時価総額の32%近くに達している(図表2)。
そのため、何らかのきっかけ(例えば予期せぬ米長期金利の上昇など)でMAG7の株価が調整すれば、S&P500指数や米国株式市場全体に影響が及ぶ恐れがあり、この点には注意が必要だ。
◎個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。
構成/清水眞希